5 好敵手の転校生さん 其ノ弐
遅くなってしまい申し訳ありません。
A.D.2071 10・1 AM 4:00 決闘当日
──佐々木家
“ビリリリリリリ ビリリリリリリ”
「イッターァァア。あれ?止めるとこどこだ?」
昨日セットしておいた感電アラームの雷撃で覚醒した。だがよく説明書を読まず使用した為この有様である。まさに本末転倒。
「あぁ!わからん!」
"ガシャン"
政宗は寝起きは機嫌が悪い。
度々このように目覚ましを壊すことがある。
憶測であるが政宗の能力なら、寝る時間を操るなど容易いのだが、融通が効かないようだ。
「あれ?なんでこんな早くに起きたんだ?」
と寝ぼけたことを言った。
そしてボサボサの寝癖を直すために洗面所へ向かい、目的も理解しせずに朝食の食パンを食べた。
という夢を見ていたのであった。
感電アラームの夢を見るのに起きれない怠惰な高校生はなんなんだろうか。
──同時刻 第3実験場
鈴は既に着いていた。決闘相手がまだ夢の中だということは知る由もない。
「政宗に勝って──」
と独り言を言いながら体を温めていた。
アップのせいか妄想のせいか顔が赤かった。
「勝ったら何でもよね?うふふ。」
何やら良からぬ事を考えているに相違ない。
だが、準備は万端だ。
しかし、50分後政宗起床。
佐々木家から実験場まで最速で15分。遅刻確定。
「もう5時よ!政宗は何をやってるの?」
鈴は時間に敏感であるため、遅刻をした政宗は許すことができないのであった。
どうやらお互いの性格は正反対であった。
「あぁ!もしかして政宗のやつ宮本武蔵を気取ってるのかしら。そうやって私の集中力を削ぐという魂胆ね。そうはいかないわ!」
さらに、30分後政宗到着
「いやぁ申し訳ない。」
と謝る政宗。
もちろん。鈴は激怒していた。
「政宗!!あなたどういうつもりよ!
私の決闘なんてどうでもいいのかしら──」
というが、鈴の声が篭っている。
「いや、わるいわるい」
声色を変えずに棒読み。あまり反省の色がないようだ。これは鈴の神経を逆撫でにした。
「あなたにひどい憤りを覚えたわ。この怒りと屈辱、決闘で晴らしてあげる」
「いいぜ。早速やろか」
いきなり戦闘態勢。そして史上類を見ない
大決闘が始まろうとしてた。
「じゃあ。お互い手加減なしで。
ルールーは簡単どちらかが戦闘不能になるか降参するかのいずれということで」
「わかった。」
「では。システム起動します。」
ここでは、バトルロワイヤルという決闘を管理して、正当な決闘やハンデありの決闘。チーム戦から個人戦まで全てを監督する人工知能である。
火星国家機関は全て人工知能のシステムで賄われている。これはそのひとつである。
しかも、そいつらは人の管理不要で自分で分析、改善改良を行うという優れものである。。さらに人間よりも勤勉な人工知能の進歩に恐れを感じるほどにシステムは完璧である。
バトルロワイヤルシステム起動。
No.00145
1対 1決闘 モード
この決闘は、施設内全てを範囲。
互いに装備品、ハンデ一切なし。
決着はどちらかが戦闘不能または降参した際。
それでは、始めます。
── 3 2 1 決闘開始!
「じゃあ。死んでください。」
鈴も政宗に近づいてきた。その鈴は気迫に満ち溢れている。
空気が淀んだように感じがした。
「最初に言っておきます。私は核を操ります。」
鈴はいきなり手の内を明かしてきた。かなりの自信があるようだ。
「核?え?それ強いの?」
と、拍子抜けな声で政宗が質問を投げかける。
少し腑抜けた。否、それどころか張り詰めた緊張感が全て解けてしまうほどだった。
なぜなら、核を操ると聞いたら核爆弾などを使いそうで怖気付いてもおかしくないが。
「いや、核ですよ。」
「うん。そもそも。カクって何?」
「え —————」
そう。佐々木政宗。彼は指折りの無知である。
「あぁそうですか。じゃあここで教えてあげますよ。核の怖さを。」
鈴がまた一層強い邪気を払っている。
「衝撃に備えてくださいね」
言葉に慈悲のカケラもない。
鈴が手を前に着き出した。
次の瞬間、政宗の目の前に白い玉が現れた。
それは周りのものを全て吸収していってました。
「これは。今までで1番すごいな。」
とてつもないエネルギーの塊に政宗も関心していました。根拠はないが政宗は直感でそう感じた。
「All flesh had corrupted his way upon the world.
The nucleus shallconsume the all.
Thou shalt not Anticaries. 」
魔術師の滅びの呪文的なことをいいだした鈴。
すると目の前の塊がどんどん縮小している。
しかしエネルギー量は先程のよりも上昇している
空気が淀むどころの話ではない、
ほぼ神が操るレベルのエネルギー量だ。
「bdelugma erēmōseōs」
と叫んだ瞬間、目の前が真っ白な閃光に覆わた。
と同時に熱戦と爆風が体に直撃。
それは何倍にも凝縮された水爆を半径50メートルの距離で受けるようなもんだ。
常人なら体が蒸発していても納得できる。少しやりすぎたのかと思ったくらい。
「1席、仕留めた」
そう呟いたのも束の間だった、頭の後ろに何かが当たった。そして、
「はい。チェックメイト」
政宗の声だった。しかもかなり近い位置にいる。
「これで満足してもらえたかな?」
背後を取られて勝利宣言された、
何が何だかわからなくなっていた。
「ど、どうやったら、あの爆破を躱せるの?」
その平然と立っている男は全くの無傷である。
かすり傷ひとつすらない、一体どうやって。
「単純な話さ爆発する瞬間に、時間を止めて
君の背後に移動する。そうして、君の半径1メートルの被害を受けない完全無敵圏に入って、躱したってわけ。」
完全無敵圏。その人が自分の能力で被害を受けないために能力発動時に反射的に発生する絶対安全区域のことである。つまり、対能力アンチ区域ってことだ。
だがこれは自分の能力を防ぐためであり間合は人それぞれ。それを理解していたっていうの?
「でも、そんな背後にいたら気づく⋯⋯」
そう鈴の能力には強力すぎる故のデメリットがあったのである。それは反動。威力に応じて一時的に身体能力が著しく低下することである。
先程の一撃で鈴は反動で0.57秒ほど全神経が麻痺していた。その1秒以下で決着がついた。
彼女はそのデメリットも知り尽くされていた。
WINNER 佐々木政宗 LOSER 赤城鈴
と電光掲示板に表示され、アナウンスが流れた。
敗因は、能力の性能、身体能力、そんなもんじゃない。たった2つの情報だけだ。
鈴は悔しさのあまり泣いていた。
「ところで。俺に何を願おうとしててただけ教えてくれないか?」
昨日このことを考えて寝られなかった。知りたい
「⋯⋯え。いやでも、勝なかったので」
「頼むよ気になるんだ」
「わかりました。遅かれ早かれいうことにはなってますからいいですよ」
どうやら言ってくれるようだ。
「お、おぉう。」
とてもワクワクしている。こんな政宗は珍しい。
「⋯⋯私の許嫁になれです。」
シーンと静まり返った。
「許嫁?プロポーズなのか?」
参ったな。この返答を予想していなかったわけではないが、いざとなると対応に困る。
「つまらんと?」
と訛りのある喋り方で聞いてきた。
驚きなのは急に方言であること。
「いや、そんなことはないが」
方言はいい温かさがある。しかもこれは博多弁。
つい撫でたくなる。あたかも生まれたばかりの子猫を撫でるように。
「なんしょっと?なんしょっと?」
急に頭を撫でられ恥ずかしがっている。
「恥じらいながら言われると、何もできなくなる。おそるべし博多弁。」
「何言いよーと?そげんことよりこのしゃべり方おかしか?」
「いや、そのままで」
政宗の少し素が出てきた。
「それで、返事は」
「おっ⋯⋯」
危な。つい博多弁とのギャップで承諾するところだった。よく考えろ。昨日初めてあったやつだ。
するとふとひとつ思いついた。
「どげんしたと?」
「ひとつ。理由を聞かせてくれ。なんで俺を?」
「それは⋯⋯」
政宗はこの質問で、政宗の世界観が壊れた。
次回もよろしくお願いします。よければ評価や感想などよろしくお願いします。