ユウガオ
「ユウガオ。何故遥の子供を殺したのか説明願えないかな」
俺は勤めて優しく彼女に尋ねる。とはいえ、刀から手を離しはしないのだが。
『風鳴』。俺が握るその剣は王家に伝わる名刀であり、刃こぼれ一つしない理不尽な刀だ。
『話がある』
俺は彼女を呼び出し、城の中庭にいざなった。
花の香りは。俺のような罪人にも優しく感じるものらしい。
「あれは侍女がやったことでしょう」彼女はすっとぼけた。
「そうだな。泣きながら可愛い子供を絞め殺さざるを得なかった娘の心境。察するに余りあるな」
腹に子供がいなければ、斬り捨てている。
「傀儡の魔物如きが私を殺して、国が機能すると思うのですか」嘲る彼女に。
「ああ。いい事を教えてやるよ」俺は努めてニッコリ笑いながら彼女に告げた。
「俺が昔持っていた本。『教科書』ってのがあるんだが」「? 」
「いや、参考になるね。あと『ノート』に『鉛筆』『消しゴム』。この世界にはないけどな」
結論を言う。日本人の学習能力と基礎教養舐めるな。義務教育は偉大である。
「ついでに言うと、遥に抱かれた女の多くは俺たちに協力的だったよ」「な」
「連れて行け」「はい」
花畑の各所に配置された兵たちがユウガオを連れ去っていく。
「遥は私のッ 私だけのものだっ 他の女のモノではないっ 」
彼女は知らない。自分の抱いた心が嫉妬と呼ばれるものであることを。
自分が身ごもっていれば、当然ながら他の女と子供を作るほうが合理的だ。
『俺たち』の心情的にありえないだけで。
「いつまで。こんなことが続くんだろうな」俺はため息をついた。




