第八フェーズ スペック
お久しぶりな気がする私です。
前回バレンタイン騒動を経て時間軸を戻しました。
今回は新しく数人登場します。
ここでは多くは語りません。
それではどうぞ( ゜д゜)ノ
―2034年 6月11日 89式指揮通信車内―
「第二からの発見報告はまだですか?」
しびれを切らした宮嶋が質問してきた。
「まだだ、というか捜索開始してからまだ1時間しか経っていないだろ?もう少し待て。」
と、本郷が諭す、そしてかれこれ同じ部隊に配属されて一人だけ性格がはっきりしたやつがいた。宮嶋だ、彼女は見た目に反してどうも我が強い面があるらしい。というか見た目で判断しては駄目だが。
――ザザァァー――テレビでお馴染みの砂嵐のような起動音と時を同じくしてモニターが一つ点灯した。司令所からの通信らしい。
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『第二からの報告はないが一つ嬉しいお知らせだ。』
『これより捜索班として第三小隊を投入、及び司令所の監視カメラとAIによるドローン偵察の使用許可がついさっき下りた。』
「ありがとうございます。」
『それと今使っている車を最寄りの車庫に入れて、73式装甲車に乗り換えろ、フルスペック使用だ。』
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本郷と司令所の方との通信が終わったらしい、そういえば相手側が名乗ってなかった気がする。
「73式か、しかもフルスペックとは心強いな。」
今まであまり目立たない里村がコメントした。
「里村くん、それってすごいの?」
浅原が質問してきた。
「うーん、今までこんな質問は何回かされたけど詳しく解説してもわかる人いなかったから一言でまとめると。今の車よりよほど実践向きな車」
「ふーん、どのくらい?」
「そりぁもう!武装はこいつとほぼほぼ同じだけどどの装甲車にもない特別な――――」
「知識自慢はそこら辺にしておけ、お目当ての車はもうすぐだ。」
本郷が食いぎみのストップをかけた。なんで里村が装甲車であれほど盛り上がるのだろうか?
「着きました。」
82式通信指揮車の運転士を務めていた男性が報告する。しかし到着した場所は…
「あのー?ここがですか?ただの民家なんですけど?」
「そもそもこの島に民間人は居ないからしたがって民家もない、つまりこいつはただの家じゃないんだよ。」
実のところ、第二宮古島にはプロジェクトに参加する人しか住んでいない。しかも本島ではなく伊良部島にしか居住区はない。だからここに民家があるのがまずおかしい。
――ガラガラァァ――錆び付いたように偽装している新品同様のシャッターを上げた。そこには第一小隊に貸与された『73式装甲車』が待ちわびたかの如く鎮座していた。
―同年同日 第三小隊 OH−6D機内―
「まさか私達にも出動命令が下るとは思ってませんでした。」
本来なら第一、第二小隊の同時攻撃によって決着がつくはずだったが失敗に終わった。それでも敵――人狼と呼ばれる魔獣5体と会敵、こちらに被害無しの殲滅完了、という報告を受けている。
そして、第三小隊にはOH-6D二機のヘリコプターの使用許可が下りた。ただこの機体は比較的昔のものでそうそう実戦で使える代物ではない。それでもこの機体をあえて選んだ理由は小隊長の『岡山 慎二』による考えでそれは2つあった。
「にしてもこんな骨董品を実戦で使うとは、うちの上層部はもしやバカなんじゃ・・・そんな気がする。」
やはり使う機体に疑問を抱く隊員は他にもいたようだ。
「そう悪く言うな。理由を二つ説明してやる」
「まぁまずこいつは小型機、機動性は高い。これが一つ。」
「ではもう一つは?」
「これはあんまし言いたくないが、出動命令の直後に俺のパソコンにメールが送信された。上からのだ。」
「それで内容は?」
「まぁ慌てなさんな、簡潔に言うと『このオンボロを使え』ってそれでも俺はこいつでもやっていけると思ったから承諾した、それだけさ。」
もう一度確認しておくが彼は偵察班として第二宮古島上空を飛んでいる。基本は戦闘を目的とせず敵を発見し次第、殲滅班の第一小隊を最優先に敵位置を司令所を介さず報告する手筈になっている。ただこの時、作戦行動中の三部隊と司令所の全員が人狼の身体能力と戦術を考慮していなかった。
「隊長、今回の目標はRPGお馴染みの〔人狼❳って本当ですか?」
「俺は上から教えられただけだ。詳しいことは知らん。」
めんどくさそうに答える岡山だが、部隊を共にしてからやけによく話しかけてくる『川上』という男が話す〔人狼❳がどんなやつか気になっているのも事実。それを見透かしたように川上は話始めた。
「その〔人狼❳なんですけど、もし報告どうりなら作戦はありますね必勝の。」
「一応聞いておくがなんだそれは?」
「いいですか。〔人狼❳は狼の状態なら理性はほとんど失われています言葉を無くすぐらいには。その上で進めますけどいいですか?」
「いいがどうして理性が失われているんだ?」
「そういう設定ですってば、ゴホン えー我々と〔人狼❳の差はなんでしょうか?そうですその理性です。ならば戦術で勝てばいいだけ、あと文明の利器も使って。」
簡単にさらに追加の情報を加えると…〔人狼❳は本能的な行動と戦闘意欲で動く、そしてかつてのモンゴルvs日本の戦いのように集団戦法で叩く。これなら勝機はあるという考えだ。
「なるほどな…」
―同年同日 第二宮古島 森中―
森の中に逃げ込んだ人狼達、5体は鋭敏な五感によって作戦どうりに別れた5体がやられたことを感じ取った。
「なぜだ!古人の力が俺ら以上なんだ!」
露骨に怒りを表現する1体の人狼は驚愕していた。
「くそ!先代が一生かけてまで解明した〔制御の極意❳を使ってもか!」
「落ち着くんだ、冷静になれ、やることは一つだけだろう。古人をどうやって殺すかだ。」
「あぁ、わかってる。」
憤るのも痛いほど分かるが気持ちを落ち着かせる。
「ところで、俺らの弱点はなんだと思う?」
「そんなもんはねぇ!」
「バカじゃねーの!?あるんだよどうしても!・・・はぁーいいか?あいつらとの決定的な差は武器にある。」
「でも、忍び寄って殺れば・・・」
「それを先に死んでったあいつらが実行した。」
彼らに重い沈黙が訪れる。死者への思い、憎き古人への怒り、同志がなきものにされ次は自分だと怯える思い、それぞれの感情が何もない森のなかに漏れだした。
――バラバラバラバラ――近くで古人と武器がいることを音で判別した。しかも空を飛ぶ鋼鉄の悪魔に乗っている。
「よし、まずあいつらからだ。」
「作戦は?」
「死ぬな、絶対に
そして攻撃を避けながら疲労させる。」
「そしたら?」
「お楽しみの時間だよ、ヨルク」
ヨルクという脳筋バカと人では策士と呼ばれるハルクの怒りの攻勢が始まる。
読んでくださりありがとうございます。
次回の内容に一つ触れると
Regria陣営――と呼称しますが彼は大きな勘違いをしております、
お楽しみに