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136 三人娘会談その7

「あー、もうだめ。今日は本当につかれたー」


「確かにハルカの言う通りだわ。というか、ここまで集中的に狩りをしたのは久々よね」


「でもその甲斐あって、全員分の防具用の素材が集まったわけだし、頑張って良かったよね」


「付き合ってくれたヒヨリにも感謝しないとね。……それはそうとキリカ、夜になってから突然ミスが増えてたけど、もしかして疲れてた? 大丈夫?」


「あ、私もそれ少し気になってた。キリカちゃん、無理しちゃだめだよ?」


「あー、あはは……いや、体調は全然問題ないから心配ないわ、ありがとう。ただちょっと気になることがあって、微妙に集中出来てなかった感じね。迷惑かけてたならごめんなさい」


「いや別に迷惑とかじゃないからそれは気にしなくていいけど……気になることって、それ聞いても大丈夫なやつ?」


「ええ、というかハルカは結構関係あるかな……実は夜の狩りの前に、ミヤコと会ってたんだけどね」


「ミヤちゃん? そういえば正式版になってから私まだ顔合わせてないね」


「そうだっけ? うんまあミヤコ自体はどうでもいいんだけど」


「ミヤコちゃんどうでもいいんだ……」


「そこに偶然チトセが来て、それで一応紹介はしたんだけど……その後すぐに集合時間が来ちゃって、私だけ離脱しちゃったのよ」


「……ってことは、初対面のお兄ちゃんとミヤちゃんを二人きりにしたってこと?」


「そうなるわね」


「うわー……」


「あちゃー……」


「そのときは深く考えてなかったんだけど、今は二人の気持ちが分かるだけに、私も謝ることしか出来ないわ……ごめんなさい!」


「いやまあ私たちは別にいいんだけど、問題はお兄ちゃんだよね。ミヤちゃんって付き合ってみると良い人ではあるんだけど、遠慮も容赦もないから、悪気なく平然と地雷踏み抜いちゃうタイプだし」


「今のチトセさんって、野球関係の話とかデリケートな話題がいっぱいあるから、ブレーキの壊れたミヤコちゃんとの相性は最悪だもんね」


「私もその辺が分かってたから、ずっと不安で……だからさっきミヤコに確認取ったのよ」


「……すでに嫌な予感しかしないんだけど?」


「私もハルカと同じ」


「ミヤコは『チトセ君に色々言い過ぎちゃったから、フォローよろしくー』って言ったっきり音信不通になったわ」


「それ絶対やらかした後じゃん!」


「ま、まあミヤコちゃんらしいよね」


「無理にミヤコをフォローしようとしなくて大丈夫よ、マコト」


「でも、そっか……ミヤちゃんは分かっちゃったんだね」


「…………」


「ミヤコが分かったって、何を?」


「何って、お兄ちゃんの心の形を、だよ。お兄ちゃんはさ、昔から絶対に他人には弱い所を見せない人だったんだよね。辛いときに辛いって言わない……いや、言えないのかな。他人に頼ったり、甘えたり、そういうことが出来ない人だから」


「まあチトセがそういうストイックな超人メンタルの持ち主だっていうのは、ゲームを一緒にやってても分かる気がするわね」


「みんなそう言うんだけどさ……そもそもの話をすると、お兄ちゃんは別に超人なんかじゃないんだよ。ずっと近くで見ていた私からすれば、ただ人より特別野球が上手いだけの、普通の人だもん。だからお兄ちゃんには当然辛いときもあったはずだし、弱音を吐いたり泣いたりしたいときだってあったはずなんだけど、そういう姿って私は一度も見たことがないんだよね。一応中学最後の大会で負けたときは泣いてたけど、あれは何かそういうのとは違ってたし」


「確かチトセさんはチームのエースとして、常に周囲からどう見られているかを意識しているって言ってたね」


「なるほどね。私なんかは付き合いが浅いから、チトセのことは表面的なことしか分からないけど……思い返してみれば確かに少し、格好つけなところもあるかもね。でもそれって、仕方のないことだとも思うわ」


「仕方ない?」


「ええ。だってチトセはお兄ちゃんなんでしょう? だったら妹の前で格好悪いところなんて、見せられないものじゃないかしら?」


「そういうものかな……」


「そういうものよ」


「……自信満々に言い切ってるけどキリカちゃん、一人っ子だよね?」


「あはは。……でも仮にお兄ちゃんの気持ちがキリカの言う通りだとして、それでも私は家族として、お兄ちゃんには全部正直な姿を見せて欲しい……なんて思うのは、やっぱりわがままなのかな」


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