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116 貪欲



 フルメタルゴーレムに瞬殺されてフェリックの街に死に戻った俺たちは、さっそくみんなで戦闘の話をする。


「いやぁ……めちゃくちゃ強かったな」


 ベータテスト時代に攻略が後回しにされていた理由が分かった気がする。つまり単純に俺たちのステータスが足りていないのだろう。


 いや、もしかしたら何かしらの方法で構えた後の全体攻撃を回避出来たりするのかも知れないけれど、少なくとも今のところは何も見つかっていないという話だ。


 工夫の余地がなければ、とりあえず今の状態ではどうしようもない。


 何にせよ俺たちがもっと強くならないとフルメタルゴーレムに勝てないことは間違いなかった。


 ただそれでもレベルを上げたり、素材を集めて装備を整えたりしながら地道に強くなっていけば、いつか倒せる敵であることも事実だろう。


「……チトセさん、もしかして少し落ち込んでるっすか?」

「ん? ああ、いや、どうだろう。確かに三連敗は単純に悔しいけど……むしろ逆だな」

「逆、っすか?」


 ヒヨリは言葉の意味がよく分からないといった感じで、首を傾げる。


 確かに今のでは伝わるはずもないので、俺はちゃんと補足しようと思ったが、そんな俺よりも早くハルカが口を開いた。


「お兄ちゃんは強敵に出会えて、わくわくしてるんだよねー」

「ああ……というか、よく分かるな?」

「だって昔からそういうところあったし、ね?」


 ハルカは少し昔を懐かしむような雰囲気で言う。


「ふむふむ……なんだかチトセさんは戦闘民族みたいっすねー」


 ヒヨリはそんな風に言って何やら納得した感じだった。でも戦闘民族って何だろう?


「まあ今日戦ったボスは現時点じゃ勝てない相手ばかりだから、あまり考えても仕方ないわよ。考えるにしても、ちゃんと準備が整ってからにしたいところね」

「そうっすね。レベルが上がればこちらの出来ることもどんどん増えていくので、それらを含めて戦略を練った方が効率も良いっす」


 今日は準備もせず負けるべくして負けたのだから、あまり気にしてもしょうがないとキリカとヒヨリは言っているのだろう。


 本気で勝つつもりならまずレベルや装備を整えてから、またそのときに改めてどう戦うかを考えた方がいいという話だ。


 まああの三体のボスは今すぐ倒さなければいけないわけではないというか、当面の攻略目標みたいなものなので、長期的に考えていけばいいのだろう。


 そもそも俺はまだフェリックの周辺もまだ全然探索出来ていないし、出来ることもやりたいこともたくさんある。


「とはいえ私はパーティーでの強敵との戦い方が色々学べたので、今回の戦いは有益でした。自分に足りない部分も理解出来ましたから」

「……なんだかシャルちゃんって、少しチトセさんに似てるよね?」

「あはは。確かにマコトの言いたいことは分かるかも」

「そうですか? 自分ではよく分かりませんが……チトセさんはどう思いますか?」

「え、俺?」


 シャルさんが突然俺に話を振ってきた。いやまあ俺と似ているかどうかという話だから、そこまで突然でもないのか。


 しかし何とも返答に困る質問だ。というかシャルさんみたいな頭の良い女の人が、俺みたいな脳筋と似ていると言われたら困惑するだろう。


 なんてことを考えていると、全員の視線が俺に集まっていることに気付く。とりあえず何か喋った方が良さそうだ。


「そうだな……確かに貪欲なところは、少し近いものを感じるかな」

「貪欲……」

「あっ、もちろん良い意味でだから」

「あ、はい。それは理解しています。……私は欲しがりで、チトセさんは勝ちたがり。言われてみれば、似ているのかも知れませんね」


 シャルさんはそう言って、静かにほほ笑んだ。


 返答を間違えたらシャルさんが気を悪くする可能性があったので、俺は少し緊張していたのだけど、何とか上手く乗り切れたようだ。


 とはいえ変に取り繕っても、俺の場合はすぐにボロが出るので、正直な感想を言っただけなのだけど。


「――まあそんなわけで、今回のボス戦のことはあまり反省しても仕方ないから話はこれくらいにして、とりあえずクエストの完了報告をしにいこうか」


 その後適当に話が落ち着いたところで、ハルカがみんなにそう言って話をまとめたので、俺たちは全員一緒に調査団の施設に向かうことにした。


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