91 三人娘会談その5
「ということで今日はマコトがいません」
「まあ家の用事なら仕方ないわね」
「そうだねー。そういえばキリカ、ダンジョン帰りにお兄ちゃんと話してたみたいだけど、どんな話をしてたの?」
「ん、別に普通の雑談というか、私の昔話がメインだったかな。ハルカたちとの出会いの話とかもしたけど」
「あー、懐かしいね。それ私たちがまだ小学生の頃だよ」
「あのときはハルカが突然話かけてきたから私はびっくりしたんだけど……というかあれって、ハルカは結局のところどうして私に声をかけたの?」
「んー、あれは何というか、理由が欲しかったんだよね」
「理由?」
「そう。頑張る理由とでも言えばいいのかな。他人を巻き込んだからには、私たちもちゃんとしないといけないよね?」
「まあ、そうね」
「あのときのことは今でも覚えてるけど、狭い世界だけで生きてる小学生にVRMMOの世界は大きすぎて、何より自由すぎたんだよ。それこそ自分の責任で初めの一歩を踏み出すのが怖くなるくらいには、ね」
「確かにその気持ちは分からなくもないわね……でもそれだと別に、話かける相手は私じゃなくても良かったんじゃないの?」
「そうだよ?」
「……ハルカ?」
「あはは、冗談だって。というかあのとき周囲にいた人の中からキリカを選んだのは、実はマコトなんだよね」
「マコトが? ……何というか、それは意外ね」
「だよね。で、その選んだ理由なんだけど、キリカの目が一番キラキラしてたから、って言うんだよね。ゲームへの期待とか憧れとか、そういうのをたぶんマコトは感じ取ったんだと思うけど」
「ふふっ、なんというかマコトって、当時も今と変わらずロマンチストだったのね」
「まあ私たちは小学生だったあのときからあんまり変わってないよ。私はものぐさで、マコトはロマンチストで、お兄ちゃんは野球バカ」
「確かにそうかも知れないわね……そういえば前から少し気になってたんだけど、ハルカってチトセのことはどう思ってるの?」
「ん、どうって別に普通の兄と妹だよ。たぶん仲は良い方だと思うけど」
「それはそうなんでしょうけど、でもハルカってチトセが野球やってたことに少し否定的だったりしない?」
「……よく分かるね、キリカ」
「さすがにあなたとの付きあいも長いし、というかこないだハルカが自分で言ってたからね。チトセが野球のために家を出て行って寂しがってるって」
「そういえばそうだっけ。まあ実際それが全てだよ。お兄ちゃんは小学校の頃から野球ばっかりで、私のことはほったらかしだったから。……でも」
「でも?」
「野球をやってるときのお兄ちゃんは、本当に楽しそうだったんだよね。それに格好良かったのも事実でさ、だから野球をしてたお兄ちゃんが嫌いなわけでもないんだ。……そういう意味では私もまだ、自分がお兄ちゃんのことをどう思っているのかは整理出来てなかったりするんだけどね。もしかしたら楽しそうなお兄ちゃんが羨ましかっただけかもしれないし、一緒に遊びたかっただけなのかもしれない」
「なるほど。だから今回こうして一緒にゲームで遊んでいるのね」
「とはいえメインの目的は野球を失ったお兄ちゃんを励ますことだよ。VRMMOは自由度が高くて色んなプレイスタイルがあるし、その中で何かお兄ちゃんの熱中出来るものが見つかればいいかなー、ってね」




