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若き時は、血気内に余り、血気内に余り、心物に動きて、情欲多し

 「バケモノ? 」「うん。男って伝説のバケモノらしいぞ」

はぁ? 俺が口をあんぐりとあけているとハルカナルはニヤリと笑ってバケモノどもを蹴った。

「こいつらが、この世界では普通の存在。他に質問あるか? 無ければ行くぞ」


 意味解らん。何を言ってやがるハルカナル

俺の様子に肩をすくめたハルカナルはスタスタと歩き出した。


 「まて。まってくれっ ハルカナルッ! 」


 森の中をスタスタと何事もなく歩く奴といちいち腐葉土に脚を取られ、木々に手をかけて歩く俺では歩く速度が違いすぎる。というかコイツ本当に現代日本人か。マジで。


「若き時は、血気内に余り、心物に動きて、情欲多し。身を危めて、砕け易き事、珠を走らしむるに似たり。美麗を好みて宝を費し、これを捨てて苔の袂に窶れ、勇める心盛りにして、物と争ひ、心に恥ぢ羨み、好む所日々に定まらず、色に耽り、情にめで、行ひを潔くして、百年の身を誤り、命を失へる例願はしくして、身の全く、久しからん事をば思はず*、好ける方に心ひきて、永き世語りともなる。身を誤つ事は、若き時のしわざなり。


 老いぬる人は、精神衰へ、淡く疎かにして、感じ動く所なし。心自ら静かなれば、無益のわざを為さず、身を助けて愁なく、人の煩ひなからん事を思ふ。老いて、智の、若きにまされる事、若くして、かたちの、老いたるにまされるが如し」


謎の呪文を唱えるハルカナル


 「なんだその呪文」「お前の成績が悪いのは解った」おい。

「徒然草だが」「解るか」序文しか知らん。


 そういうと「真ならわかると思ったんだが」と奴は肩をすくめて両手を挙げてみせる。

「ようするに、歳を取れば皺の無い分賢くなるって言うが、実際はクソはクソのままだってことだ」

そういえよ。嫌味か。タコ。竹刀で殴るぞ。


 「ようするにだ。この世界での『俺たち』に対する認識だな」「はぁ? 」

「だから『俺たち』」「竹刀で殴られたいみたいだな」俺はお前みたいに嫌味じゃない。

だいたい、一七にしちゃお前は前々からオッサンというか、ジジイ臭いんだ。マジで。


 「だから、欲望のままに動くバケモノって認識。俺たちは」「はあ」

ダメだ。コイツの話はマジで分からん。


 「バケモノはさっきあった奴らだろ」「あれは普通の住民だ。俺たちは犯罪者になったな」

おい。おい。先に言え。


「いや、正当防衛だろ」先にそれを言えという俺にハルカナルはそういったが。

「日本に正当防衛って言葉はないぞ」「いや、日本じゃない」はぁ?


「ここは六甲山じゃねぇのか」「六甲山には六甲おろしのナンパ男と性犯罪者と強盗しか出ねえだろ」

イノシシも出るかもしれないだろ。ちなみに兵庫県のイノシシはバス待ちをしたり信号待ちをする。


 綺麗な森の中でなければ俺は間違いなくハルカナルを殴っている。

「で、六甲山じゃなければ何処だ? 大阪は高槻市のポンポン山か? 」

これも、実際に存在する山である。他県の人々にとっては信号待ちするイノシシより信憑性がない。

高槻市の奴ら曰く、「信号待ちするイノシシのほうが信じられない」らしいが知らん。


 「どこって。まぁとにかく日本ですらないな。日本にはゴブリンはいないし」

ごぶりん? ウィザードリィか? 「ソードワールド。懐かしいな」よく遊んだな。佐武さたけと。


 「もっとも、人間と繁殖できるゴブリンだからちょっと違う」はぁ。

「この世界には『人間の女』はいるが、『男』はいない。凶暴で性欲過多。欲が深くてどうしようもない伝説の魔物らしい」

世界ってなんだよ。マジで。


「まぁ要するに俺たちが遊んでいたゲームの世界に近い」「マジか。俺たち始まったな」

「いんや、俺たち犯罪者」「マジか。俺たち詰んだな」


 いや、俺もドラクエの世界で勇者になりたいとか思ったこと無いわけではないぜ。

でも犯罪者ってどういうことよ。俺は人様の家で箪笥を漁ったりしないからなっ?!


 「俺さ、山の上のお嬢様学校の」「お前まだあの女の事を諦めてなかったのか。黒服にボコられたの忘れたのか」

うっさい。


 「で、トラックから庇って代わりに轢かれたってか」「おう。間違いない」

確かに俺は死んだと思ったのだが、気がついたら長いトンネルを歩いていた。


 「俺なんかヒデェぜ。ヒグマに喰われたからな」「おい」

何で生きているんだよ。というかナンパ失敗かよ。ハードすぎるぜ。


 「いやぁ。やっぱヒグマに殴りかかるのは無謀だったわ」「おい」

考えろよ。それくらい。勝てるわけねぇから。


 「いやぁ。鷹村さんじゃあるまいし勝てるわけないだろ」「あれ、ツキノワグマだもんな」

ヒグマって。ありえんから。


 「まぁそれはさておき。だ」

腐葉土の所為で布靴がぐちゃぐちゃで気持ち悪いが、それ以上に酷い状況を奴は告げた。


 「この世界では『男』は伝説のバケモノでな。『人間の女』ってのは奴隷。それも種族の女に相手にしてもらえないようなどうしようもない奴らの性欲の捌け口になるための奴隷なんだよ」


……。

 ……。


 「おい。しっかりしろ。真」

いや、お前さっき変なこと言ったし、ちょっと意味解らん。


 「誰が化けモンだって」「俺たち。何度も言わせるな」

「女の子がなんだって」「種族の女にも相手にされないブサメンキモオタクの性欲解消奴隷」


 まさか。まさか。

「さっき。俺たちがぶったおしたやつらは」「この世界の人間の女は美少女揃いだぞ」


俺は決めた。 許 さ ん 。

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