表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/85

― 序章 ―

かつてこの世界は、魔力など持たぬ、ただの星だったという。

人も、魔も、生まれながらに魔法を扱う術など持たなかった。

大地は沈黙し、空は無垢だった。静けさこそが、世界のすべてだった。


それを覆したのが、シヴ山である。

今から六十四万年前――

世界の中心にそびえていたその巨大火山は、ついに地の底に封じられていた魔力を押しとどめきれず、破局の咆哮を上げた。

《シヴァン・スーパーボルケーノ》――

それはあらゆる生命の終わりであり、そして、魔の理の始まりだった。

世界は燃え、溶け、砕け、命あるものの九割以上が灰となった。

だがその絶望のさなかで、魔力は解き放たれたのである。


地脈は脈打ち、空は揺らぎ、生まれ落ちるものすべてが、魔力という新たな律に触れるようになった。

人も、魔族も、その身に魔力を宿し、「魔法」という力を得た。

しかし――

彼らが知らぬことがある。魔力は、生命だけのものではない。

風も、水も、火も、大地もまた、魔を秘めていた。

ある条件のもとで自然そのものが放つそれは、災厄であり、奇跡でもあった。


「事象魔法」。


落雷、地震、干ばつ、洪水、豊穣、瘴気。

それらは誰の意思にもよらず、世界が世界として発する、原初の魔法である。

だが、そうした魔の理が長く続くうち、やがて自然の奔流にも法則が生まれ、抗いようのない宿命が編まれていく。

世界は、二つの巨大な魔力の潮流に呑まれていく。

一つは「勇者」。もう一つは「魔王」。

それらは時代ごとに現れては争い、どちらかが滅びると、いずれまたどちらかが生まれた。

戦いは繰り返され、あたかも世界そのものが、その輪廻を望んでいるかのようだった。


――歴史とは、勇者と魔王の干渉であり、均衡であった。


だが、もしも。

その輪廻を断ち切ろうとする勇者たちが現れたなら。

救うためではなく、壊すために剣を取る者たちがいたとしたら――

これは、世界の再生を信じて滅びに手を伸ばした勇者たちの物語である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ