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96 スノードラゴン戦1

 全員で前に進むと、空を飛んでいたドラゴンは目の前に降りてくる。白銀の鱗を持つそのモンスターはスノードラゴンという名前のようで、攻撃も雪や氷を扱ったものばかりらしい。


 ドラゴンといえば何となく火を吹くイメージだったけど、ゲームの中では別に全部がそういうわけでもないらしい。


「じゃあみんな、準備はいい?」


 ハルカがみんなにそう声をかける。


 まあ準備といってもこの場で出来ることなんてほとんどなかったりするのだけど、一応俺はシャルさんから投擲用に薬品アイテムを少し分けてもらったりもした。


 そうして準備が整ったことを確認したハルカが全員に【ガードコート】の魔法をかけ終えたのが合図となって、戦闘が始まった。


「って、いきなりアビリティ発動の前兆かよ」

「チトセ、あれは止められないから無視して攻撃するわよ」


 キリカがそう言ったのでその言葉を信じて俺はキリカと同じようにスノードラゴンに近づいていく。


 そうしてスノードラゴンの注意をしっかりとキリカが集めたことを確認してから、俺もさっそくシャルさんから分けてもらった毒薬と炎上薬を投げつける。


 投げたアイテムはしっかりとヒットして、スノードラゴンに状態異常を付加した。


「【アシッド】! 【ベノム】!」

「【ヘヴィアロー】!」


それに続くように後衛のシャルさんとヒヨリが敵の防御力を下げるデバフ効果がある攻撃を行った。


 こうしたボスは元々の防御力が高いのもあって、デバフは大きな効果を発揮するという話だ。とはいえデバフがかかった上で俺が攻撃してみても、スノードラゴンの体力はほぼ減っているようには見えない。


「さすがに未だかつてないレベルで堅いな」

「だねー。今のパーティーの火力だととにかく長期戦になるから、お兄ちゃんも安全を最優先する感じでよろしくー」

「ああ、分かった」


 ハルカのアドバイス通り、被ダメージを減らすことを重視した方が良いのは間違いない。相手に一点も取られなければ、少なくとも負けることはないのだから。


「そろそろ【ダイヤモンドダスト】が来るけどダメージ自体は大したことないから慌てないでね」


 開幕からスノードラゴンは体にオーラを纏ってアビリティの準備をしたままで、まだ一度もこちらに攻撃してきていないが、ようやくアビリティを発動してくるようだ。


 ちなみに【ダイヤモンドダスト】はこちらのパーティー全員に魔法ダメージと凍傷の状態異常を付与する回避不可能な攻撃だった。


 ダメージ自体は大したことないと言いつつ、俺とキリカ以外は一瞬で瀕死になっている。しかも凍傷の状態異常は毒などと同じように継続ダメージを与える効果なので、これを治癒しないことにはどんどんと体力が削られてしまうのだった。


 しかしそんなピンチもハルカとシャルさんはしっかりと手分けしてみんなの状態異常を回復させていく。


 とはいえ当然体力の回復は後回しになるので、全員の体力はすでに満身創痍といえる状況になっていた。


 それでも俺はヒーラーを信じて攻撃を続ける以外に出来ることはない。他のみんなも同じ考えのようで、マコトの【ファイアボール】やヒヨリの【三連射】が次々にスノードラゴンへと突き刺さっている。


 そういえば今この瞬間は俺の【逆境Lv.2】が発動しているようで、全体的にステータスが上昇していた。雪の上だと素早さのステータスにマイナス補正がかかるのが難点だったけど、今の状態なら普段と遜色ない動きが出来そうな感じだった。


「なあハルカ、俺の体力を低い状態で維持することって出来るか?」

「うーん、事故が怖いなぁ……可能な範囲でやってみるけど、危なそうだったら容赦なくヒールするからあまり当てにしないでね?」

「ああ、それで頼む」


 とりあえず【逆境】で攻撃力が上がっている今のタイミングで一回限りの【奇襲】を発動させてしまうのが良いだろう。


 横に回り込もうとするとスノードラゴンは大きな翼で攻撃してくるが、今なら問題なく避けられる。


 そうして俺は死角に回りながら【アタックチャージ】を発動させて自分の攻撃力をアップし、安全なタイミングで最大威力の【パワースラスト】を放つ。


「チトセさんナイスダメージです!」


 マコトがそう言ってくれたが、スノードラゴンの体力全体からしたら微々たるダメージだ。


 それでもみんなでずっと攻撃していると少しずつスノードラゴンの体力が削れているのも確かだった。その間もずっとキリカはスノードラゴンの爪や牙、翼による攻撃をしっかりと盾で受け続けている。


 防御力の高いキリカでさえ一撃で半分以上の体力を持っていかれてしまうが、ダメージを受けた直後にハルカがヒールで回復させていて、とりあえず状況は安定しているように見えた。


 俺はスノードラゴンから狙われないように、スノードラゴンがキリカに攻撃を仕掛けているタイミングの隙を狙って攻撃をする。下手なタイミングで攻撃を仕掛けると俺が狙われるかも知れないので、ここはとにかく安全第一だ。


 そうこうしているうちに最初の【ダイヤモンドダスト】で受けたパーティー全員のダメージをシャルさんが回復させていく。


「チトセさん、一旦体力を回復させるのでステータスの変化に気をつけてください」

「了解」


 最後にシャルさんが俺の体力を回復させたところで、スノードラゴンが再度【ダイヤモンドダスト】の予兆を見せた。今度は一回目よりも発動がかなり早くて、ちゃんと事前に全員の体力を回復させていなければ、おそらくパーティーは崩壊していただろう。


 ただ俺以外のみんなはちゃんとスノードラゴンの行動パターンを把握しているようで、危険な場面でもギリギリのところで踏みとどまってパーティーは維持されていた。


「ここからはスノードラゴンが高威力の特殊攻撃と魔法攻撃を混ぜてくるので要注意っす」


 ヒヨリのその言葉はみんなへの確認の意味もあるのだろうけど、メインはたぶん俺に向けたものだ。


 とりあえずヒヨリによると【氷の槍】がスノードラゴンの周囲に現れたら、それが発射されるまでの間に槍が向いてる直線上から離れればいいとのことだった。


 これは現状誰が食らっても即死する代わりに、発動までにある程度の猶予があるのでしっかり見ていれば充分に回避可能だという


 ただし同時にマコトもよく使っている【アイスファング】の魔法も使ってくるようで、これを食らうと数秒間移動速度が低下するデバフ効果を受けてしまう。


 とはいえこのゲームの魔法攻撃はパリングが仕様的に不可能な上、回避も極めて困難なので【アイスファング】を食らうこと自体は仕方ないようだ。


 最悪なのは【氷の槍】が現れてもまだ猶予があるからと、欲張って何か行動をしたところに【アイスファング】が飛んでくるパターン。ただでさえ雪の上で素早さのステータスが落ちているところに移動速度低下のデバフを受けると、【氷の槍】を避けられずに死ぬことになる。


「魔法の詠唱中でも槍の直線上から離れることを最優先。私とシャルは散開して常にどちらかがキリカをヒールできるように。アイスファングのダメージの回復は後回しで」

「分かりました」


 ハルカは手短に要点だけまとめてシャルさんと方針を確認した。これまではハルカがキリカのヒールを担当していたけど、この先は【氷の槍】の影響でハルカが回復できない場面が出てくるからみたいだ。


 ちなみにベータテスト時代はここで多くのパーティーが壊滅したらしい。話を聞いた限りはそこまで対処が難しい攻撃もなさそうだったけど、そういうからにはきっと何かがあるのだろう。


 そんな風に考えながら、俺はもう一度気を引き締め直すことにした。


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