異性物語
「逃げるな。真」「うわああああああああああああっ?! 無理無理無理ッ?! 」
え? ナニやってるんだって? ナニもしてません。察してくれ。
「さぁ。抱けッ! 」
全裸で迫る『正妻』から逃げてます。逃げさせてください。
こんばんはッ?! 新堀真。23歳ですッ?! 17歳のときに好きな女をトラックから庇って死亡。
気がついたらこの男のいない変な世界に来てしまいましたッ?! ですますっ?!
「無理無理無理。蜻蛉。俺には惚れた女がいるんだっ! 」「また世迷言をッ?! 」
カゲロウは可也、強い。右手に剣。左手に鞭をもって迫ってくる。全然嬉しくないっけどなっ!
王位継承権では、カゲロウのほうが優位らしい。
この反乱劇は俺と遥の起こしたものだが、実際に主導したのは王族の彼女たちだ。
そう。おれたちは『道具』に過ぎない。
「大変だね。シン」
なんとかカゲロウを振り切った俺に宮殿の手すりに座って笑う美少女。
「シズルッ?! 助けてッ? 」「無理」
だって。私奴隷だもん。そういって寂しそうに。微笑む。
「元、奴隷だッ 俺たちの国にはもう奴隷も貴族も無いッ 」「でも、王族は、王はいるじゃん。シンが王様。マコトが」
シンは、子供を一杯作って、男を作らないと。
そういって、彼女はにぱっと笑ってみせる。
「私、子供そろそろ作らないといけない歳なんだ」「は? 」
「同じバケモノでも、甲斐性無しのバケモノでも。シンのほうがいいなって思ってた」
この世界では。俺たち男は。バケモノの一種に過ぎない。
力で劣り、知性でおとる『人』が子孫を残す場合。魔物たちと交わる必要がある。
それは、両手を台にしばられ。後ろから顔も知らぬ魔物達に。身ごもるまで続く日々を意味する。
「ねね。アレ。やってほしいな」「うん? 」
マコトが、時々やってるあれ。
シズルはそういうと、唇を俺に重ねた。
柔らかい感触が俺の唇を襲い。甘い唾液が俺の中に入ってくる。
思わず。飲み込んだ。シズルの潤んだ瞳を見た。涙。
「なんか。凄く……嬉しいのに悲しい」俺もだ。シズル。
「シンがしたいのって。私じゃないんだね」うん。
「不思議なんだ。シン以外と。私はしたく無い。なんでだろ」それは。
「他の魔物は、したいときにするのに、シンはなんで我慢するのかな」……。
「他の魔物は、私達のこと醜いって言うのに、シンとマコトは『綺麗だ』って言ってくれるよね」「綺麗だからな」特に。最近は目を見張るほどだ。
「シンも、すると気持ちいいって思うのかな」「たぶん」
「私は。いや」「いやじゃない。だが、したい相手は。決めている」
「魔物の癖に、勝手にしないのね」「ああ」
銀色の星が俺たちを見下ろしている。雲と星の区別がつかないほどの星が。煌く。
「へん。だよね。口がくっついててシンの顔がみえるのに」「ああ」痛みを訴えるかのように彼女の両脚が俺に絡む。
「すごく、幸せ。なんだけど」「痛いか」「胸の奥のほうが。痛い」
俺は。シズルは。泣いた。
「お互いの、顔が見えるって不思議」「そうか」
「もう一回。口を合わせながら」「ああ」
ごめんな。本当に。ごめんな。