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昔、男ありけり

 「男って伝説の怪物じゃないですかっ?! 」

シズルはそう抜かしたので思わず殴りそうになった。


 シズル曰く。

「性欲は年中絶えることなく、力は強く。乱暴。

遠慮も無ければ思慮も無く。勝手な行動を取り、見栄っ張りでなおかつ勝手に死のうとする。

簡単に物事を諦めてやっぱり死ぬ。金を湯水のように使い。世界のためなら死んでも良いと妄言を吐く。喋らない。無感情。無感動」などなど。


 「なんだそりゃ」最悪なイメージついてるな。マジで。

ハルカナルは大笑いしているが、冗談じゃない。


 「あ、でも。物凄く良く働くって聞きました。家事と子育ては苦手らしいですが」

俺は家事もできるぞ。崇めろ。そういうと「火も起こせないじゃないですか」と笑われた。

ガスコンロの偉大さを俺は知った。


 シズルは有能で、パパッと走ってきたかと思うと兎を捕まえて。捌いていた。

何で捌けるんだよっ?! というか、兎なんて喰えるのかっ?!


 「慣れれば喰える」ハルカナルはそう言い放つ。

何事も慣れだ慣れ。というか、血抜きが終わって皮をめくったら美味そうだし。


 凄い星の数だ。何が凄いって言えば、この『世界』は昼も夜も空を横切る『輪』があることだ。

土星の輪みたいなものが昼も夜もある。なかなか壮麗な景色である。


 パチパチと音を立てる焚き火。じゅうじゅうと油を出しながら芳香を放つ兎の肉。

ハルカナルとシズルが何処からか塩と葉っぱを出してきて、まぶしてくれる。


 「あちっちっ?! 」美味い。マジで美味い。

「魚もあるぜ」お前、相変わらず釣りが美味いな。お前。

俺たちの夜の食事。何度目だろう。いくつの町を越えてきたのか忘れてきた。

……『奴隷』の悲しみ、嘆きを無視して。忘れて歩いてきた。


 「お前、ほんと、あれだな」「うちの一族には良くあるコト」意味解らん。

「一ヶ月に一回は世界を救う。月間・ハルカナルと呼べ」「マジ。日本語喋れ」

何でも一族揃って変な体験をするらしい。なんだよそれ。

「だから、一族の男は大抵体術や武術を鍛えている」ふうん。


 「シン。言葉巧くなった」シズルがそういって俺に抱きつく。お。おっぱい。おっぱいが。

こいつ、年齢の癖に。おっぱい。おっぱい。おっぱいが。


 「シズル。やめてやれ」「ええ~? 」

静まれ静まれ。俺よ静まれ。クールダウンクールダウン。俺には愛しのあの子がいる。


 パチパチと火がぜ、今日の一日の終わりを奏でていく。


「神楽坂女学院の女には手を出すなと言ってやったのに」「うっさい。相思相愛なんだ。俺は諦めないぞ」

「いや、俺はお前の妄想だと」「ちゃんとお前がいない間に手を振って『御機嫌よう。真さま』って言ってもらったわっ?! 」

日本語で話すと、シズルには解らないが、ほとんど日本語と変わらないので雰囲気は察することが出来るらしい。

俺があの子の話をすると機嫌が悪くなる。あからさまに悪くなる。

いや、胸は立派だが、子供だしなぁ……コイツ。


 「晩生のお前にしては頑張ったな」「おう」

「で。惹かれたと。轢かれただけに」「つまんねぇ……」

がっくりと頭を下げる。なんで死んだんだ。というか、なんでこんな国にいるんだ。

交通事故にあったら何故か変な世界。ここはゲームブック版のエステリアかよ。


 「米があるのはありがたい」ほとんど日本と変わらない。服装も似ている。

「塩、足りてねぇぞ」「買い忘れたからな」「マコト。ドジッ! 」

塩が無いことを雰囲気で察したシズルがうるさい。


 「なぁ。しん」「ああ。真実マコト

「二人一緒は初めてだから……」何をいってやがる。この耳年増。


 「シンなら。いいよ」「殴るぞ」

焚き火に照らされて恥ずかしそうにしているシズルを睨む。

悲しいかな。男のさが。めっちゃ勃起ってるけどなっ?!


 「シズル。お前。奴隷ってどう思うよ」「どうって。普通じゃないの」

「俺たちの故郷はそうじゃない」「女なんてむしろ生意気だしな」

俺たちはそういうと苦笑いした。懐かしいな。



 「ええ? 伝説の魔物の『男』を蹴り飛ばす人がいるって? 」

この世界で『人』とは『女』を指す。魔物と交わった女は人間の女を産む。らしい。

多少は父親の能力を受け継ぐらしいが、基本は人間のそれだ。


 「シズルの親父は? 」「さぁ」

普通らしい。


 「この世界の場合、王族もいるんだが」

身分制度は良くわからんが、『小久保』(恐らく『国母』の間違い)という女王は『男』の能力を持ち、

普通に子供を産むことができるらしい。勿論『人』である。


 「『人』は奴隷じゃねぇのか」「『王族』は違う」

ハルカナルが言うには絶大な権力を誇るらしい。

「『魔』と交わらず、子供を作れるそうなんです」シズルは嬉しそうに言う。なんでも信仰の対象でもあるらしい。



 「実際は16歳。年頃になった王族は縛られて、妊娠するまで魔物達に」

……。


 「その魔物は。各種族より選抜された最強の魔物達百が選ばれる」

……。


『王族』は各地の村々や街にて神官兼領主として支配している。そうだ。



 「で。伝説の魔物がどんなのかと思ったらこんな情け無い二人組」

シズル曰く。火も起こせない。水も探せない。薪も採ってこれない。畑仕事も出来ない。

「力だけ強い。ダメダメじゃない」申し訳ありませんっ?!


 「ふふ。崇めなさい」

コイツ、態度がコロコロ変わるから性格が掴み難い。マジで。


 「でもね」うん?

「ちかくにいると、凄く『したく』なるんだ。特に。シン」

そういって彼女は俺の腕を抱きしめてきた。


 「口とか、胸の先とか。すこしズキズキするんだ」

そういって俺の手を下にひっぱろうとする。

ちなみに、この世界の連中。パンツはいてない。


おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! ヒャッハー! ヒャッハー! ヒャッハー!

なんか指先がやわらかな。なんかちょっと湿っているものに?! ふはあっっ?!


 「何をやってる」「ヒル。張り付いてた」

デスヨネー。俺はヒルに火墨のついた木切れをおしつけた。


 「シズル」「うん」そういってヤツは目を閉じて唇を突き出す。

「シズル」「いつでも。シンなら。いいよ」そういって服を脱ごうとする。

 

「シズル」「じらさないでぇ」悶えるような仕草を見せるシズル。

  

「えええええぇぇぇいっ?! 俺はお前をそんなふしだらな娘に育てた覚えはないっ?! 」

俺のカミナリがシズルに炸裂した。



 「やっちゃえば~」

無責任に手をヒラヒラさせて毛布に包まるハルカナルを背に、

俺の説教は星の下、日が昇り火が消えるまで続いた。

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