第3章 トルナクロイブ神殿〈3〉
「……おれたちとも久しぶりのはずなんだけどな」
「……拙者らは影がうすいのでござろうか?」
シンキとゲオルギウスが傍目にはイチャイチャしているとしか思えないふたりの剣鬼に軽い嫉妬と疎外感をおぼえてうなづいた。かれらは今日まだ一言もヨッシーと言葉を交わしていない。
「デカイ図体してなにヘコんでんのよ。今日がこのクエスト最大の山場だからね。頼りにしてるわよ」
オフィーリアがふたりの槍鬼へふりかえるとあかるい口調で云った。さらにオフィーリアの背中へさわやかな言葉がかかる。
「大丈夫。オフィーリアにはぼくがついてる。いつだってぼくはきみのことを見守っていたよ」
「だまんなさい、ストーカー!」
ムードラの言葉をオフィーリアが一蹴した。
「……ぐっすん。オフィーリアが冷たい」
ムードラがイジけたふりをすると、彼の前に立つブプルノホテプが元気よく号令した。
「第2パーティーからゴーサインがでた。第3パーティー、トルナクロイブ神殿へ入るぞ!」
2
神殿内部の通路は完全武装の槍鬼が4~5人横列しても余裕なほど広く天井も高い。
そうは云っても廃墟であり、先の地震でさらに損壊が増しているらしく、足元にはガレキが散乱していた。
パーティーの一行はひとりひとり飛光石と云うアイテムで自らの周囲を照らしながら進んでいた。
飛光石はピンポン玉ほどの大きさで、宙にういたまま光を発する玉だ。もち主の意思で好きなように動かすことができる。すでに通路は真っ暗だった。前方に第2パーティーの飛光石がチラチラとまたたいている。ブプルノホテプがパーティーを制止した。
「ストップ。第2パーティーから連絡が入った。左右に部屋がひとつずつあるらしい。第1パーティーは前方を警備しているので、第2パーティーがその部屋を調査するから待機だって」
以前、神殿へ足を踏み入れたことのあるエスメラルダの記憶では、さほど大きくない部屋があるだけで本来なら問題はないそうだが、賊鬼が待ちかまえている可能性があるため、しらみつぶしにあたっていく必要があった。
第2パーティーが右の部屋へ入室したがなにもなかった。しかし、左の部屋は天井が崩落し、スラエタオナのパーティーと思しき戦鬼がふたりと黒衣の戦鬼がひとり死んでいた。賊鬼である。賊鬼の黒い胸甲に白い紋章が刻まれていた。
「……『血まみれの犬団』? 中2レベルのネーミングセンスね」
盗賊団の名前をきいたオフィーリアが辛辣に批評した。
「とりあえず敵の正体がハッキリしただけでもよかったじゃないか」
「うん。ユーレイとかプログラム相手じゃないってことらもんね」
オリベにヨッシーも同意した。
「賊鬼を追って部屋に飛びこんだところで天井が崩落したってところか?」
『ええ、おそらく。あの部屋にトラップはなかったはずです』
ひとりごちるムードラの脳裏に第1パーティーのエスメラルダの声がひびいた。
「それじゃ敵も神殿の地下迷宮地図はもっていないと云うことですね」
『そう……だと思いたいところですが、地下迷宮地図ももたずに神殿へ逃げてスラエタオナのパーティーをひきこむでしょうか? 即断するのは危険です』
第1パーティーがふたたび前進を開始した。部屋の前で待機していた第2パーティーの動きにあわせて第3パーティーも闇の中を慎重に移動する。




