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第4章 おだやかな世界〈25〉

挿絵(By みてみん)


 痛みで大地をのたうちまわるエシムギゴルドスがでたらめに〈デスパブリザード〉をはなった。


 指示に気をとられていたシーグルスの反応が一瞬おくれたが、かれらのまわりに強力な防御魔法が張られて〈デスパブリザード〉をはじきかえした。


「おじいさま、油断大敵です」


 頭上から涼しげな声がひびくと、丸いそりのようなイスに座した美しい女魔導師があらわれた。


「かようにこちらは大丈夫じゃ、エスメラルダ。みなを頼む」


「……はい」


「ふーっ。ミクリア、点火(イグニッション)を頼む」


 オリベがミクリアに背中を向けて立つと、ミクリアが〈キアトクレドル〉に座したままオリベの背に両手をかざした。さっきも一旦地上で点火(イグニッション)してから〈キアトクレドル〉で天空まではこび上げてもらったのだ。


傍目(はため)にはなんの変化も見えなかったが、シェナンパとスラエタオナにはオリベの内圧が上がったように感じられた。


「シェナンパ、スラエタオナ、ドラゴンの顔をねらうのじゃ!」


 ふたりがシーグルスの号令に呼応して攻撃をはなった。


 ダメージをあたえる攻撃ではなくエシムギゴルドスの気をそらすための陽動だ。


 オリベもエシムギゴルドスへ突進した。ねらうはエシムギゴルドスの右腕か右足だ。立ち上がれなくなれば、時間はかかっても確実にしとめることができる。


 オリベの殺気を感じとったであろうエシムギゴルドスが、右腕の皮膜を渾身(こんしん)の力で羽ばたかせて強引に身体を起こした。


 すさまじい風圧にあおられてオリベの身体が宙を舞った。大地にたたきつけられたオリベはその衝撃で意識をうしないかけた。


 身体をぐらつかせながらなんとか立ち上がったエシムギゴルドスが、足元に転がるオリベを忌々(いまいま)しげにねめつけた。


 短いレベルアップの効果が切れたオリベは瞬時の消耗で身動きがとれない。


「キハアッ!」


 エシムギゴルドスはズシンズシンと重い地響きをたてながらオリベへと歩をつめた。


「いかん!」


 シーグルスがさけんだ。


 シーグルスたちのところからは遠すぎてオリベを救出することができない。


 エシムギゴルドスはゆっくり足をひき上げるとオリベを虫ケラのように踏みつぶした。


 最後の望みが絶たれて戦鬼や魔導師たちが絶望する中、エシムギゴルドスが小さく首をかしげていぶかしげなようすを見せた。


「……見て!」


 オフィーリアのあかるいさけびに全員が顔を上げると〈キアトクレドル〉に座したミクリアが間一髪でオリベをたすけ上げていた。


 超低空飛行でオリベの身体をかっさらったミクリアの〈キアトクレドル〉が急浮上してエシムギゴルドスの背後へまわりこむ。


 シーグルスたちがエシムギゴルドスにミクリアたちの存在を気づかれまいとあわてて攻撃した。


 しかし、エシムギゴルドスの背中に生えた2本の触手が〈キアトクレドル〉の存在を感知し、〈キアトクレドル〉をはたき落とそうとムチのようにしなった。


 触手の射程圏外へ逃げた〈キアトクレドル〉の上でミクリアがオリベを叱咤(しった)した。


「しっかりしなさい、オリベ!」


 そうさけぶミクリアの声もすこしふるえていた。


 考えるより先に身体が動いてなんとかオリベの危機をすくったものの、実戦経験にとぼしいミクリアが、強大なエシムギゴルドスを前に恐怖を感じるなと云う方がムリだ。

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