半年後
「これって、どうすればいいんだろう?」
今、僕は任務情報が書いてある紙が壁一面に張ってあるという、何とも不思議な部屋に居る。ここは、任務を受けるための部屋なのだが、どうやって任務を受ければいいのかわからなかったため今に至る。
北「ああ、それはな。その紙を持ってるだけで大丈夫だ」
「どういうことだ?」
北「あのな?この学園には契約系の能力者が居て、もし任務をクリアしたら分かるようになってるんだよ」
そう、イライラしながら言われる。こいつ、短気だな。
「なるほど。じゃあ、もう早速行けばいいのか」
そして、明日やろう、明日やろう、って言いながら見事6ヶ月が経った。
北「なあなあ、南?」
南「どうしたの?」
南は、最近急に北と仲良くなった女子生徒だ。どうやら北は短気で変態らしい。
北「そういえさ、お前って任務やったことがある?」
南「いや、今のところないかな。確かに任務を達成すると定期試験が免除されたりお金をもらえたりするけど、やっぱり怖くて」
そんなことを言っているが、こいつは普通にチートだ。能力がぶっ飛びすぎている。僕の周りには何故かSランク大量に居て、その強さも大体把握しているのだ。しかし、南がヤバすぎて強いとは何なのか、という哲学的な思考に至ってしまうとかいうどうでもいい話は置いておいて、こいつの能力。
それは 【能力を操る能力】 だ。
一瞬何を言っているのかよくわからなくなるが、簡単に言うと他人の使える能力を乗っ取ることが出来るんだ。もっとヤバい点がある。
それは、相手の能力を実質的に知ることが出来てさらにはそれを使うことが出来るという点だ。さらに、相手が相手の能力をつかえないようにしてしまう。
すると、 【能力者VS無能力者という、ほぼ必勝の盤面にすることが出来る】 。もう、チート能力すぎてヤバいだろ?だけど、それを本人が自覚してないからこんなにも自信がないのだ。本当に、自信と能力が釣り合ってないよ。まあ、神は二物を与えないという久々の例を見ることが出来たかもしれない。
そして、なんやかんやで今に至る。
「おっと、これは早速のピンチって奴ですか?」
悪者A「ああ、そうだ。はあ、なんでこんな無能力者に追い詰められると思ったのかは分からないが」
悪者B「ボスからの指令が来ちまったからには殺さないとだなぁ」
見下ろされながら言われる。しかも、身動きが取れないように両手両足が椅子に縛り付けてある。
そして、こうなってしまったからには、もう必死で命乞いをするか、こいつらから逃げ纏うかだが……
「もういいよ」
悪者A「気でも狂ったか」
悪者B「まあ、もうやってもいいんじゃね?」
悪者A「そうだな、もうつまんないし」
そういいながら、僕の前にきて拳銃を構える。
「生かしてくれないか?」
悪者A「おっと、ここにきてまさかの命乞いか?」
悪者B「まあ、もう時間もかかってるし無視でいいよ」
そう、そいつが言い切った瞬間に僕の前には首が飛んできていた。
「うわ、お前マジか」
悪者B「お、おい?はあ?いったい、何が起こった?」
「こいつは殺すなよ」
そう、僕は両手が不自由な状態で言う。
北「ああ、分かってるよ」
「じゃあ、お前はどこかの組織に所属していると思っているんだが、そのボスはどこにいる?」
悪者B「いや、そんな犯罪組織なんて知ら……」
そう言いかけた瞬間に、そいつの左腕が無くなっていた。
北「良く聞こえなかった。もう一回言ってくれるか?」
悪者B「は、ははははは!!」
そう、突然発狂する。一体、何故……
悪者B「俺らのボス、それは、
そう、言うと同時に天井が大爆発する。
お前らの上だ!!!!」
北「はあ、そうですか」
そう、端的に言い放った直後。南がボスと呼ばれた大柄な馬鹿を文字通り捻り潰した。
悪者B「……は?うっそだろ……?ボスはランクSなんだぞ?最強なんじゃないのか?」
北「こいつは、ランクSなんかじゃないと思うぞ。まあ、勘だが恐らくAランクだと思うぞ」
悪者B「だま、されていたのか」
北「おつかれさま」
そう、北が微笑むと、僕の周りで生きている人間はたった2人になった。
「お前等って殺しに躊躇ないんだな。この国に法律なんてあってないようなもの、とは聞いてたけどここまであっさりだと流石にびびっちゃうよ。っていうか、死体を見ても驚かないのか?」
南「この世界で生きていたら見てない人はそうそういないと思うよ?」
「そうか?」
北「その通りだと思うよ。まあ、早くマスターのとこ行って報酬貰いに行こうぜ!」
「まあ、そうだな」
そういって、俺らは学園に引き返すのであった。そして、こんなにあっさり終わってしまった僕の初任務にがっかりすると同時に期末試験を逃れることが出来たという喜びを得た。この二つの感情を同時に感じたのは恐らく僕が初めてだろう。