巨峰
手を伸ばせばすぐに届いた
夜は案外近かった
手応えを感じた
夜を引きちぎる
たわわに実った巨峰だった
大粒の玉がしっかりと
引きつけあっていた
そうか、夜は巨峰で出来ていたのか
瑞瑞しい玉
ツルんと夜を剥く
生まれたての夜は翡翠色だった
夜を食べる
摑みどころのないやわらかな
ガリッ
種が弾けた
飛ばして!
種はそういって流星になった
巡り合わせは偶然で必然
運命は大小判だ
不幸せを知って幸せを知る
奇跡がいつか遺跡になる
後悔しながら航海をやめない
先は見えないからトキメキが咲き
人生やめられない
でしょ?
夜は熟成して僕は熟睡する
目覚めれば夜は去り
ワインを零してゆくんだろう
朝焼けで胸がいっぱいになる