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4 初めての戦闘

 ゴブリンの集落に到着してみると、さっそく五十メートルくらい向こうに、ゴブリンが四体立っているのが見える。


「さっそくゴブリンを見つけたけど……ちょっと厄介だね、あれ」

「リンクしてるし、しかも前衛と後衛がちゃんと分かれてる……ベータテストのときより、明らかに配置が厳しい感じになってるわね」


 そのゴブリンたちを見たハルカとキリカがそんな風は話をしていた。

 いきなり分からない単語があったので、俺はマコっちゃんに訊いてみることにする。


「ごめんマコっちゃん、リンクって?」

「リンクというのは、モンスターが私たちみたいにパーティーを組んでるみたいな感じだと思ってください。どれか一体に攻撃を仕掛けたら、他のモンスターとも一斉に戦闘になるので、乱戦になりやすくて厄介なんです」

「なるほど。ありがとうマコっちゃん、俺にも分かりやすい説明だったよ」

「い、いえ……あ、それよりお兄さん、その、マコっちゃんという呼び方、変えてもらってもいいですか? いや、お兄さんが悪いとかでは全然ないんですけど、ただ何だか現実の方のお兄さんが思い浮かんで、ちょっと落ち着かないというか、あの……」

「ああそうだよな、ごめんついクセで。せっかくのゲームに現実を持ち込むのは無粋だもんな。じゃあ……マコト、でいいか?」

「あ、はい!」

「それなら俺のこともお兄さんじゃなくてチトセで頼む」

「チトセ……さん……で、いいですか?」

「ああ、それで問題ない」


 そんな風な話をしていると、不意にハルカとキリカが会話に割り込んでくる。


「ちょっとそこー、何二人でいちゃいちゃしてるのさ」

「楽しそうに、何の話をしていたの?」

「いえ、ちょっとチトセさんとどう呼び合うか相談を――」


 そう言ってハルカとキリカにはマコトがちゃんとなりゆきを説明してくれた。


「――実を言えば私も、ハルカの兄に対して距離感を測りかねていたところなので、せっかくの機会ですし今はっきりとさせておきますね。私からはチトセと呼び捨てにするので、チトセも私のことはキリカと呼んでください」

「ああ分かった、キリカ」


 これで一通り呼び方が定まったところで、ハルカが本題に入る。


「出来れば孤立してるゴブリンを一体ずつ倒したかったんだけど、集落の入口に四体リンクがいる以外は他に見当たらないんだよね。どうする?」

「私はやってしまってもいいと思うわ」

「どうせ十体狩るなら何回かはリンクも狩ることになったと思うから、私もキリカちゃんに賛成」

「お兄ちゃんは?」

「詳しいことはよく分からないけど、俺もさっさと戦ってみたいかな」

「じゃあ全会一致で、あれを狩るということで」


 そう言ってハルカは敵の構成を解説する。

 剣を持ったゴブリンファイターに、槍を持ったゴブリンランサー、弓を持ったゴブリンハンター、そして杖を持ったゴブリンメイジの四体。


「敵はヒーラーがいないけど、その分だけ攻撃は痛いから前衛二人は集中攻撃を受けないように注意で。一番厄介なのはゴブリンメイジだから倒せるならそれ優先だけど、特にお兄ちゃんは初めての戦闘だから無理して突出し過ぎないように。ファイターやランサーが後衛の私やマコトの方に来ないように足止めしてくれるだけでも充分だからね」

「ああ、分かった」


 ハルカがはきはきと戦闘方針を俺たちに伝える。


 ちなみにキリカは剣を持っているので俺と同じく近接職、マコトは攻撃魔法が得意な魔法使いで、ハルカは味方を回復する役割のヒーラーらしい。


 つまり俺とキリカが前衛で、マコトとハルカが後衛ということになる。


「じゃあ戦闘開始はいつも通り前衛の好きなタイミングでどうぞ」

「それなら私が合わせるので、チトセの好きなタイミングで」

「……ん? もう戦闘を始めていいのか?」

「うん、いいよ」


 そう言われたので、俺は足元に落ちている石を拾い上げる。

 ゴブリンたちまでの距離は、一番遠いメイジまででおそらく六十メートル程度。


 【投擲】のおかげか、石を握ってみた感じは結構しっくり来たので、たぶんこの距離なら問題ないだろう。


 俺は肩をグルグルと回して慣らすと、そのまま狙いを定める。


「お兄ちゃん、さすがにこの距離から投石は無茶じゃないかな」

「まあ見てなって」


 そう言った俺は、そのまま遠投の要領で石をゴブリンメイジの頭部に目掛けて放り投げる。


 スピンの利いた石は、風を切る音と共に空高く飛んでいく。

 綺麗な放物線を描いたそれは、やがて俺の狙い通りに、ゴブリンメイジの頭部に着弾する。


 すると、何故かクエストボードに通知が出る。


・ゴブリン族の討伐数 1/10


 討伐数のカウントがされたということは、今のでゴブリンメイジが倒せたということのようだった。


「チトセさん、す、凄いです!」

「この距離から石を投げてゴブリンが即死ですか」

「ちゃんと頭を狙って投げたからかもな」

「普通の人は当てることも無理なんだよ、お兄ちゃん」


 素直に驚いて褒めてくれるマコト。

 冷静に状況を分析しているキリカ。

 そして俺にツッコミを入れるハルカ。


 三人娘は三者三様な反応を示していたが、全員に共通していたのは、すぐさま次の行動に移るために準備をしていたことだった。


 それは俺がゴブリンメイジを攻撃したことで、他のリンクしているゴブリンたちが一斉に俺に向かって走り出していたからだ。


「チトセ、ファイターのタゲは私が剥がすから、ランサーの相手をお願い。ハンターの攻撃にも注意ね!」

「ああ、了解!」

「お兄ちゃん、HPがやばくなっても慌てたりしないでね。ちゃんとヒールするから」

「おう」

「チトセさん、ええっと……私からは特にありません!」

「じゃあ何で声かけたの!? いや別にいいけど」


 とまあ、そんなこんなで、俺の初めての戦闘が開始したのだった。

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