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火星国家の佐々木くん  作者: 山本重国
第2章 第二次火星移住計画
17/18

3 不倫はダメだよ!

しばらく更新ができず申し訳ありませんでした。

今回は国家内の説明を入れているので、少し短めになりました。


A.D2071. 10. 16 早朝


日の出。東の地平線から白く輝く太陽の一部が姿を見せる。今は10月半ばそれなりに冷え込む季節だ。日の出とともに訪れるほんのり温かくなる程の気温上昇。故郷(地球)ではない別の惑星で暮らしていることを忘れそうになる。


火星国家は500キロメートルの正方形の大地を居住区として、北海道の釧路市や京都の平城京をモチーフとして、碁盤の目の様に整然と区画された。大地の対角線が交わる中点を地殻から貫く様に(そび)え立つ『ルベル』と呼ばる国家の心臓部(コア)。そして、ルベルに国家の情報・物資・人間全てを集める為の『ヴィンセント大街道』という十字路で全域を4区分している。


東は、約50パーセントはMASの軍事基地で滑走路や格納庫が設けられている。残りはルベルを城として、経済的・政治的に中心とな城下町の如く栄えており、政宗たちが通う学園もここにある都市区域『青龍区』


北は、エリシウム・カズマ渓谷に貯まる淡水を利用した養殖業が盛んで尚且つ、美しい自然環境をリゾート地として第三次産業のプールや遊園地が数多く立地する移住人の精神的支柱となる緩和区域『玄武区』


西は、湖の水を引いて機器や武器を製造したり、マースター鉱石を使った原子力発電所や研究所の窮屈に立地しており、生産的中心となる工業区域『白虎区』


南は、生命線でもある食糧を生産する農業が盛んに行われたり、宇宙一高い山と称されるオリンポス山や太陽の恩恵が受けらる故に神社や寺が多く『尊厳寺』オリンポス山の麓に有る。神聖的な場所が多い環境区域『朱雀区』


時は2071年と雖も地球からの物資補給は困難となる為、国内の自給自足の理想形を具象化した設計だ。それはまるで大きな家を四神のために4部屋に分類されたかの様にハッキリと分かれていた。

ルベルにはMASの本部もあり軍事関係者も多数存在すると思われるが、実のところ全てIAによる虚数空間(イマジュナリシステム)が制御しており無人の塔として『侠気なる虚無』の二つ名を持つ有様だ。




政宗はLB教団の襲撃以降自分の非力さを痛感し早朝トレーニング。詰まる所"朝練"を毎日欠かさず続けていた。


〜朝練項目〜

□ルベルまでランニング(片道50キロ)

□赤樫木刀(5キロ)で素振り10,000回


シンプルイズベストとはこの事だろう。

超能力者故のハードメニュー、否超能力者でもここまでしない。超能力者は人間がある一つの能力を身につけているだけの強化版で他は大して変わらない。


今朝もこの時期に関わらずタンクトップに短パンと風の子みたいな格好で尊厳寺の門を潜り抜けて来た。


「あ、政宗くんおかえりぃ朝練お疲れ様。はい。これ飲み物とタオルさ」


政宗の帰りを待って内引きの桟唐戸に(もた)れ掛かっていた巫女姿の女性と横に竿の様に長い刀。

女性は恰も部活動のマネージャーのように優しくご奉仕してくれる。


「ありがとうございます。マネっあハンナさん」


飲み物の入ってボトルを口元に運び、手で軽く握って中の物を勢いよく出した。異変に気付いたのはその直後だった


「あぁっちぃぃ。え?何これスポドリじゃない⋯⋯⋯⋯ホットミルク?」


あまりの熱さで吹き出し、口元から白い液体が一本の線を描いて滴り落ちる。腐女が見れば興奮確定の絵であった。


「うん!あ、正確には蜂蜜入りだけどね寒いかと思ってさ⋯⋯喜んでくれた?」


「道理で飲み物にトロみがあったのか」


今口を開ければ、男の口内でトロみのついた熱くて白い液体が纏わりついた目の前に浮かぶようだ。

政宗は液体をゴックンすると今度は汗を拭こうとタオルを受け取り顔に当てる


「あぁぁあったけぇ」


仕事帰りの中年サラリーマンが居酒屋で出されたおしぼりで顔を拭く絵と完全一致。政宗が老けて見える。


「良かったぁぁ⋯⋯素振り終わったらシャワー浴びるでしょ?支度をしておくよ」


「あ、ハンナさん。今日のことなんだけど」


「うん!会議とは言え久々に政宗と出かけるんだ楽しみださ、どうかしたかい?」


政宗だけに向けられた笑顔に今言うべきことを躊躇ってしまった。


「いや、なんでもないよ。ありがとう」


「いいってことさへへへへっ」


(あぁ言い出せなかったぁぁ!ど、どうしよういや、まだ時間はある会議まで⋯⋯⋯⋯)


そう自分に言い聞かせ落ち着こうとした。この後三度伝言を伝えようとしたが全て失敗に終わった。



──12時50分 青龍門駅前


四つの区域の極地にある区門。

"磁気浮上式モノレール"というリニアモーターカーとモノレールのいい所採りをした様な公共交通機関車が四神門を繋ぐ。

それは無音で上空25メートル辺りを通過していく。

最先端技術の結晶の様な街だ。


政宗は規則どうりに青龍区にいる間は学園の制服を着ていた。駅前入口付近のベンチに腰をかけて時間を気にしていた。


「あと、10分か⋯⋯で、何でここにみんながいるの?シャルルあれは内緒にしろって言っただろ?」


政宗の視界を見たことのある3人の学園生が仁王立ちしながら遮ってくる。


「政宗君がデートだぁって話した時丁度3人で私の家に遊びに来てたの、言ったつもりはなかったんだけど⋯⋯ごめんね」


もじもじしながら自分の金髪を弄る

その姿をみて自分自信の不注意さに苦悶する政宗。


「そーばい。デートっちゆうもんば偵察に来よる。うちはえらいにしゃんこつば知りたい」


訛りのある方言で相変わらずの軍服を身に纏い政宗に興味深々の少女


「まーくん。お姉ちゃんとその⋯お付き合いしてるの?鈴ちゃんいるのに不倫はダメだよ」


何かとんでもない誤解をしている、メガネの横を手でクイっと上げる幼馴染。



「ふ、不倫じゃないよ!というか何?俺が居ない間にどうなってるの?」


不倫の一言に動揺して声を荒げてしまう。

3人がイメージする政宗はかなり堕ちた存在となって居た。


「何ってうちの許嫁」


こうもハッキリと豪語されると否定し難い。


「ほら、やっぱ不倫だ。ダメだよお姉ちゃんを愛人にしないで!せめて側室に」


「ちょっと待てぇ!話がややこしくなる一方だ!鈴、詩苑今の俺の現状聞いてないのか?」


2人が揃って首を傾げる。頭の上にわかりやすいように疑問符が見えるようだ。


「⋯⋯」


態とらしくそっぽを向いて掠れた口笛吹き出した。

誤魔化そうとするが出来ていない時の定番リアクションをとるシャルルに、沸々と負の感情が湧き上がってくる。


「シャルルぅ?」



拳を強く握りしめてシャルルの方に作り笑顔向ける。


「ごめんなさぁい!」


政宗の怒りの混じった笑顔にビクついて早口で謝罪する。すると、丁度その時背後から巫女姿の女性が風に薄衣を靡かせながら走って来た。その女性はラグビー選手のようにナイスタックルで政宗に突撃して、手慣れた手つきで政宗を担ぎ上げ走り去っていった。


「ぐはっっ!」


突進の衝撃で直に政宗の政宗に猛威を奮う。


その異様な光景に驚愕し、呆けて3人は立ち尽くしていた。遅れて思考が追いついて来た。


「「「えぇ?!」」」



走り去った方向に向かって全速力で追う3人であった。




──薄暗い路地


「ハンナさん。痛いっすよぉ」


地面に悶絶して苦しみの根源を齎した張本人に悲痛の叫びを聞かせる。


「悪いさな、なんか絡まれていたから助けようと思ってさ、でもなほら待ち時間ジャスト!」


嬉しそうに手首ある腕時計を観せびらかす。このご時世にアナログ時計という骨董品を身につけていた。


「何も突進することはないでしょう」


「いやぁコミュ障だから最善策をとったまでださ。あと私が少数の人と話すのが苦手ってした上でそれをいうのかい?」


「それは自虐ととっていいんですか?」


「そんなことより、早速イックに行こう!」


マイペースな人とは理解していたがまさかこれ程とは思いもしなかった。


「2分で治すので少し待ってください」


「仕方ないさ、鍛錬してるから終わったら声をかけてくれ」


そういうと、路地の更に奥に入っていき瞑想を始め出だした。


「流石は元住職、いやでも住職でも数分の時間内に路地で瞑想はしないか⋯⋯イタタタどうしたものかなぁ」


この局部を強打した部分を抑えながら蹲る。この痛みは同性の人間にしか理解されない人が外傷を負わずに味わえる最大の負傷といっても過言ではない。


政宗の政宗は過酷は運命を強いられたのであった──


ご拝読ありがとうございます!

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