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61 市場原理

 フェリックの街を一通り回ってみたところ、まず驚いたのが利用できる施設の豊富さだった。


「フェリックには向こうの街になかった施設が色々あるんだな」

「そうだねー。ここからが冒険の本番って感じで、色々と出来ることが増えていくんだよ」


 リムエストの街では冒険者ギルドと商店、あとプレイヤーが出品しているアイテムを一覧して買える市場くらいしか重要な施設はなかったが、フェリックには一回見ただけでは覚えられないくらい様々な施設があった。


 その中でも俺が特に気になったのが、「合成屋」という施設だ。


「あの合成屋って施設は何を合成できるんだ?」

「お、さすが良い所に目をつけるね、お兄ちゃん」

「合成屋は装備品の合成が出来るんです。といっても合成できるのは装備についているスキルだけなんですけどね」

「装備についているスキルというと、たとえばデモンズスピアについてる【奇襲Lv.5】とかか?」

「そうね。ただスキルが付いている装備自体がレアなのもあって、ベータテストのときはあまり利用されなかったのだけど」

「私たちもほとんど使ったことないよね。せいぜいキリカの装備に手に入れやすい属性スキルをつけたくらいかな」


 属性スキルというのは火属性とか雷属性といったもので、武器にその属性をつけると魔法攻撃と同様にその属性が弱点の敵に対して与えるダメージが増加したりする。


 同様に防具につけると特定の属性からのダメージを軽減できるので、戦う相手の属性が分かっているなら有効らしい。


「仮にお兄ちゃんがデモンズスピアより強い装備を手に入れたら、その装備に【奇襲Lv.5】をつけることが出来るから覚えておくといいかもね」

「それにデモンズスピアより性能自体は弱くても良いスキルがついている装備を手に入れたら、そのスキルをデモンズスピアにつけてみてもいいですし」


 合成屋についてはだいたいそんな感じだった。ただスキルがついている装備自体がレアだったこともあり、どんなスキルの組み合わせが有用なのかまではほとんど検証されていないようだ。


 そういうことに関しては「自分の手で見つけていくのも楽しいかもね」とハルカは言っていた。何にせよ今すぐにお世話になる施設ではないが、今後使うことは確実にあるだろう。


 逆に今すぐお世話になりそうな施設というと、やはり商店だった。フェリックの商店は品揃えがかなり良くなっていて、武器や防具なども性能が高いものが並んでいた。


 さすがにデモンズスピアを越えるものはなかったが、マジックレザー装備よりワンランク上の防具も売られていた。たださすがに性能に見合う値段というか、今の俺の手持ちでは一ヶ所も購入することは出来ないが。


「良い装備が売ってるけどめちゃくちゃ高いな、これ」

「というか序盤を除いて、店売りで装備を更新するのはあまり現実的じゃないよ。基本は素材を集めて生産職に作ってもらう方針だね」

「それにチトセの場合はマジックレザー装備から更新しても、目に見えて強くなるってほどは強化もされないから、お金の効率面でもオススメできないわね」

「基本的にNPCが扱ってるものは割高ですからね。フェリックには生産職みたいに装備を作ってくれる施設もありますけど、あれもプレイヤー間の相場の倍以上は取られますし」

「なるほどな。基本的には取引も生産もプレイヤー同士でやり取りした方がいいのか」

「そういうことだね」


 ゲーム内には様々な職業のプレイヤーがたくさん存在しているので、NPCがその役割を奪わないように工夫されているようだ。


 ただそうしたプレイヤー同士のコミュニケーションを面倒に思う人などのために、割高だけれど一応同じことが出来るように選択肢は用意されているということだった。


 効率は悪いけれど、極端な話をすれば一人でゲーム攻略に必要なこと全てを完結することも出来る。戦闘職でも生産や採集自体は出来るというのも、そうしたプレイヤーの多様性を許容するための仕様なのだろう。


 そういった意味ではNPCが割高な装備を売っているというのも、素材集めなどをすっ飛ばして手っ取り早く強くなりたいという需要があるということなのかも知れない。


 と、そこまで考えたところで俺はふと思いついたことがある。


「……なぁ、リムエストには売ってないけどフェリックには売ってる装備って、向こうには欲しい人もいるんじゃないか?」

「それは間違いないね……あ、もしかしてお兄ちゃん、市場で転売を考えてる?」

「転売というか欲しい人がいるなら攻略の手伝いになるかなと思ったんだけど、もしかしてマナー的に何か不味いか?」

「いや全然。このゲームの市場は出品物を買い占めて価格釣りあげての転売とか、結構何でもありの空気だからね」


 そういう空気だからNPCから買えるの装備の転売もマナー的には特に問題ないらしい。


 となるとそこに利益を上乗せして出品して、それでも欲しい人がいるかどうかという市場原理の話になるのだろう。


「リムエストでクエストを優先してこなしているプレイヤーだったら報酬でお金もたくさん持ってるはずだから、売れないってことはなさそうね」

「でもチトセさん、私たちと一緒でクエストはほとんどやってないから、あまりお金は持ってないですよね?」

「お兄ちゃんのアイディアは面白いけど、今の私たちは全員貧乏だから元手がないよね」


 確かにマコトやハルカの言う通り、今の俺には元手がない。しかしそれなら作ればいいのだ。


「じゃあこれを売って元手を作る、ってのはどうだ?」


 俺はそう言いながら、アイテムボックスに入っていた11個の魔法石を取り出した。


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