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終わりの日
黙示録の日は前触れもなく訪れた。前からエントロピーがヤバいと話題になっていたけれど、専門板の連中も、NASAも予言なんてできなかった。終末がこうもあっけないなんて。男は引き伸ばされた時間で思考を続ける。
急速にしぼみ始めた宇宙は光速を超えて小さくなっている。きっと今頃天の川がミックスジュースになって幾つもの惑星を飲み込んだろう。そんな有象無象の星と一緒に、宇宙の中心に向かって引っ張られているのだろうな。想像力の翼で宇宙を駆け抜けて、男は溜息。
エントロピーが増しさえしなけりゃもうちょっと長生き出来たのに。
それが宇宙最後の思考。
黒く塗りつぶされた視界が永遠を獲得する頃、宇宙は一個の点になる。
聖書に書かれた原初の混沌、つまりエントロピーの飽和状態はまた何かの拍子に弾けるだろう。
俺はもう一度、そこで人生を再生するのだろうと、男は笑った。
永遠に引き伸ばされた死が、光とともに訪れることになるとは知らず。
構想している短編が終末ものだったので、描写練習に書きました。
高機能執筆フォームの文字数カウントの確認ミスで加筆。