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あの日の光景 3
三度、真っ白い世界。
綿毛布のいる、白い世界。
今日は、立っている。
大きな木の下に佇んでいる。
降りしきる雪。
冷たい結晶。
頭に、肩に、積もっていく。
優しい大きな木。
大好きな大きな木。
誰よりもなによりも、勇者を受け入れてくれたそこで。
ここで。
そう、決めた。
(終わり)
(これで、終わり)
彼の求めるもののすべて。
安息。
優しさ。
うつくしさ。
(世界は、キレイだ)
そう教えてくれたのは、誰だったか。
(妖精さんだ)
笑顔の可愛いあの子。
(見て、輝いてる!)
その声を思い出す。
(正反対)
なにもかもが、正反対だった。
(でもここなら)
更に、正反対。全部ひっくり返したら。
(輝きだす)
世界も、自分も。
美しくなっていく。
「いけません」
響く声。
「綿毛布、目を覚まして」
その声に導かれて、勇者はゆっくりと目を開いた。