1 移住者歓迎会
これから第2章スタートです。
少し会話文が多めになっていますが、楽しみながら読んで観てください!
──A.D.2072 10.15 火星圏
火星上空に夥しい数の宇宙船が確認された。
第二次人類火星移住計画の客船と貨物船である。
『警告 警告 着陸準備中
席を離れている方は至急指定の座席をお戻 りください。只今の高度10万メートル火星圏に到達。着陸態勢展開時の衝撃に備えてシートベルトの着用を推奨致します』
赤い光が船内を不規則に照らし警告音のサイレンとともに電子音のアナウンスが鳴り響く。
「おい。逆噴射装置の準備を急げ!」
「はい、逆噴射装置準備完了。予備キャスター異常ないか?」
「問題ありません。正常に作動します!」
「途中の小惑星接近に伴い予定到着時間より7時間45分遅れています」
「問題ない許容範囲内だ。管制塔に着陸要請をしろ」
『こちら制御室から管制塔応答願います』
『こちら管制塔どうぞ』
『予定より7時間45分遅れで着陸準備をお願いします』
『着陸要請受け付けました。MAS軍事基地のA-2に客船C-5に貨物船の着陸準備完了しています』
『了解。高度低下に所要時間30分です』
『了解。健闘を祈る』
制御室は落ち着きを見せる事なく総員が神経質になりながらも着陸準備を行なっている。
「着陸態勢オールグリーン」
「了解。高度低下!」
宇宙船はみるみるうちに高度を下げていき、数分後には地上からも宇宙船を目視できるようになった。
とある寺院
火星の温度設定は旧暦に合わせて変化するためこの時期になると肌寒く感じる。
日光が差し込む正面舞台の日向で胡座をかき後ろに手を着いて、軍事基地の方を眺めて
「あぁ来たな。どんな奴が来るかな」
心中を吐露する全身真っ白の巫覡を身に纏う男がいた。白衣の後ろには黒の草書体で「修羅」と描かれていた。
「なぁに浸ってんだよ。あれで天道さん来てるから迎えに行くぞ」
と言いながら同じ装束を身に纏うもう1人の男が前方にいる男をひっぱ叩く
「痛いっすよ、神影さん。天道担当の人かぁどんな人なのかなぁ」
この2週間で彼の憧れになった人の事を想像して胸を躍らせていた
「ってその人の名前天道さんなんすか?」
「んなわけあるかぁ!⋯⋯っても俺も知らんが天道って事は流石にねぇよ」
「じゃ、神影さん早く行きましょうよ!先輩のロイ車乗せてください!」
上目遣いで外に停めてある、宙に浮いてるマシンを指差して目の前で手を合わせて頼み込む
「んなの言われなくても、そのつもりだよ」
「っしゃあぁ!今日の先輩優っしぃ」
余程乗りたかったようで、満面の笑みを浮かべて力強くガッツポーズをしている
「政宗⋯⋯これでお前の埃取れ」
そういい粘着シートが巻かれた神影が"コロコロ"と呼称する日用品を手渡した
「相変わらずっすね」
「てめぇ埃一つでものっけたら血祭りにあげるぞ」
「はいっ!」
と慌てて全身に"コロコロ"なるものを走らせて身嗜みを整える。
「よし。行くぞ」
「はぁぁ!緊張するなぁ」
2人は宙に浮くロイ車と言うマシンに乗車すると、それは勢いよく高度を上げて次の瞬間只ならぬ速さで軍事基地に向かっていった。
──MAS軍事基地 中央広場
校舎から『移住者歓迎会』と書かれた横長の横断幕が吊るされており、前方演説台を取り囲むようにして夥しい数の椅子が規則正しく並べられていた。だが、即席の歓迎会とはいえ少々大雑把過ぎると思う人も少ながらずいそうだ。
しばらくするとA-3レーン出入口から沢山の人がホールに向かって奇妙な程整った列を成して歩いて来る。心配も束の間で、来た者から順にベンチに座って何かの開始待つようにソワソワしながら待機していた。
数分後演説台に1人の白衣を着た女性が登壇すると、騒ついていた空気が一瞬で静寂となった。すると次の瞬間アナウンスで静寂が破られた。
「これより、移住者歓迎会を開催いたします。はじめに火星国家最高責任者一色七瀬博士の挨拶です」
登壇している女性は咳払いをして軽くマイクにかを近づけて喋り出した
「ようこそ。火星国家へ移住者の皆様。皆様はえーっ途中アクシデントに見舞われましたが無事に火星に到着出来たこと非常に嬉しく思います」
その博士は何も見ずにツラツラと挨拶を述べていく。だが計画性にかける部分があり故に即興的にも聞こえる。
「えー皆様はここが超能力者の国家である事は船内で急遽お知らせしたにも関わらず、ご理解とご協力誠に有難うございます!」
「単刀直入に本体に入ったが聞き捨てならないことがあったぞ一色ぃ!宇宙船での移動中に知らせた?パニックになる事は想定しなかったかと、浅はかなタイミングに少々疑念を抱き兼ねますよ!」
と言いながら1人の研究者のような男性は、恰も現火星居住者でこの演説を聴く人の声を代弁するような事を言いながら挨拶に乱入してきた。
「あら鳥取さん。どうされたんですか?あなた3班の班長で事務処理をしているはずでは」
「あらじゃねぇよ!てめぇあんな量を終わらすなんて到底不可能ですよ!このブラッ──ゲボッ」
何かを言いかけた瞬間一色と名乗る女性は、抗議する男性の腹部を手も触れず大きな穴を開けて見せました。鳥取と呼ばれていた男性は吐血をしながら崩れるように倒れて逝きました。
何も反応しないこの第二次移住者の殺伐とした空気は不穏な空気と表現するのでは温過ぎました。
「皆さんこれが"超能力"です。今のは単なるエキシビションで彼はクローンの人間です。神すら凌駕するこの力を持ってこの 腐敗した世界に革命を齎しませんか?」
世界の変革を促すと聴衆はそれに応えるように歓声をあげました。
「これ、やばくないですか?先輩」
「ぁぁ治療が必要だな」
「そうっすねフフフ」
不気味な笑みを浮かべるのは、つい先ほど到着した巫覡を身に纏う2人組の男性その背後から物干し竿のような刀を腰に携える巫女姿の女性が近づくと
「神影。政宗。待たせたか?」
「あっ天道さん、こんちわっす」
「貴女が天道担当の方ですか?」
「あぁそうさ、うちが天道担当欅槃涅やさ。よろしゅうなおふたりさん」
「その口調もしや⋯⋯」
「そうさね政宗。妹は息災か?」
「えええぇえぇ!」
政宗の驚き聲はあたりに響き渡った。隣の男は音量を疎ましく思い政宗を軽めに叩く
「詩苑の姉さん、ハンナさんや!」
「まぁそうなると思っとたさ、取り敢えず落ち着いた所で話を聞かせて貰おか⋯⋯寺は何処さ?」
これが第3次世界大戦勃発の根源であり始まりであった⋯⋯
読んで頂き有難うございましまた!
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