第2章 ウラエイモス樹海調査団〈6〉
「成城寺学園!? きみたちも成城寺学園の生徒なのか?」
「え? イスカリオテさんも成城寺学園の生徒なんですか?」
「成城寺学園高等部2年A組、佐竹秀吉」
「ぼくは2年B組、松前元就」
イスカリオテの自己紹介に『紅蓮の傭兵団』のサブリーダー・マルコロメオがつづく。
「ふたりとも先輩なんですね。おれは高等部1年C組、織原織部です」
「ちょっと、オリベ。マナー違反!」
あくまで『ドラグーン・ゲヘナ』の世界にリアルをもちこみたくないオフィーリアが咎めた。
「ああ。ごめん。オフィーリアさん。『ドラグーン・ゲヘナ』にリアルをもちこむのは無粋だよね。まさかそんなに近いとは思わなくてつい……」
「いえ。イスカリオテさんが悪いんじゃないです。うちのバカふたりが悪いんです」
「バカふたりって、おれも?」
「当然」
即答するオフィーリアにシンキがしょげた。
「そんなことよりオフィーリア。ぼくたち初のお泊まりだね。女のコと魔導師はエスメラルダさまの近くにゲルを張った方がいいんだって。ヨッシーと3人で川の字になって寝よ……ぐはぁ!」
みなまで云わせずオフィーリアに股間を蹴り上げられたムードラが悶絶した。
「バカは3人だったわ……」
「うむ。まったく困ったものである」
「にゃはは。でも、おもしろいからいいのら!」
ゲオルギウスが痛そうに顔をしかめながらうなづくと、ヨッシーが能天気に笑った。
「ムードラのことはさておき、ほかの女のコたちがエスメラルダさんのゲルの周りに集まってるから、オフィーリアとヨッシーもいった方がいいよ」
そう云うとオリベが結界の外縁部へ向かって足をむけた。
「オリたんどこいくら?」
「『紅蓮の傭兵団』の配置を確認して、陣形の手薄そうなところにゲルを張るよ」
「それじゃ我々も一緒に」
オリベの背中にイスカリオテとマルコロメオがつづく。
「ねえオリたん。あとでオリたんのゲルに遊びにいってよい?」
「……ごめん。今日はつかれたから、すぐにログオフする」
「つまんないのら! オフィーリア、こうなったらみんなで女子会するのら!」
ヨッシーがオフィーリアの手をとると女のコたちの輪へかけだした。
「それじゃぼくも……」
「あんたは私たちの3m以内にゲルを張らないこと!」
生まれたての子鹿みたいに痙攣するムードラへオフィーリアが容赦なく云いはなった。
「拙者らもこのあたりにゲルを張り申さん」
「そうするか」
ゲオルギウスとシンキがうなづきあうと〈メモリング〉を操作してゲルを張った。
次第に遠ざかるクラスメイトたちのあかるい会話に耳をかたむけながら、オリベはどうして自分がいつも以上につかれているのか、その理由がわからないことに気づいて首をかしげた。
5
「おはよう」
織部と沖田が寮の食堂で朝食をとっていると、空いていた沖田のとなりの席に、朝食のトレイをかかげたスウェット姿の見知らぬ先輩に挨拶された。
「「おはようございます」」
ふたりがいぶかしみつつ異口同音に頭を下げると、見知らぬ細面の先輩が天然パーマの茶髪をゆらしてほほ笑んだ。
「なんだ、気づいてないの? 昨日、自己紹介したじゃん。魔装剣鬼マルコロメオ、松前元就だよ」
「あ! 先輩が……!?」




