末摘花(すえつむばな)
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォッ 」
『小久保』末詰花。俺と遥は彼女の前に立っている。
「醜い」唇を真っ青にして夕顔とカゲロウが呟いた。
カゲロウは昔から俺たちの支援をしていたが、ユウガオは闘技場で捕虜にした『王族』だ。
そして、二人は『小久保』の娘である。
「偉大なる母よ」カゲロウは巨大な容器の中を叩き割った。
中から魔物が、出来かけの胎児が次々飛び出し、言葉ならぬ悲鳴を上げるのをユウガオは涙を流して見守っている。
俺たちの反乱は国土全部に広がり、俺たちは5年間に渡る苦闘に終止符を打った。
思いのほか。早かったと思う。
「ユウガオ。下がれ」
スバルが大剣を振るい、容器から飛び出してきた魔物にトドメを刺す。
「これは。酷いな」
遥はやっと言葉を発した。
脂肪と機械の区別がつかぬスエツムバナは子宮の部分が大きく拡張され、城の各設備と一体化している。
俺たちは彼女の胎内を通ってきた。らしい。
間断なく彼女は魔物に犯され、常時子供を産み続ける。
その務めは休むことなく。続く。
「偉大なる母よ」カゲロウの涙を俺は見たことがなかった。「さらば」
ごうごうと燃える炎がスエツムバナを。城を燃やしていく。
炎の光は数百年の間、『国』に全てを捧げ、魔物に身体を捧げ、狂気の中で叫んでいた女の一生を洗い流していく。
死体が燃える臭いのなか、俺たち反乱軍は新たなる国家の建設を奴隷と、これまで主人だった魔物達の前であげた。
「シン」
シズルが俺の腕を掴む。
シズルは美しくなった。本当に美しくなった。
スバルは。遥の傍から離れようとしない。
「このまま遥と死にたい」スバルは炎を見つめながら呟いた。
スバルは。遥に惚れている。
「シン。解っていると思うが」カゲロウが呟く。
俺は。王にならねばならない。
次に醜い花になるのは、俺の運命なのだ。