第2章 ウラエイモス樹海調査団〈5〉
レベル27のゲオクロイヴ7匹の竜玉と竜眼と肉。そしてEP105をゲットした。
エスメラルダが手をたたいて少女のようによろこんだ。
「みなさんおみごとです! すばらしい!」
「オフィーリア、オリたん、早速ステキ炸裂なのら!」
「ちゃんとMPのこってるだろ?」
エスメラルダの正面で一緒に手をたたくヨッシーへ双剣をおさめたオリベが苦笑した。パーティーの左翼ではゲオルギウスをかこんでふたりの銃鬼が感心していた。
「あまり見てくれのよい武器だと思わなかったけど、つかえるね、そのチェーンメイス」
「おれもぶんまわすだけの武器かと思ってた」
「さに非ず」
神式打突重鉄球を肩にかついだゲオルギウスが得意げに胸を張った。大型ドラゴンを狩ったわけではないが、この狩りでパーティー内の信頼感と結束が高まった。初戦にしては上々である。
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法印魔導師エスメラルダのパーティーは、彼女たちが担当するウラエイモス樹海の端を西へとジクザクに歩き、3つのマーカーを打ちこんだ。その間にも数回小規模な狩りがあり、ゲオクロイヴや飛蛇グイヴェルなどのドラゴンを20数匹狩った。
いちばん西を担当した魔装槍将アフマルドのパーティーは、いちど飛蛇グイヴェルに遭遇しただけだが、ほかのパーティーはエスメラルダのパーティー同様、数回の狩りを経て、猟果とレベルポイントをこつこつとつみ上げた。
「今日はこのあたりで野営しましょう」
すっかり日も暮れ果ててふかい闇につつみこまれた樹海の中で法印魔導師エスメラルダが云った。
連続プレイ時間は2時間20分をこえていた。クエスト終了時間まであと40分もなかったため、3つ目のマーカーを打ちこんだあとは、30人と云う大パーティーの野営に適したひろい空間をさがしていたのだ。
全員が輪になって野営できるほどの空間ではなかったが、木々の間隔が比較的ひろく、地面の損傷がすくないところを選んだ。
エスメラルダが乳白色にかがやく竜玉の嵌めこまれたクロイヴェルド・ロッドを大地へ突き立てると、広大な円形の魔法陣がぼんやりとうかび上がった。レベル45の氷結竜アガイミコルドスをも防御する強大な結界である。
「この結界内にゲルを張って野営してください」
エスメラルダがそう云いながら杖からはなれると、杖を中心にキルト仕立てのかわいらしいゲルがあらわれた。
「えっと、明日の予定は……午后9時ログインだそうです」
エスメラルダの言葉に各々がコマンド画面をチェックする。ウラエイモス樹海調査団は『ドラグーン・ゲヘナ』の公的クエストなので、開始時刻が設定されている。
「それではみなさん。今日はおつかれさまでした。また明日お会いしましょう」
「おつかれさまでした!」
丁寧にお辞儀するエスメラルダにパーティー一同が頭を下げて、今日のクエストが終了した。エスメラルダが自分のゲルへ入ると、ぼんやりかがやいていたゲルの光が消えた。ログオフしたらしい。ほかの面々も自分たちのゲルを張る場所を吟味する。
「みなさん。外縁部には我々『紅蓮の傭兵団』がゲルを張ります。女性や魔導師の方々はなるべくエスメラルダさんの近くにゲルを張ってください」
『紅蓮の傭兵団』リーダー・イスカリオテの言葉に『紅蓮の傭兵団』の面々がうなづくと、魔法であかりをともしながら円の四方へゆっくりと散っていく。
「顔に似あわずフェミニストなのら」
魔装剣妃ヨッシーがいささか失礼な褒め方をするも、イスカリオテは頭をかいて照れた。
「ねえ、オリベ。私たちもいいかげんパーティー名を決めた方がよくない?」
隊列が解かれると自然と元々のパーティー同士が鳩首する。オフィーリアの言葉を耳にしたイスカリオテがオリベへたずねた。
「きみたちにはパーティー名がないのか?」
「ええ。おれたちは『ドラグーン・ゲヘナ』の世界で知りあったんじゃなくて、みんなクラスメイトなんです」
「じゃあ、パーティー名は『成城寺学園1年C組』にしようか?」
シンキの冗談にイスカリオテがおどろいた。




