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約束のご飯

作者: みき


真っ暗な夜、街に月の光が差す。高さがみんな違う家々。ひしめき合う家の1つの窓枠から並んだベッドに並ぶ子供が3人見えた。閉じ切ったガラス窓は話し声でかたからと揺れる。1人は男の子でロイ。2人は女の子の姉妹でアビーとブリジット。


「お腹空いた。あったかいご飯にお肉つけて腹いっぱい食べたい」

「ロイ、そういうこといわないで。よけいお腹すいちゃう。」

「じゃあ、今度みんなでご飯食べよう」


ロイの言葉を諫めたアビーはブリジットの提案にのった。


朝食を食べる前に家を飛び出して30分。頭の中に記憶した地図を頼りに赤い屋根の家を見つけた俺はにんまりと笑顔を浮かべた。玄関にだされたゴミ袋を手に取って、来た道を引き返す。朝の空気が心地よかった。1回、2回、3回と道を曲がるたびにゴミ捨て場に近づいている。

 よその家のゴミ袋をゴミ捨て場まで運ぶ。それで毎月「いつもありがとうねえ」とお礼をいわれながらお小遣いがもらえた。帰った後はお家の手伝いもこなさないといけない。毎日大忙しになった。どんなご飯にしようかな。話し合いは白熱した。お菓子が食べたい日もあればお肉が食べたい日もある、お魚も食べたい日だって。お腹がすいているのだからたくさんの料理が話題に上ってころころと変わっていく。


「別のこともしたい?」

「そうよ」


 ロイのあきれ顔にアビーはうんとうなずいた。ブリジットも姉の意見に賛成していてこくこくうなずいた。ゴミ出し、あんまりたのしくない。3人ともお店のお手伝いをしていたから軽作業が追加されたところでへっちゃら。それでもゴミ出しはくさい。見知った道のりの往復をするだけでうっきうきにはなれいのだ。


「何すんの?」

「ふふふ」


嬉しそうに姉妹提案してくる仕事にロイはのった。二人の提案は夢いっぱいでやってみたくなった。いままでの売り上げ金を数えてぱっと市場へ駆け出した。1日中人でごった返した市場は老人から子供までいろんなものを買いに来る。バスケットに魚をぎっちり詰めるおばさんの脇をすりぬけ、大好きなリンゴをかじるおじさんの横を通り抜け、縄跳びで遊んでる子供の近くを通った。1個、2個、3個。材料がそろっていく。


数時間後、レモネード販売所の原型ができた。段ボールでこさえた簡易屋台はちいさかった。計画だと一番大きなロイの2,3倍はあろうかというはずの屋台。段ボールを切って、はって、折る。子供たちでわいわい言い合いながら屋台はできた。今は飾りつけに2人の姉妹が夢中になってお絵描きをしている。


スパスパとレモンをロイが薄く切ってやる。やわらかいレモンに包丁が沈み込んで黄色の断面があらわれる。あたりにはレモンの酸味のにおいがただよった。お絵描きしてる2人の耳にレモンをどぼどぼと瓶にいれる音が届く。続いてはちみつ、たくさんのお砂糖をいれて。混ぜる、混ぜる、混ぜる。瓶に蓋をしてしばらく置く。お手製のレモネードの完成だ。


「できたぞ」

「やったわ」

「わーい」


 子供たちの喜ぶ声がこだまする。ひまわりの絵やうさぎさん、自分たちの好きを盛り込んだ販売所。段ボールの上にレモネード入りの蓋つきコップを並べる。最後に値段も書いてレモネードの無人販売所はできた。


「ブリジットみて、いっぱい売れてる」

「やったね」


3人は売上金を何度もみる。自分達で設置、料理したレモネードが売れた。もうすぐお腹いっぱいご飯が食べられそう。


「どうして?」

 ブリジットが呆然と立っている。目線の先にこぼれたレモネードがいくつも。誰かの手によってレモネードが倒され売り物にならなくなっていた。アビーが唇を引き結んで泣くのをこらえる。


「誰がやったんだ」

ロイは激怒した。売上は十分稼いでいる、それよりも妹を泣かせた人が許せなかった。販売所から飛び出して近所中に聞いて回った。アビーは泣いてるブリジットを家の中に入れて、自分も聞き込みをしてみた。


ロイは散歩好きの老人に話を聞けた。

「散歩してて、8時ごろにみたときはなんともなかった。こぼれた分少し買ってやろうか?」

アビーは知り合いのお店の人に聞いて回った。気がつかなかった、何ともなかった、こぼれていた。決定的な場面を見てた人は誰もいない。


お店の手伝いもあるし2人はずっとは聞き込みできない。時間のゆるす限り犯人を探した。2人は途中で合流しお互いの話を交換しあってがっくりと肩を落としながら帰宅した。


「おっかえりー」

思いの外笑顔のブリジットが出迎えた。どうしたか

問いただす前に大人に遮られる。


「ごめんなさい」

ひょっこりと顔を出したのはおばあちゃん。犯人はおばあちゃんのペットだった。犬を散歩していて休憩。音がしてはっと振り返った時には犬がぺろぺろと舐めようとしていた。大慌てでペットを連れ帰り、どこの家の子のレモネード販売か検討をつけて家にきたらブリジットがいた。


「それでね、おばあちゃんね、レモネード代払ってくれたの!」

話し相手もしてくれたし、お金もある。なにを悲しむことがあろうか。ブリジットはにこにこと機嫌を

直していた。


数日後。

「いただきます!」


3人は大衆食堂にきていた。石づくりのお店が観音開きの扉が開き、鈴の音を時折たてる。暗かった店内にさあっと明りがさす。こつこつと靴音を響かせた店員が木製のテーブルを布でさっとふく。周りの客は思い思いに料理を食べていた。


「注文、いいですか?」

「あい、どうぞ」

「カレーライスお願いします」


ブリジットは店員に大きな声で注文をした。そわそわと周りをみる3人。


「アビー、コップ並べて」

「はいはい」


ロイはコップに水を注いでいく。中からはよく冷えた水が金属製の筒をとおって

なみなみとたまっていく。話に花を咲かせていたらお待たせしました、と店員がカレーライスを持ってくるのはあっという間だった。


白くて大きなお皿にあるカレーライス。

白いライスに肉じゃが、お肉、ピーマンと具が茶色のルーに顔を出す。

スプーンを置いていく店員を見ているうちにカレーのにおいが3人にとどいて

ぐーっとおなかが鳴る。

みんなでスプーンでルーを絡めたライスをすくって口に入れた。


「からっ」

舌に痛むような辛み。手がコップに伸びる。更新料がよくきいていて

ぶわっと体から汗がにじみ出る。

プリジットがまっさきにコップの水を飲みほした。

よく噛むと、ライスの甘味がしみてくる。

とろけるようなルーは辛みを薄めてくれて辛さが次のスプーンを促進してくれる。

口の中で甘さと辛さがおとずれて心地よい暖かさを胃にしみた。



「おいしい」


「おれもカレーライスで」

「私も」


最初の1口は大きく血を開けてがっつくように食べた。次の日と口から歯よくかみしめて食べた。

背中で汗をかきながら口の中にカレーライスを入れていく。

子供が食べる様子を見て何人もカレーの注文が入った。


「ごちそうさまでした」

「おいしかったです」


カレーライスはきれいに食べきった。

お店のメニューはまだまだおいしそうな料理がたくさんある。

次はどれにしようかと話てお店をあとにした。











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