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31 想定外の変更

「そういえばこのダンジョンのフロアボスってどんなモンスターなんだ?」

「ベータテストのときはいわゆる雑魚ラッシュっていう形式で、次々に湧く雑魚モンスターをひたすら処理するだけでしたっすね。まあそのモンスターのゾンビとかグールが無駄にリアルでグロい感じだったせいで、多くのプレイヤーを恐怖のどん底に叩き落したんすけど」

「それで最初の悪名高いっていう話になるわけか」

「しかも敵のメインの攻撃方法が噛みつきだったせいで、一度捕まったら恐怖映像がドアップっすから、苦手な人はきつかったみたいっすね」

「それは……気の毒に」


 しかしまあそういうことなら、確かに二人でも何とかなるかも知れない。人数が少ない分手数はないが、俺の攻撃力があれば殲滅力は問題ないだろう。いざとなれば範囲攻撃の【ペネトレイト】で直線に並んだ敵なら一掃できるはずだ。


「あ、そこ罠っす」

「え?」


 ヒヨリの急な注意に反応できず、俺は足元に隠されたタイル状のスイッチを踏み込んでしまう。

 次の瞬間、正面から矢が飛んできたので、俺はそれを何とか槍で叩き落して事なきを得る。


「悪い、せっかく教えてもらったのに反応できなくて」

「いや、自分も発見が遅れたっすから……じゃなくて! 今、チトセさん一体何したっすか?」

「え? いや、普通に飛んできた矢を武器で叩き落したんだけど。あれだろ、確かパリングっていうやつ」

「まあ確かにパリングなんすけど、それ槍っすよね? 槍でパリングなんてトッププレイヤーでも見たことないっすよ」


 そういえばハルカたちも槍でのパリングはこのゲームの常識では考えられないことのように言っていた気がする。

 確かに槍のパリングにはゲーム的な補正はほぼ働いていないから、生の感覚だけで槍を振って矢に当てないといけないという意味では、それなりに慣れが必要なのだろう。


「まあちょっと動体視力とかには自信があるんだ」

「ちょっとって……まあいいっす。というかそれだと、槍の弱点がほぼ無くなるんすよね。システム的に近接戦闘では最強だけど、かわりに遠距離攻撃には弱いのが槍の特徴っすから。チトセさん自身のプレイングスキルで遠距離攻撃に対処出来てしまうなら、チトセさんの槍は近接戦闘で最強というシステム的に覆しようのない利点だけが残るということになるっす」


 そういう意味では俺が槍を選んだのは正解だったのかも知れない。

 槍はその間合いの広さから、近接同士の戦闘では常に相手より先に攻撃を仕掛けられる。それは物理的な武器の長さによるものなので、プレイヤーの努力でどうにかなるものでもない。


「自分も結構ゲームには自信ある方で、ここまでも順調にレベル上げてきたんすけど、やっぱり上には上がいるもんすねー」

「まあ俺より上もいっぱいいると思うけどな」

「いやそれだけはないっす……」


 そんな風に話をしながらスケルトンやグールといったアンデッド系のモンスターを倒していくと、ついに大きく開けた場所に出た。


「この先がフロアボスっす」

「確かに言ってたとおり、一層はそんなに長くなかったな」


 ここのフロアボスはヒヨリの言う通りであるなら、雑魚モンスターが大量に湧き続ける雑魚ラッシュという形式のものらしい。たぶん今の俺ならどれも一撃で倒せるのだが、軽く百体以上が襲い掛かってくるそうなので、そこに関しては充分に注意しつつ、早く確実に敵を殲滅してとにかく包囲されないことが求められるだろう。


 そんな風に戦い方のイメージを頭で思い浮かべていると、不意にヒヨリが不思議そうな声を上げた。


「あれ……? 何か真ん中にいるっすね」

「ああ本当だ、確かに何かいるな。名前はデーモンエグゼクターって書いてあるけど」

「……もしかしなくても、ベータテストからボスが変更されてたりして」

「可能性はあるな」


 特にベータテストでこのダンジョンのフロアボスだった雑魚ラッシュはホラー嫌いのプレイヤーからとにかく評判が悪かったというし、そういったユーザーの意見をLLOの運営側が反映する可能性は高いだろう。


「それで、デーモンエグゼクターってどれくらい強いモンスターなんだ?」

「いや、自分も知らないっす。ベータテスト時代には出てこなかったモンスターなので」


 デーモンエグゼクターはどうやら正式版で追加された新フロアボスのようだ。

 見るからに強そうで、その手には大きな槍を装備している。倒したらあの槍ドロップしないかな。


「ヒヨリ、あれって俺たちで勝てそうか?」

「さあ、それはさすがに分からないっすけど、まあ死に戻っても現状20分のペナルティがあるだけなんで」

「勝つつもりで全力で挑んでみても、別に失うものはない、か」

「そのとおりっす」


 とまあそういうことなので、勝てるかどうか一切分からない敵ではあるが、当たって砕けろの精神でとりあえず挑んでみることになったのだった。


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