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妖精に聞く!彼女の作り方  作者: こむらさき
3/8

ようすけってだれだ

 一週間が経った。

 親に怪しまれながらも毎晩決まった時間に百合の花に触れた。

 月が出ている時間…何日か曇りの日もあったけどたぶん関係ないよね?


 いよいよ今日は8日目。

 ワインを円の中に垂らし、花にキスをして立ち去る…。


 馬鹿らしいと思っていたし、正直あまり信じてないけど緊張する。

 窓から流れ込む夜風が頬を撫でていく。

 ワインを一滴垂らし、百合の花に背中を向けた。


 さっきまで聞こえていた雑音や窓から風と共に部屋に流れ込んでいた話し声が消えた気がした。


『あなたの望みは何ですか』


 透き通るようなとてもとても小さな声が聞こえたときは思わず大声を出してしまいそうなくらい驚いた。

 怖さと感激と気持ち悪さ。

 人間ではないナニカが自分の背後にいる。


「妖精さん!!!! 彼女ってどうしたら作れますか!!!!!」


 そうだメモには振り返ってはいけないと書いてあったんだった気が付いた時には遅かった。

 あまりにもテンションが上がりすぎて開いた窓から隣3件くらいには聞こえたんじゃないかってくらい大声で恥ずかしいことを叫んでしまった。


 いろいろ失敗しすぎた…という後悔と共に冷や汗が噴き出してくるのを感じながら、俺は目の前を恐る恐る確認しようとする。

 たぶん数秒間のことなんだろうけど、俺には数分のように感じた。


 妖精はいなかった。


「良一!!! もう夜なんだから電話の声抑えなさい! ようすけさんにもめいわくでしょ」


 がっかりしたのもつかの間、母さんから注意が飛んでくる。さすがに部屋の外にまで漏れるくらいのボリュームで叫んでしまっていたらしい。

 ようすけさんって誰だ…と思うけど、妖精さんとか息子が言い出したと思われるよりはいいのかもしれない。


「はあああああ…あんなに苦労したのに失敗かよ」


 壁際のベッドに横になりながら思わずそんな愚痴が出た。

 山にまで行って、一週間友達とのゲームを中断してまで百合の花にタッチしたあの苦労が…無駄だった…。

 俺に彼女はできない…さよなら俺の青春…。


『彼女がほしいの?』


 それはさっきと同じくらい小さい声だった。


「は!? はい!?」


 反射的に返事をする。

 部屋を見回すがもちろん妖精は見えない。

 でも、声は聞こえる。

 理由はよくわからないけどこれはきっとチャンスに違いない。

 せっかくのチャンスを逃すわけにはいかないと意気込んだところに、謎の声が再び聞こえてくる。


『明日朝10時、近所の図書館に行ってDの棚の前の机にいる女の子に挨拶してみるといいわ』


「は? は? 本当に? 妖精さんの予言的な?」


 突然の予言。

 さすが超常現象の類だ。

 毒にも薬にもならない恋愛アドバイザーなんかとは違う謎の具体的なアドバイス。

 実際にはこう、もっとファンタジー的に妖精の魔法とかで彼女を錬成してほしかったんだけどそこはもう俺も高校生だからね。

 そんな文句は言わない。


 そんな失礼すぎることを考えていると謎の声はさらに話をつづけた。


『女の子が挨拶してくれたら成功よ。明日またこの時間に話を聞かせてくれたらアドバイスしてあげるわ』


「え?

 明日もいいんですか?

 メモによると1日しか話せないって…」


『それは…あなたがあまりにも心配なので特別です。

 また明日この時間に夜風にあたりながら話しかけるように』


 妖精にすら心配される俺とは…。

 でもなんかアドバイス?予言?を何回ももらえるなんてラッキー!

 これは確実に彼女が出来るな。

 こんにちは俺の輝かしい青春。

 今年の夏はあんなことやこんなこともできて俺も大人の階段ってやつを上れるのかもしれないなーまいったなー。


「そういえば、一か月間のお祈りはしたほうがいいんですか?」


 妖精からの返答は得られず俺の声は窓から流れ込んでくる雑音に紛れ込んだ。

 もう今日は妖精の国とかに帰ったのかな…。


 なんかきちんとお礼をしないとやばいらしいし、答えてもらってないけどお祈りは一か月しておくか。

 そんなことを考えながら改めてベッドに寝転んだ。


 ドンっと壁が鳴る。


 そういえば隣の家は息子さん夫婦が帰省してるんだっけ。

 まだ七月なのに珍しいなー。

 子供とかいるのかなーそういえばやけに物音がしたり壁が蹴られるな。


 この夏が終わるまでの辛抱だし、俺には彼女が出来ることが約束されてるし多少うるさくても気にならない。

 妖精さんありがとう!!!

 俺に心の余裕をくれて!


 にやにやが止まらないまま彼女が出来たらどこにデートに行こうかとか、初体験となったときはどうしようかとか、そんなことを考えながら俺はまどろみの中に沈んでいった。

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