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137 キリカの謝罪

「ごめんなさい、チトセ!」


 翌日ログインすると、それを待っていたらしいキリカが目の前にいて、いきなり謝られる。


「え? いやキリカ、いきなり何の話だ?」

「何って、昨日ミヤコと二人きりにしちゃったでしょ? あの後ミヤコから聞いたんだけど、ミヤコがチトセに凄く不躾なことを言ったみたいで……チトセに嫌な思いをさせてしまったなら、それは私のせいでもあるから謝ろうと思って――」

「あー、そういう……おーけー、状況は理解出来た」


 いきなりのことで少し驚いたが、キリカが何故俺のことを待っていたのかはそれで分かった。


 ただその話に関しては、俺は特に嫌な思いをしたわけでもないので、謝ってもらう必要はどこにもなかった。なのでそれをそのまま伝えることにする。


「でも俺は別に嫌な思いなんてしてないし、キリカもミヤコさんも俺に謝ることなんてないって」

「……本当に? 私に気を遣って無理するとか無しよ?」

「本当だって。まあ多少は驚いたりしたけどな、ミヤコさん変な人だし。でも言ってることは凄く的を射ているというか……あまりああいう風に俺は自分のことを分析したこともないし、人に指摘されたこともなかったから、単純に興味深い話だったかな」

「チトセがそう言うならそれでいいんだけど……でも一つだけ言っておくと、ミヤコの言ってることは話半分に聞かないと駄目よ?」

「ん、どうしてだ?」


 ミヤコさんはとても頭の良い人のようで、その言葉もちゃんと理屈が通っているように俺には思えた。


 けれどミヤコさんと現実の友達であるキリカは、そんな風にミヤコさんの言葉はあまり信用するなと俺に助言をする。


「ミヤコはコールドリーディングとか、そういう占い師や詐欺師がよく使う話術を習得しているから、説得力がある風を装うのは得意技なの。チトセの場合は事前にハルカから人物像を聞いていたからホットリーディングになるんだろうけど、そうなればもっと精度は高くなるし」

「へー、そういうのもあるのか……でもその話を聞かされると、ミヤコさんがもの凄い悪人みたいになるんだけど」

「まあ間違ってないわよ。本人は悪用してるつもりはないし、悪気もないわけだけど。それでもミヤコに心の中を見透かされて嫌な思いをした人というのは、確実にいるんだから」


 キリカは実際に過去にそういうことがあったことをほのめかすように言った。


 まあ確かに特に親しくもない人に突然、何でもお見通しといった雰囲気を出されたら、嫌悪感を示す人もいるだろう。


 ただ俺の場合はハルカたちの共通の友人ということもあって、ミヤコさんについては最初からある程度の信頼を置いていて面もあった。もちろんそれはミヤコさんを信頼したというよりは、ハルカやキリカの人を見る目を信頼したということになるのだけども。


 まあそんな感じで俺がミヤコさんに対して特に悪い感情を持っていないことは、どうやらキリカにも伝わったらしいが、それでもあまりスッキリした雰囲気ではなかった。


「んー、チトセが特に気にしていないというのは良かったのだけど……やっぱり少しモヤモヤするわね」

「モヤモヤ?」

「何というか、チトセに許されてる感があるみたいな……やっぱり私がチトセとミヤコを二人きりにしちゃったのは失敗だったってことにしない?」

「いや、言ってる意味がよく分からないんだけど」

「私は誰かに借りを作ったりしたくないって話よ」

「ああ、その気持ちなら分からなくもない……けど、キリカって確かゲーム内では借金女王って――」

「それはそれ、これはこれ」


 キリカはそれとこれは別の話だと主張する。そこに何の違いがあるのかは俺には分からないけど、本人の中では明確に区別されているのかも知れない。例えば精神的な借りと物質的な借りといった感じで、消しゴム貸しては言えても仕事を手伝っては言えない、みたいな。


 ちなみにハルカはどっちも言えるけど、マコトはどっちも言えないタイプだ。


 俺はどうだろう、消しゴムなんかは気軽に借りられても、誰かに助けを求めるようなことは些細なことであっても言いづらく感じるかも知れない。


「というわけで、チトセ。私に何かしてほしいことはない?」

「してほしいことって言われてもな……ああそうだ。それじゃあちょっと狩りを手伝ってくれよ」

「そんなことでいいの? といっても、ゲーム内で出来ることなんて限られてるか。ただ一緒に狩りをするといっても、私はタンクだから殲滅力はないし、堅いとはいえヒーラー無しだとそこまで無理は出来ないわよ? それとも誰か呼ぶ? ただハルカとマコトは今クエスト中だから、呼ぶならシャルとヒヨリかしら」

「いや、キリカだけでいいよ。それに実を言うと今狩りたいモンスターが何かいるわけでもないから」

「あら、それじゃあどうして狩りを手伝ってなんて言ったの?」

「よくよく考えると俺はキリカのことをあまりよく知らないままだから、一緒に遊んで親交を深めたいと思ったんだよ。それに人との交流もゲームの内、だろ?」

「……ふふっ、確かにそうね」


 元々俺とキリカの関係は、間にハルカとマコトがいることによって繋がれているものだ。


 もちろんこの一週間ほどの付き合いでそれなりに仲良くはなれているけど、それでも直接の結びつきはそこまで強くないように思える。


 だったら今回はせっかくの機会なので、キリカのことをもう少し知るための時間を貰うことにした。


 それに俺も更新した装備を試せるし、何を狩ったって何かしらの素材と経験値は貰えるのだから無駄になるものでもない。


 ということで俺はキリカと二人で狩りをするために、まずは狩り場をどこにするか二人で相談して決めるのだった。


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