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99 ボーンリング

 俺とハルカの二人が集合場所に戻るとすでにみんなは揃っていた。ハルカはスノードラゴンとの戦いでの自分のミスをみんなに謝っていたが、もちろん最初から誰も怒ってはいなかったのであっさりとその話は終わる。


 それでも謝ったのはハルカなりのけじめなのだろう。


 そんなハルカたちのやりとりを見ていたヒヨリが俺に近づいてきて話しかけてくる。


「何というか、雰囲気がいいクランっすね」

「ああ、俺もそう思うよ。というわけでヒヨリもいつでも加入してくれていいからな?」

「あはは」


 今すぐ加入することは出来ないと言っていたヒヨリに、俺がそんな冗談を言ってみると、それが伝わったようでヒヨリは笑って誤魔化した。


「さて、じゃあ次は南のブレビア湿原の奥に行こうか」


 そうして、いつも通りに戻ったハルカはみんなをまとめるようにそう言った。ちなみに今回のツアーのパーティーリーダーはハルカが務めている。というより今までのパーティーでもずっとそうだった。


 以前の話だと本人はあまり積極的にやりたい役割ではないようだけど、慣れているせいもあってか、やっぱりハルカがリーダーとしてみんなをまとめてくれた方が俺としてはしっくりくる。


 何にせよ次の目的地は以前に一度狩りをしたことがあるブレビア湿原のさらに奥にある森林エリアらしい。


 ブレビア湿原のモンスターは状態異常攻撃が豊富で嫌らしい敵ばかりだったが、今回はマコトだけでなくヒヨリも遠距離攻撃が可能なことと、状態異常を回復できるのがハルカとシャルさんの二人ということでかなり余裕がある。


 以前四人で来たときは入口付近のモンスターと戦うので精一杯だったものの、六人で来た今回は奥の方に現れる一回り強そうなモンスターも難なく倒すことが出来た。


 とはいえ俺は、敵がすぐに倒されるのもあってあまり活躍出来てはいなかった。たぶん雪山よりも敵が弱くて、さらに前回からマコトの武器が更新されたことも影響しているのだろう。


 俺が泥に足を取られて移動に困っている間に、遠距離からマコトの魔法とヒヨリの矢が的確に敵を撃ち抜いている。


 うーん。足場が悪いから近接職は仕方ないのかも知れないけど、やっぱり思い通りに活躍出来ないのはもどかしい。


「ん、お兄ちゃんどした?」

「ああ、いや。俺もそろそろ装備の更新とか考えた方がいいのかなとか思ってな」

「あー、そうかもね。武器のデモンズスピアは当分そのままでいいけど、マジックレザー装備が今ちょうど適正レベルくらいだから、防具は次を考えてもいい時期かな」


 移動速度などにも関係する素早さのステータスは防具の影響が大きいらしいので、それを更新すれば今よりはいくらか動きやすくなるようだ。


「……ちょっと待って。それ以前にチトセって、アクセサリー枠の装備って何もつけてなくない?」

「え?」


 俺とハルカが装備の話をしていると、突然キリカがそんな風に指摘する。

 確かに俺はまだアクセサリー装備を一つもつけていなかった。


 というのも今まで一度もアクセサリー装備をドロップしたことはないし、店でNPCが売っているものは値段の割に効果が弱いから、アクセサリーについては後回しでしばらくは考えなくていいと初日にハルカから説明されていたからだ。


「あー……確かにそう言ったんだけど、そのしばらくというのはリアルの時間じゃないというか」

「……ハルカ。チトセさんはゲーム初心者なんだから、ちゃんと細かく説明してあげないと」


 ハルカのものぐさで大雑把な面を今までもずっと見てきたマコトは、ジト目でそれを少し責めるようにハルカに言った。


 どうやらハルカとしては、俺がゲームの仕様に慣れてお金に余裕が出てくれば、あとは自主的に市場などでアクセサリーを入手して装備すると思っていたようだ。


 ちなみにこのゲームのアクセサリー装備は髪飾りや耳飾りなどの頭部用、ネックレスやチョーカーなどの首用、指輪や腕輪などの腕部用の三か所がある。


 確かにつけるだけでステータスが上がるのだから、アクセサリーをつけない理由はない。考えれば当たり前の話ではあった。


 ハルカたちのようなゲームに慣れた人間からすれば、装備欄に空欄があるだけで落ち着かないらしい。さすがにその感覚までは俺には分からないけど。


 何にせよすでに街を出てしまった以上はアクセサリーについてあれこれ言っても仕方ない……と思っていたら、シャルさんが「少し待ってください」と言って生産用の装備に着替えた。


 そうして周囲に敵がいない場所で十秒ほど待つと、生産を終えたシャルさんは俺に取引を申し込む。


「ボーンリング?」

「はい、動物の骨から作る腕部用アクセサリーの指輪です。適正レベルは7あたりであまり強いものではありませんが、今の手持ち素材で作れるのはこれだけだったので」

「いや、助かるよ。ありがとうシャルさん」


 シャルさん的には無いよりはマシということなのだろう。礼を言ってから実際につけてみると、防御力や素早さなどが全体的に少し上がった。


 確かにこれを三か所つけられるというなら、アクセサリーの影響は俺が想像していた以上に大きいようだ。今のところお金には余裕があることだし、街に戻ったら一回市場を覗いてみた方が良いかも知れない。


「マコト、チトセがシャルから指輪を受け取ったわよ?」

「何言ってるのキリカちゃん、ただの装備だよ?」


 俺がシャルさんと取引している間に、マコトとキリカが何やら雑談で盛り上がっていた。今さらではあるけど、キリカはマコトが遠慮することなく話せる貴重な相手だ。


 ゲームを一緒に長年プレーしてきたということは、それだけ二人にとって特別な経験だったのだろう。


「さて、それじゃあ先に進もうか」


 そうして俺とシャルさんの準備が完了したのを確認したハルカがみんなに号令を出し、俺たちはすぐに冒険を再開するのだった。


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