表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/155

30 打ち捨てられた墓所

「ダンジョンというのはこの大陸のあちこちに点在する迷宮のことっす。まあ迷宮といってもスタート地点からゴール地点まで、脇道こそあれどほぼ一本道なんすけどねー」

「なるほどな。そしてそれを攻略すると何かしらの報酬がある、と」

「そうそう。ダンジョンは何層かあって、各層ごとにフロアボスという強敵がいるので、それを倒すと特別な宝箱が手に入る感じっすね。奥の層ほど宝箱の中身も良いものだったりするんすけど、その分敵も強くなるので攻略は難しくなるっすよ」

「まあそれはいいんだけど、問題は俺たち二人だけで攻略できるのかってところだな」


 ヒヨリの説明のおかげでダンジョンについては何となく理解した。

 ただ話を聞く限り、報酬がある分それだけ難易度も高そうな印象を受ける。

 特に、俺もヒヨリもこなせる役割はアタッカーというのも問題だろう。


 ヒヨリはその背中に大きな弓を背負っていることからも分かるが、弓を使った射撃職のアタッカーだった。職業はハンターで、これは戦闘職ではなく採集職らしい。

 モンスターを倒したときにドロップする素材が増えるなどのパッシブアビリティを多く持ち、素材目的の狩りパーティーに一人いるとパーティー全体の狩りの効率が上がる職業だという。


 その分戦闘力は戦闘職と比べて明確に劣るので、そこをプレイヤーの実力でカバーする必要があるという話だった。


「一層だけならたぶんいけるっす。そんなに長くないし、ちゃんとしてればヒーラー無しでも体力は充分持つかなっと。チトセさんはポーションって持ってるっすか?」

「あー、さっき結構使っちゃったからもうほとんど残ってないな」

「じゃあこれあげるっす」


 そういってヒヨリから取引を申し込まれ、ポーションをいくつか貰う。ちなみにポーションの生産者にはシャルローネという名前が書いてあって、普通のポーションより回復量が多かった。シャルさん凄いな。


「ちなみにこのゲームのダンジョンはインスタンスダンジョンといって、パーティーごとに生成されているので、他の誰かの助けとかは一切期待できないっすね」


 つまり一回ダンジョンの中に入ったら、すべて二人で解決しなければならないということだ。

 俺は以前南の森でピンチになっていたシャルさんを助けたことがあるけど、ダンジョンではああいったことは起こらない。


「着いたっすよ。ここが悪名高きダンジョン『打ち捨てられた墓所』っす」

「悪名高いのか」

「墓所っていうだけあって、ここの敵ってアンデッド系がメインなんすけど、それがVRだからめちゃくちゃ怖いんすよね」

「ああ、ホラー系」

「そうっす。まあ自分は平気っすけど……あ、チトセさんもしかしてホラー系ダメっすか?」

「いや全然」

「ですよね、良かったー。先に説明してなかったから、ダメだったらどうしようかと思ったっす」


 そんな風に安堵した表情を見せるヒヨリ。段取りはめちゃくちゃだけど、何とも憎めない人だった。


「それじゃあチトセさん、心と体の準備はいいっすか?」

「ああ、大丈夫だよ」

「じゃあさっそくダンジョン攻略、スタートっす!」


 ヒヨリがそう言ってダンジョン前で何かを調べると、次の瞬間に俺たちは薄暗い場所へとワープさせられていた。


「さて、ダンジョン攻略の基本っすけど、出会った敵は片っ端から倒す感じっすね。とにかく囲まれないように、一体一体確実に倒していきましょう」

「了解」

「あとモンスターがいない場所でも罠とかあったりするんで、常に気を抜かないようにってくらいっすかね。あとは進みながら何かあったらその都度言っていく感じで」


 罠なんてものもあるのか。さすがは迷宮というだけあるな。


 そんなことを思いながら俺たちは横に二人並びながらダンジョンを進んでいく。

 すると天井に張り付いていたヒュージバットが二体、急降下して俺たちに襲い掛かってきた。


 俺はすかさずヒュージバット一体を通常攻撃で倒し、もう一体の方には【二段突き】を叩きこんでほぼ同時に二体を倒す。ヒュージバットは南の森で何度も見かけたが、打たれ弱いのか装備更新前の俺でも一撃で倒せていたので、当然ながら今の俺の敵ではなかった。


「わ、早いっすねチトセさん」


 弓を構えようとした格好のままヒヨリが驚いた風に言った。別に特別なことをしたつもりはないけど、まあ射撃職よりは近接職の方が武器の取り回しもいいので当然といえば当然の話だった。


 そのままダンジョンの狭い道を進んでいくと、今度は骸骨のモンスターが四体リンクを形成していた。

 剣と盾をもったスケルトンソルジャーが二体と、その後ろにスケルトンアーチャーが二体。


 タンク役のソルジャーが敵を引き付けている間に、アーチャーが後ろから攻撃するという布陣なのだろう。

 このタンジョンの道は狭いので、ソルジャーの横を通ってアーチャーから倒すというのも難しそうだった。


「チトセさんはソルジャーに専念してもらえるっすか? アーチャーはこっちで狙うので」

「了解」


 そう言ってスケルトンたちとの戦闘を開始する。スケルトンソルジャーは横並びのまま、二体とも俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。


「あ、あとスケルトンは見た目通り肉がなくてスカスカなので、槍は頭蓋骨とか面の広いところを狙った方が――」

「えっ?」

「えっ?」


 戦闘しながらヒヨリのアドバイスに耳を傾けていたが、そのアドバイスが終わる前に俺はスケルトンソルジャーの胸骨のど真ん中を槍でぶち抜いて倒していた。

 もちろん二体とも。


「……」

「……」


 そうして俺とヒヨリは一瞬思考がフリーズしたが、直後には何事もなかったかのように動き出し、左のアーチャーにヒヨリは【三連射】のアビリティで矢を三発叩き込み、頭蓋骨を正確に撃ち抜いてそれを倒す。

 それからワンテンポ遅れてもう一体のアーチャーに駆け寄った俺は、やはりその胸骨のど真ん中を槍で突いて倒した。


「……チトセさん、想像以上にプレイヤースキルぶっ飛んでるっすね」

「え、そうか?」

「いやー、これは久々にヤバい人見つけちゃったかも知れないっす」


 そう言ったヒヨリは俺を見ながら、何とも楽しそうに笑うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ