とりかえばや物語
「なんだ……これは」
俺の体毛が総毛立つ。
どうみてもフリフリのスカートである。
言っておくが俺の容姿は間違ってもコレが似合う姿ではない。
「ああ。誰も気にしないから。大丈夫だ」「気にするわっ?! 」
首を締め付ける俺と大笑いする奴。
「奴隷っていっても、結構自由に行動できるから安心しろ。何かあったら俺たちは主人の命令で遠くの町まで買い物に出かけたって設定で押し通せ」はぁ……。
「あ。それから基本的に迫られたら拒否権はないからな」「おい」
「安心しろ。奴らにとってはほとんど嗜虐心を満たすための行動で、基本的に人間の女相手には勃起たないらしいから」
贅沢すぎるだろ。キモオタの癖に美女好みとか。
あれ? この場合不細工になるのか?!
「なんでスカート。ズボンでいいだろ」「ズボンだと脱がすのに苦労する。らしい」うわ……。
「ズボンはマジやめておけ。殺されるから」「おい……」お前、ズボンはいてるぞ。
ってことは。
「袴はOK? 」「いいんじゃないかなぁ? 」
穿いたまま小便も出来るし、それで解決だな。
「じゃ、村に行こうぜ」「俺たち、村人殺してるけどいいのか」
遥が言うには、人間の容姿の区別は連中には出来ないらしい。
「てか、人間がゴブリンに勝てるって連中は思ってないから大丈夫だ。人間も思ってない」
はぁ……。
「お前、普段このスカートはいてるのかよ」「ぐっ?! 」
ククク。それは見物だな。
「予備の袴があるぞ」「ください。新堀様」うはは。崇めるが良い。
馬鹿なやりとりをやっていると、森が開けて村が見えてきた。
「……おい。遥」「なんだ。真」
「すっげぇ美人が。美人が畑耕しているぞ」「奴隷だからな」
「すっげぇ美人が、歩いているぞ」「奴隷だからな」
基本的に。『主人』たちは外を歩かないらしい。
「ボンビチザ」
煙の匂いに惹かれて歩く俺たち。宿らしい家の前で洗濯物をする少女に遥は謎の言語で語りかけた。
「ギッマグ タンリタギ」
遥と超絶美少女は何事か話していたが、
少女がニコリと微笑むと俺たちを通してくれた。
「あれは……」「開通済みだが? 」
こともなげに奴はのたまった。なんでも12歳以上は『対象』らしい。
あのバケモノが。あんな美少女を。……犬でも掘ってろよッ?!
次の更新は来週の土日になります。