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58 上機嫌なハルカ

 通行許可証を手に入れた俺たちは、そのまま西を目指した。


 歩いていく道中、俺はハルカが普段よりも上機嫌なことに気付く。


「ハルカ、何か機嫌良さそうだな」

「私は大抵いつも機嫌いいけどねー。でもお兄ちゃんの言う通りかも。今さらだけどさ、実はジェフとの戦いって何回も失敗しながら挑戦することが前提の難易度なんだよね」

「そうなのか?」

「うん。ジェフは色々と動きのパターンを変えてくるけど、それに応じた適切な戦い方をしないとすぐにパーティーが全滅に追いやられるからね。ゲーム的にはこの先の強い敵と戦うための最後のチュートリアル的な位置付けで、絶対に力押しじゃ倒せないようになってるんだよ」

「なるほどな。でもそれがハルカの機嫌とどう関係するんだ?」

「んー、言葉にするのは難しいんだけど……」


 そう言って少し考えるように黙りこんだハルカをフォローするように、マコトが会話に入ってくる。


「チトセさん、実は今回の戦いに関しては、事前に三人で決めていたことがあったんですよ」

「決めていたこと?」

「チトセさんから質問がない限りは、極力チトセさんにジェフとの戦い方を説明しないように、って」

「ああ、確かに言われてみればいつもより説明が少なかったような気もするな」


 はぐれゴーレムやビッグプラントとの戦いのときは、敵の動きや戦い方について事前に詳しく説明してくれていたが、そういえばジェフとの戦いに関してはあまり詳細な説明はされていなかったかも知れない。


「でも、それはどうしてだ?」

「私たちの指示にそのまま従うだけじゃない方が、きっとこのゲームをもっと深く楽しめるようになるかな、って思ったんだよ」

「実際チトセはハルカが狙われて私がジェフに弾き飛ばされた後、しっかりと足止めのフォローをしてくれたし、その後もポジションのスイッチとかアドリブで連携取ったり色々なことをしたけど……ああいうのも楽しかったでしょ?」

「確かにそれは間違いないな」

「というかゲーム始めたばかりなのにあんな連携が出来るなんて、さすがお兄ちゃんだよね」

「チトセは私との相性が良いのかもね?」

「キリカちゃん、何か言った?」

「……冗談よ、マコト」


 マコトが聞いたことのないような低い声でキリカを何やら威圧していた。そんな姿を俺に見せることはないので、やっぱりマコトとキリカもハルカ同様特別に仲が良いようだ。


「んーと、じゃあ話を整理するけど、つまりハルカが上機嫌だった理由は俺がちゃんとゲームを楽しんでいるように見えたから、でいいのか?」

「まあそうだね。お兄ちゃんが順調にゲーマーとして成長してくれてるようで、私は嬉しいよ」


 ハルカはそう言いながらにやりと悪戯っぽく笑った。おそらくハルカの言うゲーマーとして成長というのは、必ずしも良い意味ばかりではないのだろう。


 でもまあ俺がこのLLOというゲームを楽しんでいるのは紛れもない事実なので、特に言うこともなかった。


 そんな話をしているうちに、俺たちはクエストでヒュージスライムと戦った場所を通り抜け、さらにずっと西へと進んでいく。


 すると大きな河が見えてくる。そしてその河に掛かっている、馬車が行き違えるほどの幅がある大きな橋の手前に、重武装をした兵士のような人たちが検問のように行く手を阻んでいた。


 通行許可証を持っていないとこの橋を通してくれないようだが、俺たちは通行許可証を持っているのであっけないほど簡単に通してもらえた。


「フェリックまではまだしばらくかかるけど、橋の向こうからはその辺にいるモンスターも強いから気をつけてね」

「ああ、分かった」


 これまでの道中で出会ったモンスターはほぼ全て俺が一撃で倒していたが、この先はさすがにそういう訳にもいかないのだろう。とりあえず周囲を警戒しつつ、気を引き締めて進んでいくことにした。


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