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14 リアルの時間

「それじゃあ一旦解散で」

「そうですね。私も知り合いの生産職さんに杖を作ってもらわないと」


 はぐれゴーレムを倒して街に戻った俺たちは一旦パーティーを解散する。

 また夜に時間が合えば集合して何かやろうと、そんな感じなことをハルカは言っていた。


 次に何かするならキリカも一緒に、ということなのだろう。

 ということでキリカがログインしてくるまでの空き時間に、一人で出来ることは終わらせておくべきだった。


 とはいえ俺の場合マコトのように魔法石を使って作れるものは今のところ存在しないようだ。槍にしても防具にしても他に必要な素材があって、ハルカによるとそれが現時点では手に入りづらいらしい。


 しかし何というか、ハルカは自分の職業以外のこともよく知っているなと感心してしまう。

 そんなことを直接言ってみたら、ハルカはゲーム外でもwikiや掲示板といった場所でゲームの情報収集をしているからだと答えた。


「私はみんなより少し多くリアルの時間を使ってるからね」

「ハルカ、それあまり自慢にならないよ……」


 マコトはハルカの言葉にそうツッコミを入れていたが、好きなことに熱中できるというのは、それだけで一つの才能だとも思う。まあハルカを褒めても仕方ないので口には出さないが。


 何にせよ俺もハルカ並みとはいかなくても、せめて自分に関係することくらいは知っておきたいところだ。

 とはいえそれも今すぐに、というのは無理なので少しずつゲームの知識を積み上げていくしかないだろう。


 とりあえずゲーム内で今すぐやるべきことはなかったので、少し早めではあるけれど俺はゲームをログアウトして現実の夕食を取ることにする。


 時間帯的にまだ運動部の多くは練習中のようで、食堂に人はあまりいなかった。俺は安くて量が多くて、大雑把な味の料理を作業的に腹に入れる。

 ただ野球部を辞めてからは俺の食べられる量が減っているから、食堂の人に量を少な目にしてもらっていた。毎日残すのはさすがに勿体ないし。


 そうして部屋に戻った俺は、ゲームに再度ログインする前に一回ネットで調べものをすることにした。それがハルカに教えてもらったLLOのwikiページだ。


 公式の情報ではないが、有志である多数のプレイヤーが情報を随時更新しているため、情報の精度はかなり高いのだという。

 ただLLOはまだ正式サービスが始まったばかりなので、みんなゲームのプレイの方を重視しているのではないかと俺は思ったが、ハルカによるとこうしたwikiを更新することを生きがいにしているプレイヤーというのもいるらしい。


 それにベータテスト時代のデータが残っているというのもあって、すでに情報量が凄い。もちろん正式サービスでの変更点もあるので全部がそのままは使えないだろうけど、そうした変更点も発見され次第情報が修正されていた。


「一度見ておくといいよ、とはハルカに言われたけど、これはさすがにどこから見たらいいのか分からないな」


 自分の知りたいことが明確ならちゃんと使えそうだが、漠然と知識が得たいというだけでは少し厳しい感じがした。

 ちなみにハルカはゲームのwikiを見ていたら何時間か過ぎていたこともあるとか言っていたから、その辺りからして根本的に違いがありそうな気もする。


 まあwikiをただ眺めていても仕方ないので、適当に手に入れたばかりの魔法石についてwiki内で検索してみた。

 すると魔法石を使った生産レシピが大量に出てくる。これを全部誰かが人の手で入力していったと考えるだけでも圧倒されそうになった。


 その中から槍術士に関係する装備だけを抽出してみると、確かに現時点では手に入らなそうな素材がどの装備にも含まれていた。

 まあそのうちそうした素材を手に入れられる機会もあるだろうから、今回はとりあえず必要な素材の名前だけ覚えておくことにする。


 その他にも気になるページはいっぱいあったので、その中でも特に興味を惹かれた初心者向けの戦闘講座というページを開いてみた。

 しかしそのページはもの凄い文量があり、さすがにこれを今読んでいる時間はなさそうだ。


 それに戦闘に関しては現状上手くいっているし、優先度はそれほど高くない。何か注意点があればハルカたちが教えてくれるというのもあるが。


「……恵まれているよな、俺」


 ふとそんな呟きが漏れる。

 それは別にゲームの話だけではなく、野球でもそうだった。


 俺はただ好きだからがむしゃらに野球をやっていただけだったが、それが成立していたのは監督やコーチが指導してくれて、スコアラーがデータを集めてくれて、キャッチャーが配球を考えてくれて……その他にも栄養士とかマネージャーとか、様々な人の支えがあってこそだった。


 ゲームにしたって同じだ。初心者の俺に合わせながら一緒にプレイしてくれるマコトやキリカもそうだけど、何よりハルカがそもそもゲームを薦めてくれなかったら、俺はその魅力を知ることさえなかっただろう。


「まあこの程度でゲームの魅力を知った気になられたら困る、ってハルカには言われそうだけどな」


 ハルカたちに支えられてこそ、今の俺はゲームを楽しめている。


 その事実に心の中で感謝しつつ、俺はそろそろゲームにログインすることにした。


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