表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/84

第1章 ドラグーン・ゲヘナ〈20〉

挿絵(By みてみん)


 柴田彰子(あきこ)はアスタトロス教団司祭アムネリア。レベル34。上杉小町は魔導師ウルコマチ。レベル18。


「司祭とはめずらしい選択ですな」


 微妙に神装槍鬼(そうき)ゲオルギウスの口調をひきずった柳生が柴田彰子(あきこ)へたずねた。


 司祭は柳生ことゲオルギウスや信輝(のぶてる)ことシンキ同様、教団所属のいわば魔導師である。パーティー全体の防御と治癒魔法に特化していて攻撃力は皆無と云ってよい。魔導師でレベルを上げてから司祭へ転じるのが一般的である。


 柴田彰子(あきこ)が黒ブチメガネのブリッジを指で押し上げながらこたえた。


「うん。私、攻撃ってあんまむいてないし、司祭だとディフェンス魔法のMP上限値がすごく上がるのさ」


「アムネリアはレベル34だけど、MP上限値だけで云えばレベル50の法印魔導師クラスだもんね」


 市姫がお手製の弁当に舌鼓を打ちながら補足した。彼女の朱雀(すざく)寮は完全個室の1Kなので自炊可能だ。


「法印魔導師クラス!? すげえじゃん!」


 信輝(のぶてる)がすなおに感嘆した。


「うちのパーティーの平均レベルって25前後だから、てっとりばやく全体のレベルをひき上げようと思ったら、司祭のディフェンス力は魅力なのさ」


「沖田くんも司祭へ鞍替えしたら……って、品性下劣でアウトか」


 市姫の皮肉を意に介さず沖田がこたえた。


「司祭っていろいろと制約が多いんだよ。旧宗教である廃墟の恩恵がうけられないとか、酒場への出入りができないから独自の情報収集がむずかしくなるとか、月の女神アスタミロスの恩恵がうけられない(さく)の日はLPやMPが半減するとか。パーティー依存の能力者だよね」


「パーティーの庇護(ひご)者と云ってほしいのさ」


「存外、不便なのら」


「そこで私のサブと魔法攻撃担当に白羽の矢を立てたのが魔導師の小町ちゃんなのさ」


 柴田彰子(あきこ)のとなりで()とした雰囲気の女生徒が小さく頭を下げた。


「どうも。上杉小町です。まだレベル18なんですけど」


 彰子(あきこ)がたずねた。


「沖田くんも魔導師だよね? レベルは?」


「29」


「ふわ~、すごいですねえ」


「小町さんならすぐに追いつきますよ」


 素直に感嘆する小町に沖田が根拠もなくはげました。


「沖田くん。小町ちゃんのレベルアップに協力してくれない? ザンボワカン神殿のクエスト攻略のサポートしてあげてほしいのさ」


「オンドロイボナの森の南の?」


「そうさ。本当は私がついていってあげたいんだけど、今は司祭だからムリなのさ」


 レベル20以下の魔導師必須のクエストである。ここで魔導師たちは自分だけの特別な杖を手に入れることになる。


「お安い御用だよ。神殿の地下迷宮(ダンジョン)やトラップはすべて頭に入っているから、ぼくが小町さんの胸もみ腰もみ攻略のお手伝いをしてあげましょう」


「それを云うなら手とり足とりでしょ!? 平成のギャグか!?」


「あはは。お願いします~」


 沖田の下ネタへ過敏に反応する市姫とはうらはらに小町が笑ってうけながす。


「小町ちゃんの方がオフィーさまより大人なのら」


 芳乃(よしの)の言葉に周りがうんうんとうなづいた。


「ちょ……なによそれ!?」


「いちいち相手にしすぎだって」


 織部が冷静に(いさ)めるも、元凶の下ネタ王子が平然と火に油を注ぐ。


「まあまあ、市姫さん。ようするにヨッシーは、人の寛大さは胸の大きさに比例すると云いたいんだよ」


「そうは云ってないら」


「……云いえて妙かも」


 4名の女子生徒のとある高低差を視認した信輝(のぶてる)がよけいなことをつぶやいた。


「ばっ、幡随院(ばんずいいん)くん!?」


 市姫が4人の中で最も起伏にとぼしい胸を手でかくすと怒りの矛先を拡散した。彰子(あきこ)が市姫の稚気にあきれた。


「市姫がムキになるからからかわれるのさ。貧乳(ぺたちち)なんか気にするな」


「だっ、だれが貧乳(ぺたちち)よっ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ