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94 スナイプホーク

 俺たちは六人一緒に調査団の施設で未開拓エリアツアーのクエストを受ける。


 事前に聞いていたとおり三つの指定されたエリアを巡って情報収集をするというクエストだが、情報収集の内容は三か所のエリアボスを肉眼で確認してくることとなっていた。


「というか結構な無茶ぶりしてくるな、この調査団」

「まあそれだけ調査に行き詰ってるってことなんだよ、たぶん」


 俺の率直な感想にハルカはそんな風に返す。


 その後、死んだときに戻ってくる場所をリムエストからフェリックに全員で変更しておいた。これで一応は失敗しても安心、ではないにせよ時間のロスは減るだろう。


 そんな感じで俺たちはさっそく北の目的地に向かって移動を開始した。


「ちなみに北は雪山っすよ」

「雪山って確か、足場がかなり悪くて動きにくいんじゃなかったっけ?」

「そうね。近接職の私とチトセは特に大きな影響を受けるから注意が必要かな」

「まあ長時間狩りをするわけじゃないんで、まっすぐ突っ切るだけならそこまで危険もないと思うっすよ」


 何にせよ雪に足が取られて素早さのステータスにマイナス補正がかかるのは間違いないので、普段通り動けないことを頭に入れておく必要はありそうだ。


 などと言っているうちに、雪山以前にまず道中の荒野でモンスターに襲われる。


 サソリやウシなど見ただけでタイプが分かりやすいモンスターが多い中、少し対処に困ったのがスナイプホークという鳥のモンスターだった。


 スナイプホークは普段空高くを飛んでいて、こちらの誰かが攻撃モーションなどで隙を見せるとそのタイミングを狙いすまして超高速の急降下攻撃を仕掛けてくる。


 ちなみに俺の【跳躍】と槍の長さを考慮しても普段は攻撃が届かないので、敵が降りてきて攻撃した後の数秒の隙の間しか俺は攻撃が出来なかったりする。


 そんなわけで近接職にとっては特に厄介な相手だった。


「スナイプホークはヒヨリとマコトに任せて、お兄ちゃんは固いヒースバイソンの処理を優先で。ただスナイプホークからクリーンヒットは極力貰わないようにだけ注意だよ」

「おーけー、了解」


 ただそれでも普段と違い俺たちは六人パーティーで、しかも戦闘が上手いメンバーが揃っているのもあって、しっかり役割分担をしていけば特に問題なくモンスターを倒すことが出来た。


 パーティーの人数が四人を超えているので経験値やドロップはあまり美味しくないけど、その分普段とはまた違った戦い方が出来るのが面白かったりする。


 そうこうして何度目かの戦闘していると、俺のすぐ近くにいるキリカがスナイプホークに狙われた。


「キリカ」

「無理!」

「わかった」


 すでに地上で三体の敵から狙われているキリカに短い言葉とアイコンタクトで確認を取った俺は、その返事を聞いて即座にスナイプホークに狙いを変える。


 ちなみに今回は敵にスナイプホークが二体いたので、こっちのスナイプホークはまだ無傷の状態だった。


 そのスナイプホークがもの凄い速さで急降下してきて、弧を描くような軌道でキリカの背中を狙おうとしてくる。そのタイミングで俺は【跳躍】のスキルを活かして跳びあがり、スナイプホークの真横からデモンズスピアの【奇襲】が乗った通常攻撃を叩き込む。


 するとスナイプホークは一撃で倒すことが出来た。


「お、柔らかいな」


 こちら側に来てからは【奇襲】でも一撃で倒せない敵がほとんどなので、それと比べるとスナイプホークはかなり耐久力が低いようだ。まあかなり攻撃しづらいので、それくらいでないと困るのだけど。


 そしてあとは残る地上のモンスターをみんなで手分けしながら処理していく。さすがにみんな慣れている感じで、スナイプホークの脅威がなくなってからの戦闘はかなりあっさりと終わった。


「さすがにこのメンバーだと道中は特に問題ないね。ということで雪山もこの調子で頑張ろう!」

「あの、すみません。少し質問があるのですが」


 雪山が目前になったこともあって、ハルカが戦闘後のみんなに声をかけていると、シャルさんがそんな風に小さな声を上げた。


「ん、シャルが質問って珍しいね。何かな?」

「えっと、さっきチトセさんが急降下中のスナイプホークに攻撃したりとか、普通だとあり得ない動きをしているのにみなさんは驚かないのでしょうか? こないだも槍で矢をパリングしたりとかあったのに、誰も驚かないのが不思議だったのですけど」

「あー……あれ? お兄ちゃん、もしかしてシャルに変態プレイって見せたことないの?」

「変態プレイ言うな。それだと俺が何か見せたがる変態みたいだろ」

「そういえば最近、私たちもチトセの変態っぷりには感覚がマヒしてたわね」

「あのキリカさん? 俺の話聞いてました?」

「そもそも私たちが最初に見せられたチトセさんのプレイって、六十メートル先のゴブリンを【投擲】で一撃だったもんね」

「マコトありがとう!」


 マコトだけが俺を変態と言わなかった。やっぱりマコトは良い子だ。


 ただ確かに言われてみるとシャルさんの前ではゴブリンランスでコウモリを倒したり蟻を倒したりした程度で、普通のプレイしかしていなかったかも知れない。


「ちなみに自分が最初に見たのは、リザードグラップラーの攻撃とリザードメイジ四体の雷魔法を延々と避けてる変態さんだったんすけど」

「……ありがとうございます。みなさんのお話でチトセさんのことがだいたい理解出来ました」


 そう言いながらもシャルさんの表情は若干引いていた。

 ……まあ仕方ない。誤解はいずれ解けるので、それまでの辛抱だ。


 そうこうしているうちに俺たちは雪山までたどり着く。


「ちなみにお兄ちゃん以外は知ってることだから教えておくけど」

「ん、何だ?」

「今回のクエストで会いに行く三体のエリアボスって、ベータテスト時代には結局誰も倒すことが出来なかったんだよね」

「へぇ、ということは強いんだな」

「うん、めちゃくちゃ強いよ。だから当面はその三体を誰が一番早く倒せるか、プレイヤーたちの間で競う感じになるんじゃないかな」

「ちなみに上位プレイヤーたちの間の噂では、エリアボスを倒すと新しいエリアへ行けるようになるんじゃないか、とか言われてるっす」

「なるほどなぁ」


 とはいえそんなボスにはさすがに八人パーティーで挑まないと厳しいだろう。


 そう考えると俺たちはまだ人数も足りないし、真面目にそのエリアボス攻略の競争に参加するのは難しい。


 まあ俺は一番乗り自体に興味があるわけではないので、自分なりのペースで装備集めやレベル上げをしながら、いずれチャレンジが出来たらいいか。


 俺はそんなことを考えながら、とりあえず今日のところはエリアボスの顔だけでも覚えて帰るつもりで、雪山登山を開始するのだった。


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