カゲロウ日記 ~ 私がシンに愛されないのはどうかんがえてもおまえらが悪いッ ~
ユウガオが捕縛された。その報を受けたカゲロウ。
「そう」あとはユウガオの子を殺せばいいか。そう考えるカゲロウ。この世界に愛という言葉はない。
『儀式』を受けられないカゲロウはイライラとしていた。本来なら『儀式』を受けねばならない時期だが。
「シンが来ない」
嫌われている。そんなことはカゲロウは夢にも思わない。
完璧なまでの政策の補助。磨き上げられた美貌。持って生まれた地位。ただの魔物如きが独占するにはあまりにも惜しい存在が彼女だが。
「なぜあの奴隷に目にかけるのだ」
正しく独占できる権利があるはずの彼女は、いまだシンとの『儀式』がまだだった。
「アイツが悪いのだ。あいつの存在がわるいのだ」
カゲロウは嫉妬という言葉を知らない。そもそも自分は完璧な存在だと思っている。知っていたとしても否定したであろう。
「今日も冷たい月を見る日々。暖かい星の輪の中にあなたが入ってくる日を待つ」とカゲロウは文をしたためた。
一方。シンはそれをみて眉をしかめた。
「壊滅的にアイツには手紙を書くセンスがない」
それでも真は『正妻』のカゲロウを疎かにはしなかった。
結論だけ言うと真はカゲロウの部屋に来たのだが。
「貴様のような醜くてどうしようもなく、無能な輩を操る私の苦労を聞け」「……」
延々と真に説教を始めるカゲロウ。子作りどころではない。
朝が来る。
「……」「カゲロウ様。首尾は」「……」
「これでカゲロウ様にもお子がッ! 」「よかったっ! 本当によかったッ! 」はしゃぐ侍女たち。
シンは『儀式』の際人払いを徹底させるからだが。
「気分が。優れぬ。去ってくれ」「はいっ! 」「はいっ! 」
カゲロウは言うべきことを言った。とは思ったが。何故か溢れる涙を抑えることが出来なかった。
「子供が流れたそうですよ」吉報を伝える。侍女。あの女の子供が流れたそうだ。
「よきしらせだ」「ですね」彼女たちは笑いあう。自分たちが愛されぬ理由を知らぬまま。まだ知らぬ愛を求めて。




