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第2章 ウラエイモス樹海調査団〈1〉

挿絵(By みてみん)


     1



「……これはスゴイことになっているな」


『ドラグーン・ゲヘナ』へログインした魔装剣鬼オリベがオルムテサミドの城壁ごしに見える(くら)い空に愁眉(しゅうび)した。


「ジギゾコネラ火山がド派手に噴火したんだって。地震調査のクエストに参加してた連中が火山弾で結構やられたらしい」


 魔導師ムードラの情報に神装槍鬼(そうき)シンキが苦虫を噛みつぶしたかのような表情でうめいた。


「えげつないトラップだな」


「生還しただけでかなりEPが加算されたとか」


 ふだんは狩りによって加算されるEPだが、ある種のクエスト成功でもEPが加算される。EPがたまるとレベルアップする。


「拙者らがジギゾコネラ火山で地震に遭った時、とくにEPはつかなかったはずだが?」


「ようするに、死亡フラグが立つほどのイベントじゃなかったってことなのら」


「今回の伏線だものね」


 神装槍鬼(そうき)ゲオルギウスのさもしい言葉を魔装剣妃(けんひ)ヨッシーが一蹴し、魔装銃妃(じゅうひ)オフィーリアもうなづく。


「日時をまたいでもよおされる特別クエストなんて聞いたことがない」


 ムードラがオルムテサミド城前の噴水広場へかかげられた高札をあおぎ見ると、大々的なクエスト参加募集が記されていた。


『1、城壁の一部が破損した城塞都市アギハベラミドの警備[100名・5日以上]』


 城塞都市アギハベラミドはジギゾコネラ火山の南、オンドロイボナの森の北西にある。先の噴火で城壁の一部が破損し、ドラゴンに対して無防備な状態となっている。ジギゾコネラ火山からエンドラやドクドラが迷いでてくるため、城壁を修復するまでアギハベラミドをドラゴンから守るのが、このクエストである。


『1、ウラエイモス樹海の調査[100名・4日以上]』


 ウラエイモス樹海は城塞都市オルムテサミド北東、キルドワン湖北部にひろがる樹海である。


 以前から氷結竜アガイミコルドス(レベル45)の巣があるとうわさされていたが、地震後、樹海周辺に氷結竜アガイミコルドスの群れがあらわれるようになった。


 レベル30以上のドラゴンが群れることはまれだ。そこでウラエイモス樹海を調査し、ついでに氷結竜アガイミコルドスを狩るのが、このクエストである。


「断然、ウラエイモス樹海でござろう」


 ゲオルギウスの言葉にオリベたちがうなづいた。オリベたちのパーティーだけでレベル45前後のドラゴンを相手にするのは酷だが、大パーティーであたるのであれば心強い。


「やあ。オフィーリアたちもきてたさ」


 金糸の刺繍がほどこされた純白の僧衣を身にまとう柴田彰子(あきこ)こと司祭アムネリアがあらわれた。手には竜眼の()めこまれたアスタミロス・ロッドを手にしている。


「アムネリア!」


 オフィーリアがアムネリアにかけよると手をとりあってはしゃいだ。見かけにふさわしくない女子高生のノリだ。


 アムネリアのうしろには4人のパーティーがひかえていた。上杉小町こと魔導師ウルコマチがムードラに気づいて会釈(えしゃく)した。ムードラも笑顔で手をふりかえす。


「私たちウラエイモス樹海のクエストに参加するつもりなんだけど、アムネリアたちもどう?」


「私たちのレベルでウラエイモス樹海はキツイさ。アギハベラミドの方が安全にパーティーのレベルアップができそうだから、そちらへいくさ」


「そっか。残念。そのうちみんなで一緒になんかしたいね」


「うん。みなでいけるようなフィールドの情報収集を進めておくさ」


「進めさせておくさ、のまちがいじゃない?」


 アムネリアの言葉をムードラが混ぜかえした。


「教団には教団だけのパーティーも多数存在する。酒場だけが情報収集の場所ではないさ」


「なるほどそうか。こいつは失言だったね。てへぺろ!」


 ムードラがおどけて頭を下げた。


「みんなの武運長久を祈るさ」


「ありがとう。アムネリアたちも気をつけて」


 城塞都市アギハベラミドのクエスト参加者は南門へ集合、ウラエイモス樹海のクエスト参加者は東門へ集合である。ふたつのパーティーがそれぞれ噴水広場をあとにした。


 大勢のパーティーやプレイヤーでごったがえす噴水広場へ〈鉄の剣〉をひきずりながら歩いてきた覚者の姿に目をとめる者はいなかった。

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