エピローグ 亭主関白宣言
はぁ はぁ はぁ
俺の喉から息切れが洩れる。いくら『若い』っていっても鍛え足りない『高校生』の身じゃな。
角を曲がり、また走る。目指す場所はもうすぐ。
俺の手を握ってくれていたあの子に。俺に呼びかけてくれていたあの娘に。俺を呼び戻してくれたアイツに。
今日こそ告白する。
目を醒ました俺は病院のベッドにいた。
「めざめましたか」俺の手を取っていた娘はニコリと微笑んでくれた。
「身を挺して娘を守ってくれたようだな」手切れ金代わりに小切手を差し出す男に俺は首を振って見せた。
「娘さんに値段なんてつけられません。大事にしてください」そう告げて。
黒服とその男に引き離された俺たちは初めてお互いの名前を知った。
まぁ。今となってはどうでもいい。
「おいっ!!!! まどかっ!!!!!! ひのもと まどかっ?! 」
出会い頭に『名前を呼んだ』俺に驚いたように目を開いてみせた美しい娘はニコリと微笑んでくれた。
「ごきげんよう シン様。その節はこのつまらない私の身を護って頂き誠に」
その続きを。彼女はいえない。
彼女の柔らかい感触が俺の唇に広がる。
大きく見開いた潤いのある美しい瞳と俺の瞳が交差する。
甘い唾液の味と彼女の柔らかい体の感触の残滓を惜しみつつ俺は告げた。
「俺と結婚しろ。嫁入り道具は歯ブラシ一本もってくればいい。養ってやる」
雨上がりの地面にくずれおち、白い制服を汚す少女。
俺は手を差し伸べて微笑んで見せる。彼女は、まどかはクスリと微笑み、俺の手を取る。
「喜んで。お供させていただきます」
抱き合う俺たちの後ろで外野がうるさい。
「よっしゃっ! 」「ひゅー! 」
遥やレイこと水鏡零と甑美緒が黒服を来た連中をあっさり取り押さえている。
あまった連中をかるく投げ飛ばし、怪我しないように落としてやる。
あの夢のような世界で戦った奴らと比べたらたいした相手ではない。
「いこうか」「わたくし、これから学校が」「サボれ」「はいっ! 」
雨上がりの朝、おれとまどかは駆ける。
どこにいくのかって? そりゃ決まっているさ。
『明日』へ。
(Fin かもしれない)




