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74 ギョクとの再会

 翌日、朝の勉強と昼食を終えた俺がLLOにログインしようとすると、ゲームのバージョンをアップデートするとかで少しだけ待たされた。

 そういえばこのゲームは常に内容が更新されていくものだとハルカたちが言っていたような気がする。


 ゲームにログインすると、俺はフェリックの街にぽつんと一人で立っていた。

 そういえば昨日はブレビア湿原での狩りを終えた後にここでログアウトしたんだった。まだフェリックにたどり着けているプレイヤー自体が少ないのもあって、周囲には誰もいない。


 フレンドリストで確認してみると、ハルカたちもみんなリムエストの街に戻っていた。こっちの地域で何かしようにも狩りは四人揃っていないと現時点では不可能だからだろう。


 ちなみにフェリックからは馬車が出ているので一人でも安全に戻れる。料金も大した額ではなかった。


 馬車を使わなくてもスパイクビーストなどから逃げ回れば戻ることは可能だとは思ったけど、馬車は徒歩よりはるかに速いので時間の節約にもなる。


 そういえばこのゲームでは個人で馬みたいな乗り物を所有することも出来るらしい。

 今後はどんどん活動範囲も広くなっていくだろうし、そうなると移動時間も馬鹿にならなくなってくるので、そのうち何とかして手に入れたいところだった。といっても入手方法はまだ知らないけど。


 そんなことを考えながら俺しか乗客のいない馬車に揺られていると、ものの数分でリムエストに到着した。

 このゲームはマップが広いので二つの街はそれなりに距離が離れているのだけど、速度が速くてモンスターも全て無視できる馬車だとそれくらいの時間しかかからないようだ。


 馬車を降りるときに俺を馬車で運んでくれたNPCの男性にお礼を言ったらちゃんとした反応が返ってきた。今どきのAIは驚いたり返事を考えたりする間の取り方なども人間から学習しているらしく、会話をしても全く違和感がない。


 そうしてとりあえず西門から街の中央の噴水前を通って市場に行ってみることにした。そこならきっと誰かいるだろう。


「お、チトセじゃないか! そういや西の街に一番乗りしたんだってな、噂で聞いたよ」


 市場に入って少し行ったところでギョクに声をかけられた。そういえば前もこの辺りで装備を作ってもらったし、ここがギョクの定位置なのかも知れない。


 ちなみにギョクは背が高いのでよく目立つ。俺も180センチあるので背は高い方だけど、ギョクはそれよりさらに高かったりする。


「ああ、ギョクが作ってくれたマジックレザー装備のおかげだな」

「ははは、自分が作った装備のプレイヤーが活躍してくれると生産職冥利に尽きるな。……ん? チトセ、クランに入ったのか?」


 明るく笑ったギョクは、すぐに≪PoV≫と書かれた俺のクランタグに気付いたようだった。


「ああ、設立したんだ。ちなみにクランマスターは俺なんだけど」

「へぇ、初心者だけど色々チャレンジしてるのか。いいねぇ、そういうの。満喫してる感じだな」

「そういうギョクはクランとかには所属しないのか?」

「あー、いやすでに4つから誘われてるんだけど、迷っててな。革細工師って物理攻撃アタッカーの防具全般を作る職業だから人気あるんだけど、その分プレイヤー人口も多いからどのクランにもすでに何人かいるんだ。まあ職業が被ったからって何も問題はないんだけど、微妙に気分が乗らないというか」

「なるほどな。その気持ちは少し分かる気がする」


 野球と違ってポジション争いがあるわけではないけど、それでも全く意識しないわけでもないのだろう。


「だったらうちのクランとかはどうだ?」

「5つ目のクラン勧誘来たかぁ」


 俺は軽い冗談のつもりでそんなことを言った。

 ギョクも俺の言葉を予想していたようで、おどけた感じで大げさな反応をして見せる。


 ちなみにクランメンバーの勧誘に関しては自由にやっていいという話になっていた。

 とはいえおそらく簡単には増えないだろうとハルカたちは言っていたが。


「ちなみにチトセのクランって今メンバー何人だ?」

「全部で5人だけど」

「なるほど、設立したてって感じだな。となるとクランボーナスとかが得られるのはまだ少し先か」

「クランボーナスっていうと、クランのランクとかが上がると得られる特典だっけ」

「そうそう。色々条件はあるけど、基本的にはクランメンバーが冒険で活躍していくとどんどん増えていくんだ。となると当然メンバーの人数は多い方が有利になってくる」

「それは確かにそうだな」

「今設立されてるクランって大体ベータテストの頃からあるクランがほとんどで、100人近い規模のところもいくつかあるから新興クランはすでに不利を背負ってる感じになるんだよな。クランボーナス目当てでクランに入りたがるプレイヤーも少なくないし」


 ギョクによると初心者なんかもすでに人が多くいるクランに入る傾向が強いらしい。そういったクランは勧誘も熱心だし、初心者への支援も手厚いのだとか。


 もちろん仲のいい少数のメンバーだけで活動しているクランなどもたくさんあったりする。俺たちのクランもどちらかといえばそうした仲のいいメンバーでまったり活動する感じのクランになるだろう。


 とりあえずハルカたちが簡単にはメンバーが増えないと言っていた理由が少し分かった気がした。


「まあ俺はそこまでクランボーナスとかにはこだわってないから、チトセのクランに入るのも悪くはないんだけどな。ただまあ他の4つのクランからの話もあるし、もう少し考えさせてくれないか?」


 結局そんな風にギョクには返事を保留された。これはやんわりと断られた感じに思える。

 まあうちのクランの方針としてもそこまで積極的に勧誘を行う必要はないので、特に気にすることではないだろう。とりあえず当面の間は適当にのんびりやっていこう。


 その後も少しだけ会話を続けてからキリのいい所で俺はギョクと別れ、ハルカたちを探すために再度移動を開始した。


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