はじめに
遥が幼い愛息を遺してあの痛ましい事故で死んでから10年以上経つ。そろそろ、私たちの体験した不思議な物語を何処かに記しておきたいと思う。
あの可愛らしく悲しい女の子達と憎い魔物ばかりのあの世界の思い出を。
拙い筆だ。恐らくつまらないだろう。だが見て欲しい。これは俺の。俺たちの真実の物語だ。
奴の名前は『遥 真実』。私の。俺の生涯の親友だ。奴がいなければ今の俺はない。
私の。俺の名前は『新堀真』。現在十七歳の娘と息子がいる立派なオッサンだ。無駄に歳だけ取ってしまった。
娘。唯は生意気盛りで誰に似たのやら。世の父親の悲哀を感じざるを得ない。
早朝に目を覚まし、仕事に明け暮れ、若き日の思い出と当時の理想。今の現実の剥離に心を痛めつつ……おっとこのような話は『面白く』ないな。
当時は私。いや、この場合『俺』も君達と同じく若かった。
今の俺に夢や希望が無いと言えば嘘になるが、それでも若者らしい思いは胸に秘めていた。と。思う。
歳を取ると無駄に愚痴っぽくなる。皆さんも気をつけて欲しい。
瞳を閉じ、夢の中で俺は親友の声を聞く。
「いくぞっ 遥ッ 」「おうっ 真ッ 」