表と裏
面についてある仮説が思い浮かんだ。面をしている間の事象は他人は忘れてしまうというもの。立証するにはリスクが高過ぎる。
しかし途中まで何かを主張していなような態度をみるにハッと記憶が消える訳ではなさそうか?
どちらにせよもう面は被らない方が良さそうだ。
一息着いて携帯を手に取る。
ツー ツー
繋がらない。期待もしてなかったし掛け直すつもりはない。
布団に入ると今までの出来事が目の前に映し出されたように思い出す。
「ハッ! はぁ…はぁ…」
過呼吸気味になり起き上がる。今まで押し殺していた殺意を人に向け、殺してしまった。自責の念に囚われ気づけば日が昇っていた。
結局一睡も出来ずに大学に向かった。
「おはよう!」
「あぁ、おはよう。」
「どうした?元気ないな。ゲームのやりすぎじゃないか?」
「そんなところだ。今すぐにでも眠りたいね。」
「バレないようにしろよ!」
「わかってるよ。」
友達の光介と会話をしながら講義をうけにいく。
講義がおわり、
「今日ずっと上の空だったな。」
「そうか?」
「そうだよ。何かあったのか?」
「何もないよ。ちょっとした考え事。」
「ならいいんだけどよ。」
そんな会話を続ける。すると、ドカン!!と大きな音がした。
「何だ!?」
振り返ると校舎の壁がなくそこから煙が昇っていた。
「ちょっと見てくる!」
「バカ!待て!」
腕を掴まれる。
「なんだ!?」
「どう考えても危ないだろ!警察とかを待った方がいい。」
「わかった。警察を呼ぼう。」
鞄から携帯を取り出す。
「おい!」
「なんだよ!?急に」
「あれを見ろ。」
指を指す方には人間のような影が映る。だんだんそれがはっきりと見えてくる。鷹のような羽を携える化け物が。
「逃げるぞ!」
振り返って走り出す。前を見ずに兎に角全力で。
誰かにぶつかる。
「バカ!お前も逃げろ!」
誰かは知らないが直ぐに言葉が出た。
「誰から逃げるんだ?」
「とにかく─」
顔を上げて話すと鬼のような仮面をした化け物が立っていた。
「下がれ!!」
光介が叫んで俺の体を押す。
直後化け物が拳を振り光介が姿を消す。
(光介!!)
叫ぼうとするが喉がつまった。
「ゴホッ ゴホッ」
抑えた手に血が付いていた。
意識して周りを見ると壁のない校舎が直ぐ後ろにあった。
前を向いてわかった。
俺は吹き飛ばされたのだ。
(このままだと死ぬ!)
微かな意識で持っていた鞄から仮面を取り出す。
「みーっけ。ホンマにおったんや。」
校舎から声がする。
「誰だ!」
「僕?気にせんくてええよ。それより変身せんくてええの?」
「くっ、変身!」
黒い衣を身に纏う。
「おぉ、格好ええの。頑張ってや。」
(どうする。こいつは何だ。放置していいのか?)
「僕ばっか見てないで前見んと『死ぬで』」
その言葉で前を見ると校舎よりも大きな火の玉が飛んできていた。
「僕以外にも人いっぱいおるからちゃんと守ってや。」
「!守るってどうやって!?」
「そんなん自分で考えてや。」
取り敢えず両手を前に出してみる。
「はぁ…こんなん弾けばいっぱつやろ。」
そう言って指一本で空へ弾く。
(!こいつ面は!?)
その男は仮面をしていなかった。
「だからさっきから言うとるやろ。前見んと。」
鷹の化け物が飛んできていた。
すかさず避ける。
「アホか。人おる言うたやろ。」
化け物の脚を掴み遠くへ投げる。
「ほら、追いかけんと。」
(何者なんだこいつは)
とにかく飛んでいったほうを追いかける。
「これで二人か。」
携帯を手に取る。
「もしもし?見っけましたよ。あい、あーい。ほな」
ピッ
「表か。」
「その羽は飾りじゃなかったんだな。」
飛ぶ化け物と対峙する。
「何だ?お前も面を持っているのか?」
「だったら?」
「消えろ!」
突っ込んでくる。
「突進しか脳がないのか。」
頭の面を掴んで破壊する。化け物が人間に戻る。気絶しているようだ。
「あの男は何だったんだ。」
「おつかれさん。勝つと思ったでー。」
めっちゃ棒読みで労ってくる。
「お前は何者なんだ?」
「…暇ならここ来てや。」
紙を手渡される。
「話があんねん。」