行く川の流れはたえずして
「やっちまったよ」「あ~あ。どうしようかな」
「アリガオグ アリガオグ」涙を流しながら礼を言う少女に俺は何を言うべきか解らない。
「初めてのときは、主人たちを喜ばせるために抵抗するのが基本なんだぜ。真」
いや、普通抵抗するだろ。というかマジで嫌がってたし。
酒場で少女に襲い掛かる魔物達を見た俺は、思わず持っていた木刀で連中を次々と殴り倒してしまった。
勢いあまってまた連中は死んだ。脆すぎる。
少女の手を引いて村から逃げ出した俺達。今に至る。
「村から出ればもう大丈夫だ」遥は言い張る。なんでも『奴隷』の見分けは不可能らしい。
「主人殺しは大罪だし、どうしようかな」
遥は森の中で悩んだように呟いたが、ポンと手を叩く。
「今日から俺たちは旅芸人の一座だ」「はあ」
「殴り合いをして、日銭を稼ぐんだ」はぁ。
「と、いうわけで村に戻るぞ」おぃ?!!!!!!!!
「大丈夫だ。解らんから」「解るわっ?! 」
「ゴブリンはアホだから大丈夫」「おいっ?! 」
そして、服を着替えた俺たちだが。
本当にばれていなかった。繰り返す。本当にばれなかった。
普通、何人も人を殺した奴らと似た背格好の奴が旅芸人と言い張ってやってきたら怪しまんか。
しかし、ゴブリンやオーガどもは気がつかない。
俺たちのどつき漫才を楽しそうに見ている。通じているのかよ。
流石に少女の親族にはバレまくっていたが、ゴブリン連中には人間の表情はわからんらしい。
「司鶴ゾ ヨソギグ」女たちは泣いていた。
俺たちの『興行』は大成功に終わり、大目の軍資金となけなしの衣類を貰って俺たちは旅立ったのである。
「ワタギ シズル! 霧島 司鶴」
懐かれてしまった。ううん……。どうするべきか。