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39 レベル上げ

 ログインしてからまずフレンドリストを見てみると、ハルカたちはログアウトしていた。おそらく夕飯を食べに行ったのだろう。


 別に約束があるわけでもないし、合流するのは最悪今日でなくてもいいか。という風に考えた俺はさっそく街の北に向かって出発する。

 そのままゴブリンの集落やはぐれゴーレムの湧く場所を通過し、山道に入る。この山は最初の街から行ける範囲で一番敵が強い場所らしい。


 ちなみに最初の街の西には別の街もあるらしく、そっちにいけるならそこ周辺の方が敵は強いとのことだが、その街に行くためには通行許可証がいるらしく、冒険者としてある程度の実績が必要とかいう話だった。


 まあそのあたりのゲーム攻略に関する話はまた今度ハルカたちに訊くとして、とりあえず今はレベル上げをすることにしよう。


 山道を進んでいくと、さっそく熊のようなモンスターに遭遇する。名前はマウンテンベアと、文字通り山の熊だ。見た感じはただの動物のようだが、こう見えてLv.11の強力なモンスターだった。


 まあ装備的には楽に倒せる相手だと思うけど、とりあえず最初は慎重に相手の強さを測る意味で、リンクしていない孤立したマウンテンベアに石を投げて1対1の戦闘を起こす。

 ちなみに石のダメージは体力の5%くらいだった。


 敵の強さに対して石のダメージ量がだんだんと心もとなくなってきた気がする。いやまあこれは石を投げて攻撃するゲームじゃないから仕方ないのだけど。


 それでも【投擲】スキルは離れた味方にアイテムを使う場合にも役立つし、毒薬以外にも敵に投げて特別な効果があるアイテムは色々あるはずなので、きっと無駄にはならないだろう。


 前傾姿勢で突進してくるマウンテンベアの頭に槍を突き刺す。ダメージは3割ほど。さすがに堅いが、しかしこれなら問題なく倒せる。


「【パワースラスト】!」


 俺はLv.9で覚えたばかりの攻撃アビリティ【パワースラスト】を発動する。これは【二段突き】よりも発生が遅く打った後の隙も大きいが、単発威力が非常に高いアビリティだ。


 発生の遅さのせいでマウンテンベアは反撃のモーションをすでに取っていたが、ギリギリ反撃を食らう前に【パワースラスト】が発動してマウンテンベアを倒すことに成功した。


「何とか攻撃を食らわずに倒せたけど、結構ギリギリだったな……もしかして発生の遅い【パワースラスト】は【二段突き】みたいに通常攻撃から連携させない方がいいのか?」


 まあその辺りはレベル上げの間に何度か試してみたらいいだろう。

 ということでその後もマウンテンベアを中心とした動物系のモンスターを色々狩っていく。戦い方も色々試してみたが、やはり安定を考えるなら【パワースラスト】は単発での使用が良さそうだった。


 動きが遅かったり体が大きい相手なら問題ないが、動きが機敏だったり的が小さいモンスター相手だと、通常攻撃と【パワースラスト】の間の隙に回避行動を取られた場合に、せっかくの【パワースラスト】が外れてしまうことがあった。


 ただそうした使い勝手の難しさを補って余りある威力が【パワースラスト】にはある。マジックレザー装備のおかげではあるのだろうけど、実は体力満タンのマウンテンベアでも一撃で倒せたのだ。

 ということで接近してくるマウンテンベアを待ち構えて【パワースラスト】を一発放つだけで倒せることが判明して、一気に狩りが楽になった。


 こうしたところでも槍の長さが生きてくる。職業を選ぶときに見た感じでは初心者向け装備という説明だったけど、確かにこれは初心者でも扱いやすい武器に違いない。

 ちなみに上級者向けという説明がされていたのはナイフなどの短剣系を扱う職業だった。やはり間合いの広さによって先手が取れるのか、それとも最初に回避から考える必要があるのか変わってくるのが大きいのだろう。


 まあそのかわり槍はパリング性能が最低で、弓などの遠距離攻撃に無力という設定らしいのでその辺りのバランスは一応取れているのかも知れない。といっても俺は槍のことしか分からないので、実際のところがどうなのかは知らないけど。


 と、そんな感じでしばらく適当に安全な狩りをしているとようやくその時が来た。


・レベルアップ Lv.9 → Lv.10


「よし、これでやっとデモンズスピアが装備出来る」


 さっそく俺はゴブリンランスからデモンズスピアに装備を持ち替える。すると、今までに見たことのないスキルが有効になった。


【奇襲Lv.5】:敵の死角から攻撃した際に威力アップ。


「ん? ……これはもしかして、デモンズスピアにスキルが付いてるってことか?」


 確かにデモンズスピアの持ち主であるデーモンエグゼクターは何度も死角からの攻撃を狙ってきていたし、その特徴を反映したスキルがデモンズスピアに付加されているというのはそこまでおかしなことでもないのかも知れない。


 装備品にスキルが付いていることもあるというのは知らなかったけど、まあ付いていて何か損があるわけではないのでラッキーと思っておくことにしよう。


 何にせよ、とりあえずはデモンズスピアの威力を確かめておきたい。ということで手近なところにいるマウンテンベアに襲い掛かり、正面から通常攻撃を仕掛ける。


 するとマウンテンベアはその一撃だけで体力を全て失って倒れた。


「……え、一撃?」


 まさか通常攻撃だけでマウンテンベアが倒せるようになるとは思っていなかったので少し驚く。いやまあでもデモンズスピアのステータス上昇量は圧倒的だったし、ゴブリンランスのような最序盤のドロップアイテムとは比べ物にならなくて当然なのか。


 しかし通常攻撃で一撃となると、適当に走り回って片っ端から敵を倒していくだけでもかなり効率よく狩りは出来そうだった。


 ただこのゲームはLv.10までとそれ以降はレベルの上がりやすさが全然違ってくるという話で、実際に次のレベルまでの必要経験値は一気に跳ね上がっていた。


 一応マウンテンベアはLv.11でまだ格上のモンスターだが、さっきまでの得られる経験値の感覚で行くと今日中にLv.11になれるかどうかは怪しい。


 ハルカたちはすでにLv.12だった。さっきログインしてきてからは街で何かをしているようだが、この後も狩りをする可能性だってある。この効率では追いつくどころかさらに離されかねない。


「……となると、この先に行くしかないか」


 俺は山道の先を見ながらそう呟く。この先にはマウンテンベアなどよりも遥かに強力なモンスターが生息しているのだ。


 しかし生半可な実力では何も出来ないので序盤では絶対に立ち入るべきではないと、そんな風にwikiには書かれていた場所だ。


 常識的に考えたら少なくともソロで挑むべき狩り場ではないのだろう。

 けれど常識的にプレイしていたら絶対にハルカたちには追い付けないのも事実だった。


 それならこのくらいのことは、やってみてもいいはずだ。もしかしたら何も得られないかも知れないけど、それでも失うのはデスペナによるわずかな時間だけなのだから。


 そう考えた俺は、山道のさらに奥へと進んでいくことにした。


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