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19 ヒーラー泣かせ

 その後も俺たちは順調にリザードたちを倒していった。

 ドロップ運が少し悪かったようでリザードの皮の集まりが悪く、全員がレベル4になった後も少しの間戦闘を続けてようやくリザードの皮が必要枚数集まる。


 あとついでに【投擲Lv.2】にスキルが成長した。元の状態と比べると物を投げる際の飛距離、精度、そして威力が向上しているようで、実際に石を投げてみたところ、リザードには槍で攻撃したのと同じくらいのダメージが与えられるようになっていた。

 もし俺がゴブリンランスを拾っていなかったら、その辺の石を拾って投げる方が強いなんてことになっていたかも知れない。


 そういえばスキルは上限レベルが10までしかないため、実際のところかなり育ちにくいらしい。スキルレベルに関する詳しい仕様はまだ分かっていないが、ハルカに訊いたところどうやらキャラクターレベルの成長に必要な経験値も大きく関係してくるようだった。

 石を投げまくって投擲のレベルを上げまくれば武器を更新しなくても強敵が倒せるようになるかとも思ったが、まあそう上手くはいかないらしい。


「Lv.4になったから、南の森のエリアボスと戦える態勢は一応整ったね」


 リザードたちとの戦いを終えた休憩中にハルカがみんなにそう声をかける。

 休憩するとHPやMPが自然に回復するので、長丁場になる冒険ではこうした形で休みを取ることはキャラクターだけでなくプレイヤーの体力的にも重要になってくるようだ。


 そういえばハルカの話ではLv.4で南の森のエリアボスと戦うために必要なアビリティを覚えるということだった。

 その中でも特に重要なのがキリカが覚えた【ソーンメイル】なのだという。これは発動させてから一定時間防御力が向上し、さらに自身が物理ダメージを受ける度にその攻撃をしてきた相手に反撃ダメージを与えるというものだった。


 効果だけを聞くと、確かに無駄がなく使い勝手が良さそうなアビリティではあったが、とはいえ強敵との戦況をひっくり返すほど強力なアビリティでもなさそうに思える。


 ちなみに【ソーンメイル】は一応俺も覚えていたりする。ただ使用条件が金属鎧を装備していることとなっていたので、残念ながら使用することは出来ないけど。

 そういったアビリティは実は他にも何個かある。たとえば【アドバンスガード】という防御アビリティは盾を装備していないと発動出来ない。


 そういった面でもこのゲームは職業というより何を装備するかで戦闘スタイルが選べるように出来ているようだ。


「まあこれで戦うための手札は一応ギリギリ揃ったから、何も出来ずに負けるということはないわね」

「逆に言うと勝てるとしても本当にギリギリになりそうですけど」

「まあその辺は私たちの腕の見せ所だね。あ、お兄ちゃんにもどういう敵か説明しておかないと」


 そう言ってハルカは次の目標であるエリアボスの特徴を俺に説明してくれる。

 南の森のエリアボスはビッグプラントという名前で、その名の通り巨大な植物のモンスターだという。

 多くの触手を持っていて、それぞれが別々に攻撃を仕掛けてくるという特徴がある。その攻撃のなかでも厄介なのが【捕獲】と【シードショット】の二つ。

 【捕獲】はビッグプラントの一番近くにいる対象を狙い、その身動きを封じて拘束すると同時に締め付ける攻撃でダメージを与え続ける。ただこの攻撃は狙う対象の条件が分かりやすいのでまだ対処はしやすいのだという。

 問題となるのは【シードショット】の方で、これは対象が完全にランダムな遠距離攻撃という話だ。超高速で飛んでくる種による攻撃で、後衛が狙われたら回避は困難らしい。

 その他にも触手で普通に打撃攻撃を行ったりしてくるが、運が悪いとそれらが同時に行われるのでダメージが分散したり、あるいは集中したりと、とにかくヒーラー泣かせのモンスターだという。


「俺はヒーラーが普段どういう戦い方をしてるかまでは把握出来てないけど、聞いただけでも大変そうな相手だな」

「やっぱりランダム要素が多いからね。ヒールの対象と順番を間違えると簡単に誰かが倒されちゃうし。まあでもお兄ちゃんに私の凄さを見せるいい機会だし、頑張らないと」


 今の時点でも俺はゲームの中のハルカを充分に凄いと思っているのだけど、それでもハルカはそんなことを言った。


「チトセはまだ実感ないかも知れないけど、このゲームのパーティーの安定感はヒーラーで決まるといっても過言ではないのよ。特に強敵と戦う場合はね」

「まあ今まではそうした機会もありませんでしたからね。はぐれゴーレムは強敵といっても特殊な相手で、あのときのハルカはずっと攻撃に専念してましたし」


 確かに言われてみれば今までヒールが必要な場面というのはそこまでなかった気がする。リザード戦では少々あったけど、それも特に難しい場面ではなかっただろうし。


 そういった意味では、ハルカもなかなか自分の本当の実力を発揮する機会がなくてうずうずしていたのかも知れない。

 濃紺の長めな前髪の向こうに見えるハルカの琥珀色の瞳からは、確かな闘志が感じられた。


「さて、それじゃあ休憩も終わりにして、そろそろ出発しようか!」


 そんな風にやる気満々なハルカの号令で、俺たちは南の森に向けて出発するのだった。


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