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第2章 ウラエイモス樹海調査団〈13〉

挿絵(By みてみん)


 しかし、昨日、魔導師ムードラがあっさり看破したように、魔装槍将(そうしょう)アフマルドのパーティーに敵盗賊団のスパイがいることは明白である。


 よせ集めのパーティー内に疑心暗鬼が生じ、無言の警戒心でパーティーの雰囲気がぎくしゃくしはじめた。


「……とにかく今日もクエストに集中しよう。ウラエイモス樹海調査団リーダーの誇りにかけて、いずれ4人の仇は討つ!」


 魔装槍将(そうしょう)アフマルドが不退転の決意をこめてさけんだ。



     11



 2日連続の凶報に法印魔導師エスメラルダのパーティーもすくなからず動揺した。


 彼女たちは今日のクエストでアフマルドのパーティーと合流する。


 つまり、彼女たちも賊鬼の標的となる可能性がある。エスメラルダが乳白色にかがやく竜玉の()めこまれたクロイヴェルド・ロッドをかかげると、おごそかに告げた。


「みなさん安心してください。私たちには3重の魔法結界があります。ひとつ目はあなたたちのゲル。ふたつ目は私のクロイヴェルド・ロッドへ埋めこまれた竜玉結界。みっつ目はほかの魔導師さんたちによって張られた結界です」


「昨夜の被害者がひとりだったことを思えば、盗賊団がクロイヴェルド・ロッドの結界を破るのは絶対にムリです」


 エスメラルダの横へならぶ魔導師ムードラが追従した。


「そうじゃ。わらわたちもエスメラルダさんにはおよばぬが、結界でそなたらの安全をお守りいたそう」


 これまたエスメラルダのわきにひかえた女魔導師がエスメラルダよりも居丈高な口調で宣言した。黒いフードつきのマントからのぞく赤い髪に紫のアイシャドウが魔導師と云うより魔女を想起させる。


 魔導師ミランダ。レベル24。レベル29のムードラよりも格下である。


「……ゲオルギウス以外にもナルシストな戦鬼(プレイヤー)がいたのね」


『ドラグーン・ゲヘナ』へリアルをもちこむのがきらいなくせに、あからさまな別人格を演じている相手にも手きびしいオフィーリアがあきれ声でつぶやいた。


「おれもこのパーティーを守りたい。最大限の努力をするから、みんなでがんばろう!」


 大きなエジプト十字架の輪になった部分を首にかけた魔導師も拳を握って力説した。


 魔導師ブプルノホテプ。レベル29。


紅蓮(クリムゾン・)傭兵団(マーセナリーズ)』リーダー・魔装剣鬼イスカリオテが4人の魔導師の言葉に力強くうなづいた。


「よぉし、みんな今日も1日ハリキッテいこう!」


 イスカリオテの元気な言葉に戦鬼(プレイヤー)たちが拳を突き上げてこたえた。


「オーッ!」



     12



 あかるい雰囲気で出発した一行だったが、今日はドラゴンとの戦闘(狩り)が多く、なかなかつぎのマーカーポイントへたどりつくことができずにいた。


 彼女たちが狩りをしていない時も、たびたびEPが加算される。ほかのパーティーもいつも以上に狩りをくりひろげているらしい。


 3つ目のマーカーポイントをすぎたところで、初めてレベル45の氷結竜アガイミコルドス2匹を退治した。単独のパーティーなら全滅してもおかしくない相手だった。魔導師エスメラルダ以外のパーティーがひとつずつレベルアップした。


「それにしても、どうして樹海の奥へ近づくにつれてコードラが増えていくんだろう? むしろキルドワン湖に巣をつくりそうなもんだけど?」


「コードラの巣って水中なのかな?」


 パーティー右翼をかためるシンキとオフィーリアの会話に黒髪の銃妃(じゅうひ)パトリシアも加わった。


「そのようです。キルドワン湖の中からスイドラやコードラがあらわれる所を見た人もすくなくないそうですから」


「ウラエイモス樹海の北をさえぎるヴェイネヘール山脈のふもとに、キルドワン湖へとそそぐ水脈があるはずよね」


「この間の地震で地面が割れて水脈の一部が露呈した設定とかは?」


 オフィーリアのつぶやきに右翼をかためるもうひとりの剣鬼も口をだした。


 魔装剣鬼アルジャヒム。レベル27。


「なるほど。そうかもしれませんね」

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