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Cross World  作者:
2/5

世界

あれから二日後、青年は指定された正午に指定された場所で黒服の少女を待っていた。


(ほんとに来るのか…?)


なんてことを考えていたが、覚えのある感覚にふり向くと、少し離れたところの人混みに、あの少女がいた。


(あ、ほんとに来た。)


真琴は青年がすでにこっちを認識していることに気づいた。


(へぇ…服装も全然違うし、この距離じゃぱっと見では気づかないはずなんだけど…てことは私の霊力を感知したのかな。もしそうなら、けっこうすごいな。霊力だいぶ抑えてるのに。)


あれこれ考えながら歩き、青年のもとに着く。

真琴は白基調のシャツにチェックのミニスカート、ブーツと、あまりに年頃の女の子的な服装で、青年は少しギャップ萌えしていた。


「こんにちは。二日ぶりね。じゃあさっそくだけど…」


と言いかけたところで青年が口を挟む。


「あ、ちょっとタンマ。たぶん話長いよな?どっかで座って話そう。おれ昼飯まだでさ、できれば何か食えるとこで…」


服装のせいか、青年はいつのまにか丁寧語を忘れていた。


「そうね、そのほうが。それに人間食って食べてみたかったのよね…」


(人間食?何言ってんだこいつ)


と青年は思いながらも正直かなり空腹だったのでスルーして、


「じゃあそこのマックでいいよな?」


と早々に提案し、返事も聞かずに歩を進めていた。


店内、


「マックポーク二つとハンバーガー、コーラのMで。お前は?」


青年はいかにも学生的な注文をし、真琴を促す。


「え、あ…えっと…な、何がおすすめ…?」


真琴は困惑していた。


「おすすめって…そう言われてもな…」


青年も困惑した。


(こいつ…まさかとは思うけど、マック来たことないのか…?)


さすがにそれはないか、と思いつつも、二日前の大鎌を振るう姿を思い出し、可能性はあるかも、と考え直した。


(何か大変な生活なのかもしれん…触れないでおこう。)


「じゃあさっきのにチーズバーガーとシェイクのバニラS追加で。」


真琴の様子を見ると、どうも代金のことも頭にないようなので、青年はとりあえず二人分支払った。


二人は席につき、青年はハンバーガーの包みを開けて食べ始める。真琴も真似てチーズバーガーを手にとる。


(あの獣っぽいやつ…化物?とにかく生き物の死に方じゃなかったし…で、目の前にはそれを斬り伏せた黒服の一人。あの慣れた様子から考えてもこいつらは化物退治人ってところか?…今からいったいどんな非現実的な話を聞くことになるんだろうか…)


緊張した面持ちで考え込んでいる青年をよそに、真琴はバーガーとシェイクに感動していた。その様子を見た青年は、


(やっぱりこいつ初めて食べたみたいだな…マックでこんな顔してるやつ初めて見たよ)


と、少し緊張が緩んだ。真琴の幸せそうな表情はとても可愛らしいもので、月下の死神とはまるで別人だった。


二人ともだいたい食べ終わった頃、シェイクを飲みながら真琴が切り出した。


「さてと…じゃあ話す前に一つ確認しとくことがあるの。」


「確認?」


「そう。私たちのことや君を襲ったものについて全てのことを知るっていうのは、こっち側の世界に足を踏み入れるってことになるけど…それでも知りたい?」


「こっち側の世界にって…踏み込んだらどうなる?」


「いわゆる普通の人間の生活には戻れないかな。ある程度なら今まで通りに人間社会で生活することはできるけど、それはいつ壊れるか分からないつかの間の日常ってところね。」


「…そっか。まあなんとなくそういう覚悟はしてたけどな。」


「どうする?そのなんとなくの覚悟は、本物?」


「本物ってことで。幸か不幸か、なんか知らんけどおれには戦える力がある。力がある者にはそれを活かす義務がある、って昔教えられてさ、その通りだと思うんだ。だから、話、聞くよ。」


「うん、分かった。そうね…じゃあまずは私のことからかな。自己紹介もしてないし。名前は閻魔真琴、種族は死神。この辺の地区担当の班の班長なの。」


(…閻魔ってあの閻魔かな…ってか何て言った?死神?種族?覚悟はしてたがいきなりおとぎ話的な…)


青年は、当然のような顔でメルヘンなことを喋る少女の言葉を必死に理解しようと努力していた。


「えっと…その死神っていうのは、コードネーム的なやつ?それか比喩表現とか…」


「ううん。死神は種族名で、精霊の一種なの。」


「…つまりお前は人間じゃない、と?」


「うん。精霊っていうのは、神獣や妖怪、怨霊なんかから人間を守護して、彼らの思念や魂を収集し本来の流れに戻すのが役目。ちなみにこの前のは神獣ね。」


「…………………。」


青年は、非現実がどうとか、そういうのは置いといて言葉通りに話を理解することにした。

真琴は話を続ける。


「精霊には死神の他にも、鬼、天狗、天使、悪魔、エルフ、ドワーフ、ヴァンパイア、ウンディーネ、サラマンダー、シルフィード、ノーム…で全部かな?まあ色々種族があって、それぞれ大まかに担当区域をもって人間界で役目を果たしてるの。私たち死神はこの列島の西側と、中央大陸…ゆーらしあだっけ?の極東南方面を担当区域としてる。ここまで大丈夫?」


「えっと…たぶん大丈夫。」


「そう。人間に世界の仕組みを伝えると、ほとんど信じてくれないから大変なんだけど…君は素直に聞いてくれるからやりやすくていいよ。で、次は神族と神獣についてかな。」


(神?神まで出てくるのか…頑張れおれ!)


青年は必死に頭を整理した。


「さっきも言ったけど、この前のは神獣ね。低級の、ヘルハウンドって種類。それで、神獣っていうのは、創造神の血を引く獣のこと。」


「創造神…つまり全てのトップ?」


「うん。今は眠りについてるみたいだけどね。創造神の血を引くのは、その血肉から創られた神族と神獣だけなの。精霊も創造神によって創られたんだけど、霊力による創造だから血は引いてないんだ。」


「…人間は?」


「人間やその他の動物は違うよ。自然科学的に誕生した単細胞生物を祖とするものだよ。それは人間界でも知られてることでしょ?」


「あ、そこはすごい現実的なんだ…」


「私も歴史として教わったことだから大きい顔はできないんだけど、簡単にこの世界の成り立ちの流れを説明するから、ちゃんと聞いてね。」


(世界の成り立ちって…これもう飛躍しすぎて…)


青年は雲の上すぎる話に振り切られないようついていくのに精一杯だった。


「詳しくは誰も知らないんだけど、教わった通りに言うよ。

宇宙空間において存在していた霊力の集合体が創造神で、やがて思念や肉体を持った創造神は大地を欲し、自らの力を消費して空間に散らばる地の塊、小惑星のことかな?を集めて星を創った。

それが後の地球。創星から間もなく、大地に多大な変化が起き、海ができてそこに命が宿った。その後、大地は変化を続け、命もどんどんその数を増やし続けた。創造神はその様子を観察するために天界を創り、そこを居場所とした。彼にとって星と命たちの歩みは喜びだった。

しかし命は徐々にその肉体を巨大なものにし、大地を占領、日夜殺し合い、喰い合った。創造神はその光景を悲しく思い、また憎くも思った。どうにかしたかったが良い考えが浮かばず、最悪の手段として自身の力を大幅に削って大地を一度やり直すことにした。

天空より下る神の怒り、それがこの世界で最初の天罰とされてる。まあ、その後天罰は下ってないけどね。あ、そうそう、天罰を下す前にいくつかの生物を天界に迎えて自らの血肉を分け与えたらしいの。それが神獣の始まりって言われてる。

で、天罰によって大地は一時期、命の乏しい時間を迎えた。それから長い時を経て大地が再生、再び命が賑わい始めたころ、創造神は慎重だった。自分と同じような理性をもった生物が生まれれば、あのような粗野な世界にはならないだろうと考えた。

生物の進化の能力に可能性を感じた創造神は、そのころ森に住む最も知能の高いと思えた生物の、生きる環境に手を加えた。それによって森を失ったその生物は、護身のため遠くまで見渡せる必要があり、やむなく二足歩行を身につける。直立による頭部、喉の骨格の変化によるさらなる脳の発達、言葉、空いた前足による道具の使用と、進化を続けた。

そうして理性を持つ生物、人間が数を増やしていくが、それでも不安だった創造神は自らの血肉から神族を創り、世界を見守る手伝いをさせた。

しかしそれによって創造神は少なくなった力をさらに削ってしまった。

だがこれで落ち着くだろうと考えたがそうはいかなかった。」


(簡単に、とか、詳しくは知らないって、めちゃくちゃ詳しく説明されてる気がする…)


真琴の終わらない歴史講座に聞くほうが疲れ始めていた。


「それで、落ち着くと考えてたんだけど、何度も霊力によって大地に干渉したせいで、霊力を宿した人間や、死霊、思念なんてものが地上に現れ始めた。それに対応させるために神族を地上に遣わしたが、人間とは異なるその姿に、人々は魔物だ化物だ、とまた新たな騒ぎが起きて手が出せない状態に陥ってしまった。そのため、創造神は残った力を使って、人間とほとんど変わらない姿をした精霊を創り対処させ、神族にはその監督を任せ、眠りについた。…って感じ。これは学所で教わるんだけど、どう?世界の成り立ちを知った感想は。」


「………長い。」


「殴るよ?」


「嘘です、ごめんなさい。えっと、今までの常識からその話を聞くと、宗教と自然科学をごちゃ混ぜにしたような…でもなんかすっきり理解できた気がする。」


「そう、それはよかった。で、今度は君のことを聞かせてもらうよ。名前、年齢、霊力のこと、戦闘経験…」


「分かった。名前は村上和哉。歳は19、戦闘経験はこの前のヘル…何とかが始めて。それまでは襲われてもとりあえず逃げてたからな…」


「まあ逃げるのが普通なら正しいんだけどね。で、霊力の発現はいつから?」


「ん、霊力っていうのがいまいち何なのかよく分からない。」


「あ、説明してなかったっけ。霊力っていうのは、何て言えばいいんだろ…人間に分かりやすく言うなら…気?みたいなものかな…魂のエネルギー的な…霊力がないと、霊体は見えないし干渉することもできないから、心霊とか妖怪とかをそもそも認識すらできないの。」


「言いたいことは何かすごく分かった。霊感がある、とかもつまりは霊力を持ってるってことになるのか。だったら昔っからだな。小さい頃から妖怪とか見えてたから…。」


「そっか。普通人間は霊力を持ってないんだけど、君、村上くんだっけ?村上くんみたいに戦えるくらいの霊力を持つ人間は霊能者って呼ばれてる。霊能者たちは仲間を集め、霊能者連盟っていう一つの組織を立ち上げて精霊と手を結んでるの。」


「ってことは、おれ以外にもその霊能者?はたくさんいるってことか。何か同類がいるって思うと少し安心するな。」


和哉はほっと息をついた。


「村上くんも加盟することになると思うから、今度連れて行くよ。」


「そうなのか。加盟って…何かしないといけないこととか…」


「詳しいことはその場で連盟の人が説明してくれるよ。」


「そっか…」


未知の、それも今までからするとかなり非現実的な組織に加盟すると考えると、和哉はさきほどの安心を撤回したくなった。


「ずいぶん話長くなっちゃったけど…何か質問とかある?」


窓の外はすでに暗くなっていた。


「そうだな…もう時間も遅いし、一つだけ。その神獣ってやつは神族と一緒に天界?に居るんだろ?それが何で街に現れるんだ?」


「正確な原因はよく分かってないんだけど、空間に歪みが生じて天界と人間界が繋がるってことが起きるの。そのとき、その歪み付近にいた神獣の魂だけが人間界に流れてきてしまうみたい。」


「魂だけ?」


和哉は出血のない切り口を思い出しながら疑問を口にした。


「そう。流れは天界から人間界への一方通行みたいだけど、魂だけ流れてきた神獣は人間界で霊体としての肉体を構成して、活動する。それだけならまだマシなんだけど、流界してきた神獣はほとんど暴走状態で、霊力を持つ者を貪欲に狙うの。」


「それでおれはよく襲われたわけか…」


ため息をつきながらも、納得する和哉。


「歪みの大きさによって流界する神獣の強さや数も変わってくる。たいていは小さい歪みしか起きないから、比較的霊力の弱い神獣しか流れてこないんだけど、たまに大きな歪みが起きると、ほんと強力なやつが流れてくるからね…」


経験者は語る、といった口調に和哉は、こいつ、そんな強いやつとも戦ってきたんだな、と感心と尊敬を抱いた。


「つまりその、こっちにきた神獣は、倒しても死んだわけじゃないんだな。」


「そういうこと。倒して、霊体としての体が解崩すると魂が残るの。その魂を収集して、再び天界に還すと、魂はもとの肉体に戻ってめでたしめでたしってわけ。」


「それさ…魂を還さなきゃいいんじゃないか?そうすりゃ神獣も減っていって、人が襲われることもなくなっていくわけだし…」


命を狙われた不満から少々冷たいことを口にする和哉。


「神獣も神よ。無能だと思った?」


意味深な物言い。


「死後の人間の魂は神族によって転生するけど、それ以外の生物の魂は神獣によって転生するの。だから、神獣がいなくなれば生物たちは魂のない脱け殻の子しか生めなくなるよ。」


真琴は真剣な表情で告げる。


「……そっか…」


和哉は神に対しての軽薄な発言に少し反省した。


すっかり夜になり、今日はここまでかな、と立ち上がる真琴。


「とりあえずの説明はこんなところかな。次、いつ時間ある?」


今回の一方的な時間指定は良くないと思っていたのか、今度は和哉にも選択の余地を与える。


「明日は土曜で学校休みだし…大丈夫かな。」


(まあ今日普通に授業さぼってしまったけど…)


和哉はゴミを捨てながら、出席取らない授業だから別にいいや、とだめだめな発想をする。


「明日ね。じゃあ明日、今日と同じ場所で。」


「連盟に行くのか?」


「いや、明日は私たちのところに来てもらうわ。」


「私たちのところって…死神のアジトってことか…?」


響きに少し恐怖を感じる。


「アジトって…まあ何でもいいよ。時間は、朝がいいな…9時に落ち合おう。」


「9時?早くね…せめて10時、いや10時でも早いな…11時…」


大学になると9時起きが早起きな気がしてしまうよくある症状である。


「11時って…それもう昼だよ。10時でいいから、寝坊しないでね。」


店から出ながら、どうも朝が不安な和哉に念を押す真琴。


「たぶん大丈夫なはず。」


自信がないため不明確な返事しか返せない。


「はあ…まあ、とにかく明日ね。それじゃあ。」


そう言うと真琴はどこに向かうのか、歩いて街並みに消えていった。


翌日。

どうやら和哉は寝坊しなかったらしく、10時前には落ち合えたようだ。


「それじゃあ行こうか。」


歩き出す真琴。


(死神ってどんなとこに住んでんだろ…山奥の古城とか?…それは吸血鬼っぽいな…)


なんてとりとめのないことを考えながら後に続く。

少し歩くと、二人は人気のない路地裏に入った。


「…ここ?なわけないか。」


和哉は、路地裏で歩みを止めた真琴に疑問を抱く。


「ここで門を開くの。人目につくと面倒だからね。」


そう言うと真琴は少し霊力を解放する。


(あ…たぶんこの感じが霊力ってやつだな。…てか門って何だ?)


そんなことを考えていると突然、真琴は一瞬であの黒服姿に変わった。


「…!!え!?」


当然ながらびびる和哉。


「ああ、今のは転装って言って、霊装…つまり霊力行使に適する服や装備なんかに変わる…技っていうか…術?かな、まあそんな感じ。」


「へぇ…。」


(さっきまで普通の女の子だったのに…黒服になった途端にずいぶん雰囲気変わるな…)


和哉は再び大鎌の少女を思い出していた。

一方真琴は、何やら二言三言つぶやく。直後、二人の目の前に大きな、重々しい扉が現れた。


「…いちいち驚いてたらこの先やってけそうにないな…。」


あまりの現実離れの連続に和哉は、いい加減リアクションを抑えないと心が持たない気がした。


「じゃ、行くよ。」


扉はひとりでに開き、二人は中に入る。


「おおう…すげ…」


扉の内側は完全に別世界だった。西洋風の、でもどこか違った家々が目の前に広がり、奥には一際大きな、黒い城か屋敷のような建物が見える。街の四方は、少し高めの壁に囲まれているようだ。


「ここが死神の住む場所。精霊はね、霊界の一角にこんな風に周囲を囲って街を構えるの。種族によって、拠点を奥に置くか中心に置くかはそれぞれだけど。」


(これは…城下町とかに近い…いや、それより平安京とか都のほうが近いか?)


あれこれ考えている和哉に真琴は声をかける。


「今からあそこに行くよ。」


真琴は前方に見える、大きな建物を指差した。


「あれが死神の…」


和哉は前方の建物を見ながら呟く。


「そう。あれが私たちの拠点、黒耀館。」


二人はその黒耀館なる建物に向かう。

街にはちらほら死神がおり、彼らは和哉に気づくと、しばらく目で追った。少し珍しがっているようだった。


「…何か視線が…」


死神の視線が集中するという慣れない状況に、少し緊張する和哉。


「まあ連盟印のない人間がここに来るのは滅多にないからね。」


「連盟印?」


「そう、連盟印。加盟すると与えられるよ。かなり独特の霊力を放ってるから、持ってるだけで連盟の者だって伝わるの。」


「なるほど…そういうの分かりやすくていいな。」


「よね。それは精霊じゃなくて人間が考えついたことなんだけど、人間の適応能力ってすごいと思う。」


「そういう言い方聞くと、やっぱお前は人間じゃないんだなって思うよ。」


和哉はどうも真琴が人間じゃないということがしっくりきてないらしい。


「まあ外見とか変わらないしね。でも、精霊よりも遥かに優れたものを人間は持ってるよ。」


「…?」


思いつかない和哉。


「食べ物だよ!あと、衣服とか…」


和哉は内心、なんだそりゃ、と思いながら答えた。


「そういえば昨日はかなり満足できたみたいだったな。」


「ほんと感動した!特にあの白いやつ、なんだっけ?」


「マックシェイクね…甘いのが好きなのか。」


「それそれ、もう人間界行く度に飲みたいかも!」


「……ふだんどんな食事してんだ?」


ただのマックシェイクにあまりにご執心のようなので和哉は真琴のふだんの食事が気にかかって仕方がなかった。


「普段は、果物とか肉とか魚とか、そういうんだけど、精霊は、食に娯楽の要素を組み込む発想を持たないの。」


「どういう意味?」


「精霊にとっての食事っていうのは、あくまで生命活動を維持するための栄養素の補給でしかないの。だから、おいしいとかおいしくないとかは関係ないんだ。」


「そっか、それで。」


「うん。普段は狩ってきた動物や魚の肉をただ焼いただけのものとか、果物をそのまま食べてる。」


(ほとんど原始みたいな食生活だな…)


マックでの真琴の幸せそうな顔に納得がいった和哉だった。


話をしているうちに二人は黒耀館の前まで来ていた。


「近くで見るとまたすごいな…」


和哉は目の前に佇む黒耀館に威圧された。


「とりあえず私の隊長のところに連れていくよ。」


(隊長…か。なんか恐そうだな…)


二人は黒耀館の中に入り、隊長室のある場所へ向かった。

黒耀館の中は広いが、けばけばしい装飾や調度品はなく、どこか質素な内装は落ち着いた雰囲気を持っていた。


(でかい屋敷だけど…この落ち着ける雰囲気は好きだな)


しばらくして二人は隊長室に着いた。


「…!!」


扉の中から異常な強さの霊力を感じ、びびる和哉。


「閻魔真琴、例の霊能者を連れてきました。」


「入れ。」


あの渋い声である。


「失礼します。」


二人は部屋に入る。

隊長と呼ばれる男を間近にし、強大な霊力がびりびりと伝わる。

和哉はこれまでにないくらい緊張していたが、真琴は呆れたような顔で隊長を見ていた。


「えっと…村上和哉といいます。先日、彼女と他の死神に助けてもらって、色々説明もしてもらいました。」


少し震える声で自己紹介を済ます和哉。


「話を聞いたってことは、いつでも死ぬ覚悟があるってことだな?」


「あ…いや、えっと…」


戦う決意はあったが、死ぬ覚悟となるとやはり死にたくはないと思う和哉。


「何だ?覚悟もなしにお前は何をするつもりだ?」


隊長は容赦なく問い詰めてくる。


「おれは…死ぬ気はありません!」


必死に強がる和哉だが内心は、


(やべえ!この人恐すぎるって!ちょっと生意気言ってしまったかな…?謝ろうか?謝ったほうがいいのか?)


という感じだった。

が、どうも和哉は内心を隠すのが上手いらしく、


(死ぬ気はない…か。そういう考え方は嫌いじゃねぇな。)


隊長からの好感度を少し上げることに成功していた。


「死ぬ気はなくとも、常に死は隣にある。おれたちは命をかけて戦ってる。理解してんのか?少し甘く見てんじゃねぇだろうな。」


「おれも何度か襲われて、その度に死ぬかと思いました。だから、命がけなこと、理解できてるつもりです。」


和哉の真剣な目は真っ直ぐに隊長の目を捉えていた。


「なら聞くが、そんな思いをしといて何故、この道を選んだ?」


「おれにも少しだけど戦える力があります。力を活かすのは持つものの義務だと、そういうふうに生きてきましたから。それに…このままじゃいつかはやられて死ぬと思います。襲われる以上、強くならないと…死なないための努力はしないといけないと思うから…」


「なるほどな。お前がどういうやつなのか、だいたい分かった。真琴、黒刀のほう頼む。」


隊長からの威圧感が少し軽くなった気がした。


「了解です。」


「小僧、せいぜい死なねぇよう努力するんだな。」


「あ…はい!」


二人は隊長室を後にした。


「ああ~…びびった…」


心の底からの呟きである。


「恐がることなんてないよ。」


「いや、威圧感異常だって!霊力も意味分からんくらい強いし…」


「あれね…わざと霊力強めてるのよ。」


「…え?」


「強い霊力でわざと新米とかを威圧して…態度だってそう。あの人はそういう人なのよ。」


呆れ顔で話す真琴。


「そうなのか…?まあわざとにしてもあの霊力の強さはやばいって…」


「まあ一応隊長だからね、上位クラスの霊力を持ってるよ。」


「隊長ともなるとやっぱ違うんだな…お前やあの時の二人とは比べものにならない強さだったし…」


「私、まだ君には半分の霊力も見せた覚えないんだけど?」


少しむっとして真琴が言う。


「え?あの時は?」


「私も一応班長を任されてるのよ?低級相手じゃ霊力を解放しきれないよ。」


「そっか…班長…あの二人も部下だよな?お前って死神の中でもけっこうすごいやつだったり?」


「分かればいいの。」


真琴は若干のドヤ顔をしてみせる。


「…ところで今はどこに向かってんだ?」


ふと気になったとことを口にする和哉。


「成霊の間って部屋なんだけど…まあようするに今から君専用の霊具、つまり武器を造りに行くのよ。」


「おれ専用の武器…。」


和哉は鼓動が早くなるのを感じていた。


二人は成霊の間に着いた。

真琴は妙な模様が描かれている扉を開き、中に入る。

中はわりと狭く、床には扉にあったものと同じような模様があった。


「それじゃあ、始めようか。そこの真ん中に立って。」


真琴は模様の中心に和哉を立たせた。


「軽くでいいから、霊力を解放して。それから目を閉じて、力を欲して。」


(力を欲してって…またわけわからん注文を…)


心の中で文句をいいながらもなんとか試みる和哉。

真琴は何か呪文のようなものを唱える。

すると床の模様が黒く光り始めた。


(やっぱり…霊力が黒い…)


「目を開けて、両手を出して。力をその手に受け取るイメージで。」


言われた通りにやってみる和哉。

すると、少しずつ形が現れ始め、やがてそれは日本刀に近い形状に完成をみた。

模様の光は消え、部屋は元の状態に戻る。


「どうやら上手くいったみたいね。」


「これがおれの…」


「そう、村上和哉専用の霊具。まあずいぶんシンプルだけど…」


「お前のは鎌だよな…形状の違いって?」


「黒刀…あ、死神の扱う霊具のことを黒刀って言うんだけど、黒刀はその人の一番扱いやすい形状をとるの。私なら鎌、君なら刀が一番使いやすい形ってわけ。」


「へえ…便利だな。」


「ただ、鞘がついてるのが気になるね。そんな例は…確か灯のも鞘があるけど…あれは居合刀だからあって当たり前だし…」


「灯って?」


「ああ、灯は鬼なんだけど、前に知り合った時に気が合ってさ、仲良くなったの。」


「死神の友達が鬼…人間にとってはなんとも恐ろしい…」


「まあ灯はおいといて、君のは普通に刀だよね…鞘の意味がよく分かんないな…」


「まあ言われてみれば…」


和哉は鞘についている紐に気づき、ほどいた。

その途端、紐は勝手に動き、和哉のベルト部分と鞘を結びつけた。


「…わお…」


突然のことに呆然とする和哉。


(う~ん…人間だとよく分からないことが起きるみたいね…)


「とりあえず黒刀しまってみようか。転装と同じ要領だから。」


(同じ要領だからって言われても…一回見ただけでできるわけないって)


もっともな愚痴だが、和哉は口には出さなかった。


真琴の難易度の高い説明を受けながら何度か試み、なんとかコツを掴む和哉。


「なんとなく掴めたかな…それにしても、これって死神の霊具なんだろ?人間でも使えるもんなんだな。」


「あー…実はね、初めての試みだったの。」


「え…」


「君の霊具について連盟に申請したんだけど、どうも今は空いてる宝具がないらしくて…」


「宝具?」


「宝具っていうのは、簡単に言えば人間が造った霊具ってとこかな?人間界にある普通の剣や刀じゃ、下位レベルの霊力戦闘しかできないの。だから、昔の霊能者たちは、武具の研究にも力を入れたんだろうね。錬金術師って言われてるみたいだけど、まあそうして造られたのが宝具。」


「へえ…で、その宝具が今は在庫切れだったから、おれはこんな実験台のような…」


「まあ…あくまで一つの手段だよ。黒刀がだめだったら、次は別の方法で君の武具を探すことになってたけど…成功したしね。」


「…死神にとっても未知だったわけか…」


和哉はため息をつきつつ、成功したことに感謝した。

そうこうしていると、二人のもとに一人の死神がやってくる。


「よう。どうやら例の、黒刀を霊能者に造るって件、上手くいったみたいだな。」


その死神も相変わらずの黒ずくめで、無精髭を生やした30歳くらいの男だった。


「安土隊長…どうしたんですか?こんなところに。」


(隊長…この人も隊長なのか…)


和哉はさきほど会いに行った死神と目の前の死神を比べる。


「ああ。宗吾さんに聞いてな、面白い人間がきたって。だから見にきたんだよ。」


「そうですか…」


(お父さん、気に入ったみたいね…)


和哉のほうをちらっと見ながら考える真琴。


「どうだ人間。せっかく霊具を手に入れたんだ、試してみたくないか?」


「…試すって、試し切り的な…?」


「まあ、そんなとこだ。ほら、閻魔の嬢ちゃんも行くぞ。」


「な…本気ですか?彼はたった今黒刀を手にしたばかりで、戦闘は…しかも隊長となんて、とてもじゃないけど無理ですよ。」


「なーに、黒刀は一番扱いやすい形状をとるんだ。手にしたばっかでも大丈夫だろうよ。それに戦うのはおれじゃなくてお前だよ。」


「私ですか…まあ私は別にかまわないんですけど…」


「ちょっ…ちょっと待って…何?戦闘?」


勝手に話が進むことに焦る和哉。


「ああ、戦闘だ。どうせこれからは戦闘の毎日になるんだ、今さら驚くことでもないだろうに。」


「ま…まあ、確かに…」


もっともな意見だが、突然すぎて和哉は心の準備ができていない。


真琴は移動しながら紹介を始める。


「この人は安土恭平。安土隊の隊長で、さっき会いに行った隊長とは、弟子みたいな関係にあたるのかな。」


「へえ…弟子が隊長になるってことは、やっぱりあの人ってそうとうすごいんじゃ…」


和哉はあの時の威圧感を思い出して少し身震いをする。


(どうやら父娘ってことは言ってないみたいだな…)


恭平は二人の言い方から察した。


「着いたぞ人間。」


三人はさほど大きくない、普通と言える扉の前にいた。

扉を開け、中に入る三人。

中は殺風景で、厚めの布がかけられた、人が一人横になれるくらいの大きさの台がいくつか並んでいた。

部屋の奥には大きめの扉があり、霊界に来るときに使った扉に少し似た雰囲気を持っていた。


「その台に横になって。」


真琴は自分も横になりながら和哉に指示する。

恭平もまた横になる。


すると奥にあった扉がひとりでに開いた。

と同時に、何かを考える間もなく和哉は意識を失った。


「…ん…あれ?」


意識を取り戻した和哉は、建物の中ではない、大地の上に立っていた。


「大丈夫?」


振り向くとそこには真琴と恭平がいた。


「ここは…?」


辺りを見渡す和哉。所々に草の生えた大地が広がっており、遠くには山々も見える。


「ここは霊界の一部だ。さっきの部屋で、扉が開いたのを覚えてるか?あの扉を魂だけが通って街の壁の外に行く。着いた先で魂は霊体としての肉体を構成するんだ。まあ霊界のどこに着くかは分からんがな。山ん中だったり、川辺だったり。」


説明を聞いているうちに和哉は以前似たような説明を受けたことを思い出す。


「それって…神獣が流界してくるのと…」


「ほう、どうやら頭は悪くないみたいだな。」


恭平は少し感心する。


「神獣の流界と原理は同じだな。というより流界の原理を応用してこの扉を造ったんだ。」


恭平は、自然が広がる大地で、一際異彩を放つその扉を見ながら言った。


(街に行くときの扉といい、まるでどこでもドアだな…)


くだらないことを考えながらも、状況を理解する和哉。


「応用して造ったってことは、当然ながら一方通行じゃなくて戻ることもできる。しかも霊体として肉体を構成したにすぎないから、この場でいくら斬り合っても死なず、極めて実戦に近い訓練が可能…と、そんな感じですかね。」


「おいおい人間、なかなか冴えてるな!いちいち説明しなくていいのは助かるな。」


「私が親身になって教えてあげたからですよ。」


真琴は少し自慢気な顔をする。


「そうか?…それはまた…人間、お前たいしたやつだな。あの閻魔の嬢ちゃんにすっかり世話焼かせて…」


「霊能者を発見した者が後の対応をするのは当然の義務ですよ!」


ムキになる真琴をいなしながら、恭平は話を進める。


「つまりそういうことだ。相手の生死を心配する必要がないからな、本気で戦えるってわけだ。」


「よくできてますね。…で、おれは今からこの娘と戦うと。」


「そうだ。一瞬で首飛ばされないように気をつけろよ。」


なんとも恐ろしいアドバイスをさらっとされる和哉。


「そろそろ始めようか。君も出して。」


大鎌を出現させながら言う真琴。


「えっと…」


和哉は右手を腰元にやり、集中する。

霊力が少し解放され、黒刀が現れる。


「もう転装は大丈夫みたいね。」


真琴は大鎌を構えながら言う。


「おかげさまで。」


和哉も刀を抜き、構える。


「じゃ、行くよ。」


そう言うと真琴は一瞬で間合いを詰め大鎌を振るう。


「!!」


鋭い金属音が響く。

和哉はそのまま後方にはじかれたが、なんとか防ぐことに成功していた。


(へえ…ちょっと擦らせる程度のつもりだったんだけど、まさか防がれるなんて…)


和哉の反応が思った以上に鋭く、少し驚く真琴。

が、しかし


(は?…何だ今の…速すぎ…見えねーって…)


和哉のほうはもっと驚いていた。


(これは無理だ!受けに回ったら今度こそ首が飛ぶ…)


和哉は、攻撃こそ最大の防御とばかりに攻めに転じる。


(太刀筋もけっこう鋭いし…思ったより良い戦士になるかも…)


真琴は和哉の攻撃を軽く防ぎながら分析する。


(これだけじゃだめだ…刀とあれの連携技を…)


和哉の右手から黒いオーラが現れる。


(…!話には聞いていたが…本当に黒いんだな…)


和哉はそのまま黒いオーラを真琴に向かって放つ。


「!」


真琴は大鎌でそれを止め、横に受け流した。

和哉は、真琴の視線が一瞬自分から離れた隙に回り込み、横から斬りかかる。

しかし、和哉の刀は空を斬っただけだった。


「消えた?……!!!」


その瞬間、体に激痛が走る。

和哉は背中から心臓を大鎌に貫かれていた。

朦朧とする意識の中、背後から声が聞こえる。


「初陣から首飛ばされたりしたらトラウマになりそうだから、心臓で勘弁してあげるね。」


地面に崩れ落ち、和哉は思った。


(ああ…そういやこいつ、死神なんだったな…)


そうして和哉は初めて死というものを経験した。


「…!」


和哉は元の部屋の台の上で目を覚ました。


「気分はどう?」


「…最悪…」


和哉は胸をさすりながら起き上がる。


「…安土って言ったっけ、あの隊長は?」


「仕事があるからって、隊長室に戻ったよ。」


「そっか…何か言ってたか?おれのこと。」


「かなり見込みがあるって。私もそう思う。」


二人は部屋を出、話を続ける。


「…?あんな瞬殺されたのに?」


「あのさ…前も言ったけど、私これでもけっこう強いんだって。」


「そっか、班長とか言ってたな。申し訳ないです、閻魔班長。」


ふざけて言ったつもりだったが、真琴の顔が少し曇る。


「私…苗字で呼ばれるの好きじゃないんだ。だから、できれば真琴か、お前呼ばわりでも全然いいから。」


和哉は真琴の気持ちがいまいち理解できなかったが、その表情から冗談ではないことは分かった。


「分かった。ならおれも和哉で。村上くんなんて呼ばれんのには抵抗がな。」


「うん、分かった。」


真琴は少し微笑んだ。


「ところで、体のほうは本当に大丈夫?」


「ん…大丈夫だと思うけど。」


「そう…初めてだとね、肉体的には何の問題もないけど、精神的にけっこうくるから…それで体に不調が生じることもたまにあるの。」


「そっか…まあおれは今のところ問題無いかな。」


「なら良かった。けどとりあえず今日はゆっくり休んで、様子を見て。」


「ああ、そうする。」


二人はそれから、いくつか会話を交わしたのち、"門"に着く。


「じゃあ今日はお疲れ様。ゆっくり休んで。…あ、忘れるとこだった、」


真琴は何かに気づき、懐からそれを出す。


「…これは?」


「通信端末。これは連盟に加盟してるグループが造ったものなんだけど、必要性が高いってことで精霊たちにも支給されたの。人間界にある通信端末より数世代先の技術なんだそうよ。私も詳しいことは分からないけど。」


「へえ、人間もまだまだ捨てたもんじゃないってか。」


和哉は端末を受け取り、死神たちとの力の差に少々落胆していた気持ちが晴れるのを感じた。


「とりあえずは私の連絡先だけしか入ってないけど、今はそれで大丈夫よね。」


「これは…人間界から霊界へも通信できるのか?」


「できるよ。…機械とかは苦手だから私も正確なことは説明できないけど、確か…これを開発したグループ、NEXTって組織なんだけど、例えば霊界から通信する時に、霊界にあるNEXTの本拠地に向かって端末から電波と霊気を複合させたものが飛んで、えっと…そこでそれを人間界にある分拠に転送するの。それで分拠から人間界にいる者に通信が届く…って感じかな。」


真琴は苦手なりにも一生懸命説明した。


「あー…携帯電話とシステムは同じような感じだな。それに霊力っていう要素が加わっただけで。」


「NEXTは霊力っていう超自然的なものと科学技術を組み合わせることで大きな力を得た組織なの。霊能者による集団で、一応連盟には加盟してるけど、ほとんど独立した一つの組織って状態ね。」


「そっか。まあ科学技術は人間の努力の結晶だと思うし、それがこの通信端末みたいに人のためになるってのは、なんか良いな。」


「そうね、私もそう思う。…それじゃあ、何かあればまた連絡する。」


そう言うと、扉が開く。


「分かった。じゃあ、またな、真琴。」


「うん、またね、和哉。」


和哉は扉の中へ消えていった。


和哉は元の路地裏に戻っていた。


「さてと…帰るか。」


帰り道、和哉は例の通信端末を取り出す。


「…これって、真琴のメアドゲット!みたいなノリでいいのか。まあメアドじゃないけど。」


和哉が一人そんなことを呟いているころ、黒耀館では、


「例の小僧、真琴と戦ったらしいな。どうだった?」


「宗吾さんの言った通り、けっこう見込みあると思いますね。まだまだ荒削りですが、太刀筋も反応速度もけっこうなもんでしたよ。」


「そうか。脆弱な野郎ならおれが叩き潰してやろうかと思っていたが…」


「まあ、あなたの娘が叩き潰しましたけどね。」


と、少し笑いながら言う恭平。


「冗談は置いといて、あの人間の能力なんですがね…」


一変、恭平は真面目な顔つきになる。


「ああ…黒い霊力か…」


「はい。普通は弾殻を形成しないと撃てませんが…あいつはどうも我々死神同様、気状のまま撃つことができるみたいです。しかしあの黒い霊気、視認できるにも関わらず、上位には達してないですね。」


真剣な表情で話を聞く宗吾。


「本来霊力は紫…そしてそれが視認できるのは弾殻を形成したときか、上位クラスの強さのときのみ…完全に常識を無視してるな…」


「奴の能力にはちょっと謎が多いですが…まあ性格等、内面に関しちゃ問題なさそうですね。」


「そうだな。ああいう奴は嫌いじゃねぇ。」


隊長二人は一つの結論を見、話を終えた。







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