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154 金策パーティー

 浴衣が貰えるシーズンクエストを終えた俺たちは、一旦いつもの噴水前に集まった。


 そこでクエストが終わるなり即座に普段の鎧姿に着替えたキリカが、まだ少し照れが残ったような雰囲気で言う。


「――さて、それじゃあこの後はどうする? 私としては金策のために狩りをしておきたいのだけど」

「そうだねー。というかお兄ちゃんも今後の装備更新には高価な素材がたくさん必要になってくるし、お金はいくらあっても困らないから今日はそれでいいかな。お兄ちゃんもそれでいい?」

「ああ」


 キリカの提案は実際のところ、今の俺たちが次の装備を作るにあたって避けては通れない道だった。


 というのも例えば俺が今装備しているブルレザー装備よりも強い防具を手に入れようとすると、現時点だとあまり出回っていないレアな素材が大量に必要になってくる。その中でも特に問題となるのが、採集職が集めた方が効率の良いアイテムだった。


 これらは戦闘職の俺たちが自ら取りに行くよりも、市場に出回るものを買う方が圧倒的に早く済む。となると先立つものが必要で、特に現時点だと攻略組のプレイヤーがこぞって買い取りを行っているせいで素材の価格が高騰しているのもあって、手持ちのお金では正直足りていない。


 実際ハルカたちも似たような状況らしく、最近ヒヨリと四人パーティーを組んで狩りをしていたのも金策する必要に迫られてということだったようだ。


「あ、チトセさんじゃないっすか。ハルカさんたちも」

「ん? ああ、ヒヨリか」

「自分これから金策狩りをしようと思ってたところで、もし良かったらハルカさんたちとご一緒出来ないかなーと思ってたっすけど、今日は人数足りちゃってるっすね」


 そんなことを考えていると偶然通りかかったヒヨリと出会う。どうやら金策狩りのメンバーを集めるためにハルカたちを探していたようだ。


 このゲームではパーティーを五人以上で組むと経験値やドロップアイテムの数にマイナス補正がかかるので、基本的に狩りを目的としたパーティーでは四人以下で組むことになる。


 最近俺がいないときはヒヨリがその枠を埋めてくれていたようだけど、今回は俺がいるのですでに四人の枠が埋まってしまっていた。


 もちろん効率を度外視するなら五人でパーティーを組むことも出来るが、それをするくらいならソロで狩った方が美味しいというのがこのゲームのバランスだという。


「……あ、いいこと思いついた」


 そうして少しみんなで困っていると、ふとハルカがそんなことを言って、何やらメッセージを誰かに送っているようだ。


 それからちょっとすると、向こうの方からシャルさんがやってくるのが見えた。


「お待たせして済みません」

「ううん、こっちこそ突然呼んじゃってごめんね」


 シャルさんが丁寧にお辞儀したのに対し、ハルカは軽い雰囲気でそう言った。


「……ん? 六人に増えたら余計に困るんじゃないのか?」

「うん、だから三人ずつに別れてパーティー組もうかなって。一応近接職と遠隔職とヒーラーで綺麗に分かれるし」

「ああ、なるほど」


 察しの悪い俺に、ハルカが丁寧に説明してくれる。


 確かに三人パーティーであれば四人よりは効率こそ劣るものの、ソロで狩るよりも効率の良い狩り場を選択することが出来る。


 どうやら俺以外のみんなはちゃんとハルカの意図を理解していたようだ。


「あとはどうパーティーを分けるかだけど……」


 キリカがそう呟く。


 近接職の俺とキリカ、遠隔職のマコトとヒヨリ、ヒーラーのハルカとシャルさんが分かれることは確定として、それらのメンバーをどう組み合わせるのが良いかという話だ。


「攻撃力が低いキリカはたぶんマコトと組ませた方がいいよね」

「確かにそうね」

「となるとあとはヒーラーだけど――」


 ハルカはそう言いながらシャルさんの方を見る。


「シャルはお兄ちゃんとヒヨリのパーティーでいい?」

「はい」

「それじゃあ決まりだね」


 そんな風に結構すんなりとパーティー分けが決まった。まあ適当で問題ない類の話ではあったので、そこに時間をかけるのももったいないのだろう。


 それから狩り場をみんなで決めることになったが、俺は知識がないので特に意見を出すことはなく、最終的にヒヨリが提案したカラクールという羊を狩ることに決まった。


 カラクールがドロップする良質な羊毛はヒーラーや生産職用の装備に広く使われるため、常に需要があって高く売れる素材ということと、何より範囲狩りで数を狩りやすいということで金策では人気のモンスターらしい。


 カラクールはフェリックの南西部の草原に広く生息しているという話なので、俺たちはさっそく馬車で移動することにした。


 移動中、暇だったので何となく気になったことをハルカに聞いてみる。


「そういえばハルカが昨日手に入れた杖って、魔法の攻撃力も上がったんだよな?」

「うん、そうだよ。たぶん今だと並みのアタッカーと同等以上のダメージが出せるかな」

「ということはハルカとマコトは分けた方が良かったんじゃないか?」


 マコトの【ファイアバースト】を使った範囲攻撃力は、こういった狩りにおいて特に大きな活躍をする。


 一応俺やヒヨリも範囲攻撃は可能ではあるけど、マコトと比べると攻撃範囲が狭かったり威力で劣ったり、そもそも連発出来なかったりといった点で色々と劣っていた。


 となるとマコトがいない側である俺たちの方がより多くの手数が必要になるので、攻撃力の高いハルカはこちらにいた方がバランスが良さそうな気がしていたのだ。


「確かに攻撃力のバランスで言えばそうかもね。でも採集職のヒヨリがいるとドロップが増えるのと、あとシャルの継続ダメージが活躍できるのはそっちのチームの方かなーってね」

「……なるほど?」

「あはは。お兄ちゃん、あまりよく分かってない感じだね。でもまあ実際に狩ってみれば分かると思うよ。……それにしても、お兄ちゃんももうそういう感覚が掴めてきてるんだね」


 分かるような分からないような感じで微妙に首を傾げる俺に、ハルカはどこか嬉しそうに笑いかけるのだった。


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