第3章 トルナクロイブ神殿〈2〉
「前衛は私と『紅蓮の傭兵団』でつとめます。中盤はそれ以外の私のパーティー。アフマルドのパーティーもふたつに分けてください」
「アフマルドさまのパーティーには魔導師がひとり不足しておられるはず。わらわがそちらへ加勢してしんぜよう」
ミランダの提案にエスメラルダがうなづいた。
アフマルドのパーティーに魔導師は3人。ミランダがアフマルドのパーティーへ加われば、エスメラルダ率いる『紅蓮の傭兵団』以外の3パーティーへ魔導師がふたりずつ均等につくことになる。
アフマルドのパーティーをふたつに分ける相談をしているところへ、魔装銃将シェナンパのパーティーが合流した。
「……なんや、アフマルドとエスメラルダのパーティーもうついとったんか。ん、スラエタオナのパーティーおらへんやん。どこ?」
「か、関西弁?『ドラグーン・ゲヘナ』にふわさしくないっ……!」
輪の中へひとりふらりと歩いてきたシェナンパの関西弁に、オフィーリアがイヤイヤと小さく首をふった。失礼な偏見である。
「おお、シェナンパ! すっかり忘れてた!」
「いけずやなあ。これでもけっこうトばしてきたんやで」
「ちょっと大変なことになっているの」
シェナンパのパーティーを失念していたアフマルドにかわって、エスメラルダが現状をかいつまんで説明した。
「……ちゅうことは、くそったれな盗賊団と正面からやりあえる云うことやん。よっしゃ、わいが仇うったるタマ獲ったる」
「敵は盗賊団だけじゃないのよ。氷結竜アガイミコルドスにも警戒しなくちゃならないんだから」
「そっか。そやな。で、わいらのパーティーはどこに入ればええんや?」
「シェナンパはトルナクロイブ神殿の入口をかためてくれる?」
「ええっ、なんでなん!? わいも地下迷宮探検して、盗賊団とかコードラのタマ獲りたいやん! せやったらわいとエスメラルダが前衛でええやん。コードラ2匹くらいやったらわいひとりでもなんとかなるし」
「たしかに、外からの脅威は盗賊団だけだから、シェナンパは中へきてくれた方が頼りになる」
氷結竜アガイミコルドスの巣と目されるトルナクロイブ神殿へ外からドラゴンが侵入してくる可能性は低い。
「な。もしエスメラルダがわいひとりじゃ不安云うなら5人。5人くらいつけてくれたらええわ」
「……そうね。じゃあ『紅蓮の傭兵団』から5人選抜して、のこった人はほかのパーティーへ加わってもらいましょう」
結果、前衛はシェナンパとエスメラルダと『紅蓮の傭兵団』5名(イスカリオテとマルコロメオを含む)を先頭に10数人単位の5つのパーティーに分かれた。シェナンパのパーティーから11名が神殿入口の警護につく。
オリベたちのパーティーは3番目についた。エスメラルダとミランダ『紅蓮の傭兵団』を除く16名である。
かれらの前にシェナンパのパーティーから11名。かれらのうしろにアフマルド率いる12名、『紅蓮の傭兵団』7名とアフマルドのパーティーから7名の14名がつづく。
鬼将のいないパーティーはレベルの高い魔導師がリーダーとなる。オリベたちのパーティーのリーダーは『ハッピーホッピー』の魔導師ブプルノホテプだ。
第1パーティー、第2パーティーと間を空けてトルナクロイブ神殿の地下迷宮へと入っていった。つぎの番を待つオリベたちはトルナクロイブ神殿の大きな屋根の下で新しい隊列を組んでいた。
前衛から『ハッピーホッピー』と『憂蒼の薔薇』の槍鬼・銃鬼・剣鬼。ふたりの魔導師のうしろにオリベとヨッシー、オフィーリア、シンキとゲオルギウスの順でならぶ。
「なんかオリたんと一緒って久しぶりなのら!」
ニャンニャンコスプレと見まごうヨッシーがはしゃいだ口調でオリベの腕にとりついた。
「……ああ。たしかに久しぶりってかんじだ」
弾力に富むモフモフの胸が腕にあたって内心狼狽するオリベが平静をよそおってこたえた。
『ドラグーン・ゲヘナ』で会話するのは久しぶりだが、高校ではふつうに会話しているので云うほどのごぶさた感はない。




