第3章 トルナクロイブ神殿〈14〉
激レアのレベル73のドラゴンがもつ破壊力に度肝をぬかれながら撤退する戦鬼たちとは別に、シェナンパ、オフィーリア、オリベ、ゲオルギウスが神殿ぞいの岩壁際をつたって大きく迂回しながら法印魔導師エスメラルダ、ムードラ、ヨッシー、シンキのまつ地底湖のへり、すなわち凍壊竜エシムギゴルドスの右側へ移動した。
魔導師たちの元へかけながらシェナンパが作戦をつたえた。
「わいの必殺技ナウ・ロマンティックとエスメラルダの防御でドラゴンの攻撃も1回くらいならしのげるはずや。まずはわいがドラゴンへナウ・ロマンティックをお見舞いする。おまえらはその隙に仲間をつれて、もときた石段へ走れ。わいが合流したしんがりでエスメラルダが防御を張れば、なんとかこの地下空間から脱出できるはずやさかい、あとは地上まで一直線や!」
「……ナウ・ロマンティック?」
うさんくさい必殺技名に思わずまゆをしかめたオフィーリアだったが、こまかいことに頓着している余裕はない。
凍壊竜エシムギゴルドスがアリのように視界のすみを走る小さな集団をロックオンした。
「ググルルゥ……」
シェナンパが急に足をとめて、ひとり凍壊竜エシムギゴルドスへ向きなおると、二丁の魔装美麗短剣銃をかざして吼えた。
「ナウ・ロマンティック!」
魔装美麗短剣銃から目もくらむばかりの閃光がほとばしると視界がホワイトアウトした。
その光が球状に収縮して凍壊竜エシムギゴルドスを頭部をつつみこむ。光の球がギュイーン! と音をたててまわると、つぎの瞬間、光の球の中でドンッ! と、にぶい爆発音がひびいた。
シェナンパが凍壊竜エシムギゴルドスへナウ・ロマンティックをはなった刹那、エスメラルダも仲間とともに石段の入り口へかけだしていた。これも長年のパーティー経験でつちかわれた阿吽の呼吸だ。
「ググルルゥ……」
頭部への爆破攻撃をうけて思わず天をあおいだ凍壊竜エシムギゴルドスだったがLPをごっそりえぐられるほどのダメージはない。あくまで時間かせぎのこけおどしだ。
その間に石段入り口で合流したエスメラルダと『名無しのパーティー』が戦闘力の低いムードラやヨッシーから先へ石段をのぼらせる。
凍壊竜エシムギゴルドスが全身から怒気を発しながら石段入り口へ群がる戦鬼と魔導師たちを睥睨した。額に生えた物干し竿のような長い1本角に白い冷気がまとわりつく。
石段入り口の前で凍壊竜エシムギゴルドスへ向かって両手をかざし、かけよるシェナンパを待つエスメラルダが悲鳴にも似た声でさけんだ。
「MP全回復まであと10秒!? 防御が間にあわない!?」
エスメラルダの背後から黒い影が躍りでると凍壊竜エシムギゴルドスめがけて突進した。
「いっけええええっ、クリムトリス・バグストォォ!」
「シンキ!?」
凍壊竜エシムギゴルドスが攻撃をはなつ直前にシンキが凍壊竜エシムギゴルドスの片目へ神式突刹徽槍を突き刺した。
「キギャアアッ!」
蜂のひと刺しでLPを殺ぐことこそできないものの、凍壊竜エシムギゴルドスの攻撃をおくらせる効果は充分にある。
「シンキ!」
神装槍鬼シンキは凍壊竜エシムギゴルドスの片目に深々と神式突刹徽槍を突き刺しながら、オリベのさけびに笑ってこたえた。
「……つぎのレベルアップにもつきあってくれよな」
凍壊竜エシムギゴルドスは片目へ突き刺された神式突刹徽槍をシンキごと手のひらでふりはらうと冷気をまとった長い角でたたきおとした。シンキの身体が白く凍って粉々にくだけちった。
「今のうちや!」
シンキの身を挺した時間かせぎで石段の入り口までたどりついたシェナンパが防御姿勢をとりつつ待機していたエスメラルダの身体をかかえて石段をかけ上がった。
「キハアアアアアアッ! キハアアッ!」
悪夢のような地下空間から全速力でとおざかる戦鬼たちの背中へ獲物をとり逃した凍壊竜エシムギゴルドスの忌々しげなさけびが小さくこだました。
6
トルナクロイブ神殿は陥没し、ふき上がった地底湖の水底へ消えた。
レベル73の凍壊竜エシムギゴルドスはキルドワン湖方面へ飛び去り、脅威をのこす結果となった。地下神殿から脱出した一行は神殿より2ブロックほど南へ位置する洞窟から外へでた。
人数とLP差で劣る『血まみれの犬団〈ブラッドステインドッグス〉』はスラエタオナとシェナンパのパーティーによって全滅させられた。
生きのびたウラエイモス樹海調査団のパーティー71名はプレイ上限時間ギリギリで森の外に待つ魔装蟲輿へ乗りこみ、無事クエスト完了となった。
全員、城塞都市オルムテサミド南門に付随する大部屋の簡易宿泊施設でセーブと云うことになる。全員に付与されたEPは20000ポイント。最低でもレベル1、最高でレベル3のアップとなった。




