第三話 継承と輪廻
序盤のうちは詰まることはないと思っていたんですが詰まってしまいました。遅くなり申し訳ございません。
あの時、俺は確かに死んだ。
あの赤い熊に首を刎ねられて。
何もできないまま。
ならなぜまだ意識があるのだろう。
しかもこの感じは前に一度だけ体験したことがある。
まただ、またこの暗闇。前と依然変わらず俺を包んでいる。しかし、今回は一つだけ違うことがあった。
機械的だが違和感のない声が頭の中に響いてきた。
『次回に継承するものをお選びください』
次回?また俺は転生するのか?まぁいい。俺がどれだけ考えたってわからないことなんて溢れてる。ならこのチャンスを掴まなくては。
そう考えていると同時に目の前に半透明のウィンドウが浮かんできた。
《次回に継承するものをお選びください》
・【ステータス】
・【スキル】
・【クラス】
「選択しろって言っても一つしかないじゃないか」
そう毒づきながら俺はステータスを選ぶ。するとウィンドウが切り替わる。
『次回以降開始時のステータスに今回のステータスの半分が加算されます』
《これでよろしいですか?》
決定/戻る
俺は決定を押す。
すると見覚えのある光がさす。
次こそは生き延びて見せる。
「オギャー!」
さて、前と同じ世界だといいんだけどな。
「ナロ!産まれたわ!元気な男の子よ!」
「よ…よかった…」
「この子の名前は?」
「男の子だからレギー」
「そう、じゃあ後はあたしに任せて少し休みなさい」
「うん…いつもありがとう、ニム」
お、言葉が分かる!ってことは同じ世界ってことでいいのか。
そうだ、ステータス確認しておくか。
レギー【村人】Lv01
HP 11/11
MP 12/12
筋力 9
体力 7
魔力 5
敏捷 8
精神 5
【スキル】
なし
【称号】
なし
うへぇ、また村人か。でも、全体的にステータスは上がってる。とはいえあの熊みたいに恐ろしい奴がいるかもしれない。もう少し生きていろいろ調べなくては。
歩けるようになるのが待ち遠しい。
俺が生まれてから1年がたった。今回の家は前回と同じような作りをしていた。
1歳の誕生日に、母親から父親の話をされた。
父親は冒険者でいつ帰ってくるのか、どこにいるのかすらはっきりしていないそうだ。たまに来る手紙には、来年には帰ると書いてあっても帰ってこないことが当たり前らしい。その手紙には大体半年遊んで暮らせる程度の金も一緒に付いてきていて、それを細々と使い俺たちは暮らしている。母親はそう独り言のように語った。
それを知ってか、困ったときは母親の親友であるニムさんがよくしてくれている。母親はいい友達を持ったものだ。
この一年の間に俺はスキルを1つ会得した。飼っている犬や窓から見える植物にひたすらステータス魔法をかけていたら《目利き》が手に入ったのだ。前回森に行かなくてもよかったんじゃないかと少し悲しくなった。《目利き》はどうやらパッシブスキルのようで物にステータス魔法をかけた時に品質がわかるようだ。今の俺には使い道は特にないのが残念だ。まぁ無いよりはマシだろう。
あれから2年の月日が経った。俺は昨日3歳になった。そしてなんと母親から村の中なら一人で出歩いていいと許可をもらったのだ。
早速村を歩き回ってみると、ニムさんがやっているという雑貨店が見つかった。入ってみるとしよう。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい、あれ?レギーちゃんだけなの?ナロは?」
「3歳だから村の中だけなら一人でもいいって言われたので来てみました」
「そうね~、レギーちゃんももう3歳か~、この前までこんなに小さかったのに」
「母さんとニムさんのおかげです」
「うーん、本当なんであんな子からこんなしっかりした子が産まれたんだろう。最大の謎だわ」
「じゃあ僕はこれで。もう少し村を見て回りたいので」
「あっ、ちょっと待て!いいものあげるから」
そういうとニムさんは店の奥に入っていった。
何くれるんだろう。武器とか魔法書がいいんだけど。というか魔法ってどうやって教えて貰うんだ?弟子にでもなるんだろうか。そんなことを考えているとニムさんが一冊の本を持って戻ってきた。
「あったあった。ほら、これあげる」
「これは?」
「魔法書よ、まだ文字読めないでしょ?これで勉強しなさい」
「ありがとうございます!」
「覚えたら来なさい。また何か用意しておくから」
「はい、頑張ってすぐ覚えます!ありがとうございました!」
そう言うとニムさんはひらひらと手を振って見送ってくれた。本当に頼りになる人だ。いつか恩返しをしなくては。
村の探索は案外すぐに終わってしまった。なんせ家が十数軒しかないのだ。余談だが、村の周りは平原だが、少し遠くに大きな森があった。もう無闇に突き進むのはやめておこう。またあんな目に遭うのはごめんだ。
家に帰って早速母親に文字を教えて貰った。これからの目標が決まった。文字を覚えよう。忙しくなりそうだ。
俺は5歳になった。この2年はかなり有意義な時間だった。新たにスキルと文字を覚えた。それと、ニムさんがくれた魔法書は自分に適正のある属性を調べる魔法と、元魔が載った物だった。
そしてなんとニムさんが妊娠したのだ!相手はこの村の狩人だ。親が狩人や冒険者っていうのは多いのだろうか。それか、稼ぎに行って帰って来たとかそういう類いだろうか。
まぁ、ニムさんからの恩を返すチャンスが早くやってきそうでなによりだ。
そうそう、スキルは《採取》を手にいれた。これはニムさんが妊娠したので、ニムさんの旦那さんのレントさんに、どうしても恩返ししたいと無理を言ってついていった時に手にいれたものだ。
《採取》もパッシブスキルで、採ったときの品質が上がるらしい。これも戦闘では使えなさそうだ。
覚えた元魔は、触れている物の熱が上昇し続ける『イズラヒート』、擦り傷程度の傷を治す『タリアヒール』、小さな穴を掘る『タリアホール』、少しだけステータスを強化する『タリアグラント』
この4つだ。地の元魔があまり使えなさそうなのは気のせいだろうか。
魔法書には基本属性それぞれの特性が載っていた。
火は、最も攻撃に特化した属性。
水は、攻撃は微妙だが最も回復に適した属性。
地は、最も防御に特化した属性。
風は、攻撃や援護が出来るバランスがいい属性。
そして俺の適正は水だった。
出来れば使い勝手がよさそうな風が良かったが、出てしまった物はしょうがない。
魔法書を読み終わったことをニムさんに伝えに雑貨店に来た。
「あら、いらっしゃい。今日はどうしたの?」
「この前貰った魔法書がやっと読み終わりました」
「そういえばそんなもの渡してたわね。文字は覚えられたかしら?」
「ええ、おかげさまでばっちりです」
「適正は何が出たの?」
「水でした」
「そっかー、レギーちゃんも水になったか~、母親讓りね」
「母さんも水属性なんですか?」
「そうよ、はい、水属性の魔法書。中級以上のは今は無かったから取り寄せておくわ」
「ありがとうございます」
「まぁこれ読むよりナロに教わった方が早いかもね」
「わからなくなったら聞くことにします」
「そうね、それがいいかも」
「では、僕はこれで。元気な赤ちゃん産んでくださいね」
「ええ、レギーちゃんも頑張ってね」
家に帰ると、母親が料理を作っていた。
「母さん。ニムさんから水属性の魔法書貰いましたよ」
「あんまりニムに迷惑かけないようにね?」
「はい、ニムさんの子供が産まれたら恩返しするつもりです」
「ふふ、そうね。いっぱい恩返ししなくちゃね」
あれから半月が経った。まだ魔法は覚えられていない。ただ、一つだけスキルを覚えた。《魔力操作Lv1》だ。今まで、レベルのついたスキルは見たことはないのだが、使えば使うだけ上がると思ってもいいだろう。しかし、いまだに攻撃系のスキルを覚えられていないのはいかがなものか。魔法書しか読んでないので当然と言えば当然なのだが。
そんな話をしていると、何だか村が騒がしくなっていた。
ガラガラと何かが崩れる音や叫び声、悲鳴が聞こえる。
母親もそれに気づいたようで
「なにかあったのかしら?レギーはここで待ってなさい」
そういって母親は外に出て行った。
待って10分ほど経っても、まだ帰ってこない。しかし、叫び声などは聞こえたままだ。
さすがに気になる。少しくらいなら見に行ってもいいよな。森に行かなければ大丈夫だろう。よし、行こう。
俺は扉を開けた。するとより鮮明に叫び声が聞こえる。あたりを見回してみると半壊の家や燃えている家もある。
「どうなってんだよ…これ…」
自然と口から言葉が漏れていた。
そうだ、母さんとニムさんを探さなきゃ…
ニムさんの雑貨店に行ってみよう。何かわかるかもしれない
「母さん!ニムさん!どこにいるんだ!」
後ろから以前どこかで聞いたことのあるドッドッドッという物音が聞こえる。
振り返ってみるとアイツが居た。
「またお前かよ」
前回の俺を殺したあの熊だ。はっきりと覚えている。
あの赤い紋様。
あの目。
忘れられるわけがない。
「また俺を殺すのかよ…」
それに答えるように右手をあげた。
「ステータス!」
その言葉を言うと同時に俺の首は刈り取られた。
ヴォ?カングリ?リーLv5?
HP ?6?/7??
MP ??2/?6?
筋力 ?29
体力 5?8
魔力 ?5?
敏捷 ?8?
精神 2??
マジかよ…詳細すらわかりやしないなんて無理だろ…
遠くで、俺を呼ぶ声がする。
やっぱり何かが割れる音が聞こえた。
▼残り98回
スキル名の【】を《》に変えさせて頂きました。